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概要
安全なはずの私が、まだ怖い。永住、と名のつくものにさえ、終わりがある。
一九九九年の夏、加藤健は片道の航空券だけを持ってミネアポリスに降りた。二十一歳。両親はなく、顔には十六の冬からの傷がある。日本に帰る場所も、戻れる仕事もない。
交換留学の一年が終われば、この国にいる理由はなくなる。残るには学位が要り、学位には金が要り、金を作るにはいったん帰るしかない。その日から彼の暮らしは、一枚ずつの紙でできていく。学生の一年。課程の二年。そのあとの一年。就労の三年。どの紙にも、終わりの日付が刷ってある。
やがて健は、同じように日本へ帰れない女性と家族を持つ。娘が生まれ、この国の言葉で育っていく。
そして二十六年後の十二月の夜。永住権を手にしたはずの男が、台所で一人、まだ怖がっている。
派手な事件は起きない。あるのは手続きと、期限と、数
交換留学の一年が終われば、この国にいる理由はなくなる。残るには学位が要り、学位には金が要り、金を作るにはいったん帰るしかない。その日から彼の暮らしは、一枚ずつの紙でできていく。学生の一年。課程の二年。そのあとの一年。就労の三年。どの紙にも、終わりの日付が刷ってある。
やがて健は、同じように日本へ帰れない女性と家族を持つ。娘が生まれ、この国の言葉で育っていく。
そして二十六年後の十二月の夜。永住権を手にしたはずの男が、台所で一人、まだ怖がっている。
派手な事件は起きない。あるのは手続きと、期限と、数
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