挿話捌/灼熱の反逆者

燿炎ようえん


氷の大陸にあったじょうの国で兄である炮炎ほうえんから二年程、遅れて生まれ、幼少の頃から、よく露衣土ろいどや炮炎と行動を共にしていた。


露衣土が成人した事を切っ掛けにして、露衣土と燿炎は力ずくで浄の国の政権を奪い取る為の戦争を始める。


その際に燿炎と炮炎は袂を分かつ様になってしまう。


決して炮炎との仲が悪かった訳ではなく、寧ろ兄弟の仲は良かった。


ただ燿炎は炮炎の考え方よりも露衣土の考え方に、より共感が出来ていたのである。


また燿炎にとって露衣土は目標とすべき兄貴分で、血の繋がりのある炮炎よりも、血の繋がりが無いのに自分の事を目に掛けてくれる露衣土に燿炎は心酔していた。


その様な事もあってか、炮炎が燿炎を連れて行こうとした時に、燿炎は露衣土と共に戦う事を選択したのである。


だから炮炎は一人で二人の下を去って行くしかなかった。


そして燿炎は浄の国の政権奪取の際、その後の統一戦争時に、目覚ましい活躍をした事で精霊の星にその名を知らしめる事になる。


特に戦闘における、燿炎の働きぶりには目を見張るものがあった。


恐らく燿炎が居なければ、露衣土が統一戦争を終結させる事は出来なかっただろう。


ある意味、燿炎は統一戦争における、最大の功労者でもあった。


燿炎は逸早く戦争を終わらせる事が炮炎との再会に繋がると信じていたのである。


しかし統一戦争が終わっても、その願いは叶う事はなく、それどころか統一戦争後の露衣土の政策に疑問を募らせる様になっていってしまう。


その後、やっとの事で、炮炎との再会が叶う事となるのだが、その時に、とある事件が起こる事に因って、燿炎もまた露衣土の下を去る決断をする事となってしまう。


そして自ら炎の大陸に展開していた反乱軍の掃討に出向いて、そのまま反乱軍へと身を投ずる事となる。


同行した部下の内、何人かは燿炎と行動を共にする事を望んだが、同行は一切、許さずに、本国へ帰るように命じて、単身での投降となった。


燿炎はそれが露衣土に対して、通すべき筋だと思っていたからだ。


そして燿炎が身を投じた反乱軍は、元々、炮炎をリーダーとしていた反乱軍であった。


燿炎が反乱軍に加わると、燿炎は反乱軍のリーダーを押し付けられてしまう。


炮炎が死ぬ前に反乱軍の仲間達へ、燿炎の事を話していたらしく、炮炎の遺志を継ぐ形で、燿炎はこの反乱軍のリーダーになる事を引き受けざるを得なかった。


勿論、最初は新入りの燿炎にリーダーを任せる事を不満に思う者も少なくなかったが、それ以上に炮炎に対する信頼が厚かった事もあって、外見が炮炎とそっくりな燿炎をリーダーとして、時間と共に自然と受け入れられる様になっていく。


更に燿炎は炮炎以上に、強力な炎の魔法を使う事が出来たので、その実力も高く評価された。


恐らく炎の魔法の使い手では、精霊の星でも一二を争うレベルであろう。


そして露衣土帝国から反乱軍へと身を投じた事も相まって、一部の間では『灼熱の反逆者』と呼ばれていた。

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