この世ならざるものを見る少年と、不思議な少女の一夏の交流。蝉時雨の降り注ぐ社叢で、少年は何を見聞きし、何を感じるのか。少しく寂しく、少しく暖かい読了感を、是非。
祖母の家へ一人で訪れた小学六年の夏。人には見えないものが見えてしまう樹が、山奥の古い神社で出会ったのは、鞠を抱えた名もなき少女──マリ。彼が名を与えた瞬間から、二人の時間は静かに色づき始める。蝉の声、古い舞殿、揺れる鞠。そのすべてが、どこか現実と夢の境界にあるようで、読者にも淡い懐かしさを呼び起こす。やがて夏が終わるように、彼女との出会いもまた一瞬の奇跡として過ぎ去っていく。子どもの感性でしか触れられない“世界のひだ”を描いた、切なく美しいひと夏の物語です。
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