タイトルにあるように、好きなものを好きに語る形式のエッセイは、やわらかな輪郭を持つことばとオノマトペが印象的な作風のムスカリウサギ氏のルーツを紐解く旅といえよう。鮮明に語られる幼き日の思い出や滔々と語られる好きな作品の数々は、筆者を形作ったものを浮き彫りにするとともに、記憶力の高さや感受性の強さを伝えてもいる。どこから来て、どこから向かうのか。好きなものに導かれ、誰かと競うでもなく思うがままに駆け出していく。さわやかだけれど確かな情熱を感じるエッセイ。
飾らない言葉で綴られる、記憶と空想のスケッチ。子供の頃に見上げた空の青さや、古い辞書をめくった時の高揚感が、まるで今隣で語りかけられているかのような温かさで伝わってきます。宮沢賢治やマザー・グースにルーツを持つというその筆致は、どこまでも素直で、流れるようなリズムがとにかく心地よい。日本語という言語を心から愛し、一文字ずつ大切に置くような誠実な姿勢が、読み手の心に穏やかな風を届けてくれます。自分の「好き」を信じて、深い沼の底へと一歩ずつ歩んでいく。そんな書き手の純粋な熱量に、静かに、けれど強く励まされる一作です。
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