挿話拾壱/終わり無き平行線

氷の大陸、元、じょうの国のほぼ中心にある露衣土ろいど城。


三年程前に統一戦争も終わって、露衣土帝国は各地に散在する反抗勢力の掃討に力を入れていた。


露衣土は城にある自室で一人、篭っている。


そして、いつもの様に窓から外の景色を眺めていた。


その部屋に突然、報告係の男が入って来る。


「露衣土様、炮炎ほうえんと名乗る者が面会を求めているのですが、どの様に致しましょうか?」


報告係の男が露衣土に対応を伺った。


露衣土は報告係の男に指示を出す。


「ほほう、よく此処まで来れたもんだ。構わん。通せ」


「畏まりました」


そう応えると報告係の男は部屋を出て行った。


暫くすると、先程と同じ報告係の男がもう一人、別の男を連れて露衣土の部屋へやって来た。


「露衣土様、お連れ致しました」


報告係の男が露衣土に言った。


露衣土は報告係の男を下がらせる。


「構わん。下がってよい」


「畏まりました」


そう言って報告係の男は再び部屋を後にした。


露衣土が部屋に残った男に話し掛ける。


「久しぶりだな」


「そうだな」


男は短く応えた。


懐かしそうに声を掛ける、露衣土。


「何年振りになるんだ?」


「忘れちまったな」


男は素っ気なく応えた。


露衣土が男に用件を伺う。


「で、一体、今更、何しに此処へ来たんだ?」


「察しは、つくだろうよ」


男はぶっきら棒に言った。


自分にとって都合のいい察しをする、露衣土。


「降伏しに来てくれたのかな!?」


「場合に拠っては、それも考えない訳ではないけどな」


男はずっと、ぶっきら棒な感じであった。


痺れを切らした露衣土が男を威圧する様に言う。


「炮炎よ、相変わらずだな。一体、此処を何処だと思ってるんだ!?」


「それが、どうかしたのか!?」


炮炎は飄々と返した。


露衣土は炮炎に対して降伏を要求する。


「こちらとしては降伏して貰わん事には無事に帰す訳にはいかないんだけどな」


「そうなのか!?」


炮炎は惚ける様に言った。


今度は炮炎に降伏の条件を尋ねる、露衣土。


「まぁ、いいさ。取り敢えず、どうしたら降伏するのか訊いておこう」


「力に依る制圧を止めれば戦う意味は無いさ」


炮炎は再び、ぶっきら棒に言った。


露衣土が炮炎の言葉に呆れる様に言う。


「本当に何も変わってないな。まだ、そんな事を言うのか」


「まだも何も争いは争いしか生み出さん」


今度は強い口調で炮炎が言った。


炮炎の態度に不満を顕にする、露衣土。


「私が何の為にこの星を統一したと思ってるんだ!?」


「そんな事を俺が知る訳ねぇだろ」


炮炎が露衣土を突き放す様に言った。


露衣土は炮炎に持論をぶつける。


「国家の対立こそが争いの根源だとは思わんか!?」


「確かに、その点は一理あるのかもしれん。しかし力に依る制圧を続けていれば、それもまた、争いの根源に為り得るんだよ」


炮炎は露衣土の持論を一部、肯定しながらも、自身の反論をした。


今度は炮炎に解決策を尋ねる、露衣土。


「では、どうすれば争いを無くす事が出来ると考える?」


「さぁな、自分で考えな」


炮炎が再び露衣土を突き放す様に言った。


露衣土は炮炎を責める様に言う。


「話にならんな。平和の為には犠牲も必要だという事がまだ判らないのか」


「判る訳ねぇだろ!お前が殺している人間は決して平和の為の犠牲なんかじゃない!」


炮炎は語気を強めて反論した。


呆れる様に言う、露衣土。


「何を言っても無駄な様だな」


「それは、そっちだろうが」


炮炎は言い返した。


露衣土は炮炎に対して再度、念を押す。


「どうやら降伏する気は無い様だな」


「だから力に依る制圧を止めれば考えるさ」


炮炎も再度、露衣土の方に再考を促した。


あくまでも自身の考えを貫く、露衣土。


「誰も反抗しなくなれば力を使わなくても済むんだよ」


「今更、何を言ってやがる。自分で撒いた種じゃねぇか」


炮炎は露衣土に皮肉を言った。


話し合いは、いつまで経っても平行線にしかならない。


そこへ突然、部屋の扉が開いて炮炎に声が掛かる。


「炮炎」


一人の男が露衣土の部屋に入って来た。

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