短いながらも不穏な空気が濃密で、じわじわと怖さが染み込んでくる掌編でした。特に、旅館の主人が何も語らず料金を返す場面が強烈で、説明の無さが逆に想像を掻き立てます。足音の描写も生々しく、夜の静けさの中で聞こえる異常さが鮮明に伝わってきました。最後に「座敷わらしではない」と強く否定する一言が、物語全体の恐怖を一段深くしています。語りすぎず、余白で怖がらせるタイプの怪談としてとても印象に残りました。
身も蓋もないレビューの題だが、ツカミの話は、フッ、と後ろから吹かれて勝手に蝋燭が消えるような不気味な印象を持っている。複数の語り手による一種の百物語の様相であり、中には並のホラーも牙をむく一歩前で止まるような湿度を持っている。湿度、生々しさというか〝本当に見聞きしたのだな〟という熱を帯びている。しかし、それは筆者が巧みに調理したものもあるだろう。怖いものは刺激だ。好奇心をくすぐってやまない。人々は今日も穴の中を覗き込む。そこから逆に覗かれているとも知らずに……。
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