概要
子爵令嬢クレアは、十年間、王宮の幼少子女に読み書きと外交文書を教えてき
子爵令嬢クレアは、十年間、王宮の幼少子女に読み書きと外交文書を教えてきた。生徒の中には、貧しい伯爵家の継嗣マルコスもいた。当時八歳、文字も書けなかった少年に、クレアは三千日かけて読書術と外交を教え込んだ。「お前の授業など読み書きだけ。下働きの娘でも教えられる」――王太子妃の侮辱に、クレアは課題帳を置いて去る。その朝、辺境の若き伯爵マルコス・ファロウェイが、五百キロを夜通し馬で駆けて王都に着いた。十年前の生徒が、二十二歳の名君となって、クレアを迎えに来た。「あなたが教えてくれた一文一文を、私はずっと暗記していました。十年、ずっとあなたに見ていてほしかった」――彼の馬の鞍には、十年分の課題帳が積まれていた。クレアが赤ペンで添削した、彼の幼い文字の束。
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