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概要
献上された西洋人形は、皇帝にだけ名を呼ばれない
箱に詰められて海を渡った西国の娘は、この国で「人形妃」と呼ばれた。位はある。名は呼ばれない。毎朝わたしの髪を梳く皇帝が、名前だけは一度も訊かないのだ。
わたしは布屋の娘だ。糸の撚りも、縫い目のずれも、香の抜け方も読める。人形は喋らないことになっているから、みんなわたしの前では嘘をつかない。
そうして聞き集めるうちに、この後宮がおかしいことに気づいた。名簿に、位だけがあって名前のない行が九つある。三年前から誰も住んでいない宮に、毎晩、灯りがつく。
四十年で、二十七人が消えていた。誰も殺していない。ただ、宴の夜に隣の椅子が肘ひとつぶん外へ動いただけだ。
そして、消えかけているのは、たぶん、わたしだった。
——陛下。わたしの名前を、帳に載せてください。
布と匂いで後宮の空欄を解く異国の
わたしは布屋の娘だ。糸の撚りも、縫い目のずれも、香の抜け方も読める。人形は喋らないことになっているから、みんなわたしの前では嘘をつかない。
そうして聞き集めるうちに、この後宮がおかしいことに気づいた。名簿に、位だけがあって名前のない行が九つある。三年前から誰も住んでいない宮に、毎晩、灯りがつく。
四十年で、二十七人が消えていた。誰も殺していない。ただ、宴の夜に隣の椅子が肘ひとつぶん外へ動いただけだ。
そして、消えかけているのは、たぶん、わたしだった。
——陛下。わたしの名前を、帳に載せてください。
布と匂いで後宮の空欄を解く異国の
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