侵食

奈那美

第1話

ふと、考える。 


最初は、なんの感情も持っていなかった。

クラスメイトだという認識はあったし、全くしゃべったことがないわけではない。

……どんな会話を交わしたかと問われたら『内容とか覚えてないけど、クラスメイトだからしゃべったことくらいあるんじゃ?』程度だけど。

だからあの日、突然コクられたことにも驚いたし……なによりも私のヒミツを知っていた──気づかれていたということに何よりもビックリした。

ちゃんと隠せていると思ってたのに。

 

だけど、不思議と知られててイヤだという気持ちにはならなかった。

これが違う人たち、みはるとか倫子だったら絶対イヤだし、彼女ら相手だったら全力で否定する。

他の男子でもイヤだけど、『そんなはず、ないでしょ』とかって笑って流せる。

当人は……これだけ一緒にいても全く気づいてないんだから無問題。

なんで遠藤君は大丈夫、だったんだろう?

 

「ぼく、安藤さんが好きで、ずっと目で追ってたから──だから気がついたんだ」

そう、言われたんだよね。

今までにコクられたことは何度かあっても、それらとはなんとなく違う感じがしたんだけど。

……そっか。

好きとは言われたけど、彼にはつきあって欲しいとは言われてないんだっけ。

 

ああ、だからか。

つきあえないっていうと、どの男子もほぼ絶対『なんで?どうして?』ってしつこいのよね。

それがなかったからか。

単純に『私のことが好き?ああ、そうなんだ』って素直に受け入れちゃったんだ。

 

そういえば、あれから駅まで一緒に帰ったりひなまつりに出かけたりしてるんだよなぁ。

有紀たちがデートで忙しくて、ひとりでヒマだったからありがたいといえばありがたいんだけど。

ああいう催し物って、興味は惹かれるけれどひとりで行くのはちょっとハードル高いんだよね。

綺麗だったなぁ……雛人形。

 

ふと、我に返る。

また──だ。

このところ、ふとしたタイミングで遠藤君のことを考えている自分に気づく。。

最初にそのことに気づいた時は、我ながら慌ててしまった。

なんで遠藤君のことなんて考えているんだろうって。

好きだって言われて、だから気になっているの?と自問自答してみた。

もちろん私に好意を持ってくれているから、気にならないとしたらウソになる。

 

じゃあ、好きになりかけているの?

じっくり考えてみた。

嫌いではない。

嫌いなら、そもそも一緒に行動なんてしたくない。

挨拶とかマナーとかちゃんとしているとこは、好ましいと思う。

 

でも……。


 


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

侵食 奈那美 @mike7691

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説