挿話玖/嵐の妖精

麗羅れいら


炎の大陸にあったえんの国で生まれたが、幼少の頃の統一戦争時に家族を失って、炎の大陸を彷徨う事になる。


その最中に同じ境遇で炎の大陸を彷徨っていた凍浬とうりと出会って、その後、行動を共にする事となった。


そして炮炎ほうえんが暮らしていた村に流れ着いて、凍浬と共にその村で暮らしていく事になる。


炮炎自身も元々、流れ者だったからか、村に流れ着いた麗羅と凍浬を非常に可愛がった。


その後、麗羅は大人になるにつれて、大変に美しい女性へと成長していく。


そんな麗羅に恋心を抱く男性も大勢いたが、当の麗羅は炮炎に想いを寄せていた。


炮炎はそんな麗羅の想いを知っても、最初は余りまともには受け取らずにいたが、事ある毎に想いをぶつけてくる麗羅を放っておけなくなってきて、いつしか炮炎と麗羅は恋人関係となり、幸せな日々を過ごす事となる。


しかし、その幸せな日々もそう長くは続かずに、統一戦争後の露衣土ろいどの政策に対して炮炎が反乱軍を立ち上げる事になり、麗羅も凍浬と共にその反乱軍に加わる事となった。


その後、麗羅は炮炎を失う事になるが、その直後から反乱軍に加わる事になった炮炎の弟で炮炎と面影の似ている燿炎ようえんに想いを寄せる様になる。


しかし燿炎はそれに気付いても、知らぬ振りをし続けているのであった。


反乱軍のリーダーとして炮炎の遺志を継ぐ事は納得が出来ても、麗羅の恋人として炮炎の代わりを務める気にはなれなかったからである。


麗羅はそんな燿炎を根性無し、と思ったりもしていたが、炮炎の面影が強い燿炎に想いを寄せずにはいられなかった。


因みに麗羅は風の精霊の守護を受けており、攻撃魔法はさほど得意ではないのだが、サポート魔法に関しては非凡なところがあって、精霊の星の中で他に対抗出来る者は居ないと言っていい程の実力者へと成長していく。


そんな麗羅の存在は反乱軍の中で日に日に大きくなっていった。


炮炎が反乱軍を率いていた頃、反乱軍は麗羅の成長と共に露衣土帝国軍と互角以上の戦いも出来る様になっていく。


攻撃面では炮炎と凍浬の魔法が中心ではあった。


しかし攻撃魔法だけで戦うと、悪戯に犠牲者を増やすだけになってしまう。


犠牲者を減らして戦いを有利に進める為にも、麗羅の魔法が大変に役立った。


麗羅の魔法があったおかげで、反乱軍は露衣土帝国軍に屈する事なく、此処まで戦いを続ける事が出来たと言っても過言ではない。


そして麗羅は燿炎が反乱軍のリーダーになってからも、燿炎をよくサポートしている。


炎の魔法と風の魔法は非常に相性が良かったので、使い方次第で何倍にも魔法の効果を上げる事が出来た。


すでに麗羅は反乱軍の中で欠かせない存在になっていたのである。


更に麗羅は非常に美しい容姿をしていたのだが、非常に我が儘な性格で怒ると手がつけられない様なところもあって、一部の間では『嵐の妖精』と畏れられてもいた。


しかし当の麗羅はそう称される事を快くは思っていなかった様である。


その様な事もあってか、本人を目の前にして、そう呼べる程、勇気のある者は居なかった。

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