概要
夫の昔の女へ、妻が先に手紙を書く。宿を決めたのも、妻だった。
昭和五十年の秋、海沿いの温泉町。水原小夜子は三十五歳で、旅館・汐見館の女将をしている。婿として入った夫の誠一郎が帳場を守り、十歳の娘・千鶴がいる。
十月十二日から二泊、東京から予約が入る。法事のための帰郷。宿泊者の名は高瀬俊介——十三年前、小夜子が別れた男だった。
予約の三日後、俊介の妻・礼子から手紙が届く。汐見館へ泊まると決めたのは主人ではなく私です、と細い右上がりの字で書かれていた。礼子は、小夜子が十三年前に書いた断りの手紙を読んでいる。
十三回忌の夜、礼子は小夜子を海へ誘う。主人が忘れられないのはあなたではなく、あなたに愛されていた自分です、と言う。近づけたいのではない、近づけないようにすることに疲れたのだ、とも。
翌日、礼子と娘だけが帰り、俊介が一泊延ばす。取り壊しの決まった
十月十二日から二泊、東京から予約が入る。法事のための帰郷。宿泊者の名は高瀬俊介——十三年前、小夜子が別れた男だった。
予約の三日後、俊介の妻・礼子から手紙が届く。汐見館へ泊まると決めたのは主人ではなく私です、と細い右上がりの字で書かれていた。礼子は、小夜子が十三年前に書いた断りの手紙を読んでいる。
十三回忌の夜、礼子は小夜子を海へ誘う。主人が忘れられないのはあなたではなく、あなたに愛されていた自分です、と言う。近づけたいのではない、近づけないようにすることに疲れたのだ、とも。
翌日、礼子と娘だけが帰り、俊介が一泊延ばす。取り壊しの決まった
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