概要
誰も読まない定理は「偽」になる。世界崩壊前に彼は最後の看取りに向かう。
西暦二〇四一年、世界は「参照崩壊」の脅威に直面していた。
証明済みの定理であっても、一定期間だれにも参照されなければ「偽」へと反転する。
最初の犠牲は、十九世紀の忘れられた補題だった。それが偽になった瞬間、依存していた計算が狂い、三つの巨大な橋梁が崩落した。
数学保守局第三保守課に所属する検証官・間宮律の仕事は、局内で「葬式」と呼ばれている。
それは延命ではない。
余命の尽きた定理から依存関係を安全に切り離し、世界に被害を出さずに看取る手続きだ。
そんな彼に、新たな任務が下る。対象は在野の天才数学者・乙原承の定理。
余命九十日、依存件数二百十七。しかし乙原は三年間、再証明による延命を拒否し続けていた。
依存を一件ずつ外していく間宮は、やがて依存グラフの末端に、登
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- ★★★ Excellent!!!『真』と『偽』の枠外に残されたもの
誰にも参照されなくなった定理は、「偽」へ反転する。
その崩壊から世界を守るため、定理の依存関係を切り離し、静かに最期を看取る数学保守局の検証官・間宮律。
「定理の葬式」という独創的な設定に惹かれて読み始めましたが、その先に待っていたのは、数学だけではなく、記録されること、忘れられること、そして誰かに存在を認められることをめぐる物語でした。
規程、書式、署名、参照カウンタ。
人間の存在さえ形式証明によって管理される世界で、間宮は決められた手続きを淡々と進めていきます。けれど、その無駄のない所作や繰り返される日常の細部から、制度では割り切れない感情が少しずつ滲み出してくる。その静かな描写…続きを読む