概要
謝辞の一文字目を順に読めば、そこにわたしの名前があった。
七年間、わたしは夫の論文を書いてきた。深夜のキッチンで、風呂場の脱衣所で、
実験ノートの余白で。
四十三本。すべて夫・宗一郎の名で世に出て、彼は三十四歳で准教授になった。
「君の名前は載せられない。共著にしたら僕の実績が薄まる」
そう言った夫が、教え子との再婚を告げてきた夜、わたしは静かに離婚届を出した。
半年後、宗一郎は国際医学賞の最終選考に残る。
だが授賞式の壇上で、若手審査員の男が一枚の紙を掲げた。
「この四十三本、謝辞の一文字目を順に読んでください」。
そこに浮かんだのは、七年間ずっと隠されていた、わたしの名前だった。
実験ノートの余白で。
四十三本。すべて夫・宗一郎の名で世に出て、彼は三十四歳で准教授になった。
「君の名前は載せられない。共著にしたら僕の実績が薄まる」
そう言った夫が、教え子との再婚を告げてきた夜、わたしは静かに離婚届を出した。
半年後、宗一郎は国際医学賞の最終選考に残る。
だが授賞式の壇上で、若手審査員の男が一枚の紙を掲げた。
「この四十三本、謝辞の一文字目を順に読んでください」。
そこに浮かんだのは、七年間ずっと隠されていた、わたしの名前だった。
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