漫才「最後の晩餐はこれで決まり!」

ひばかり

最後の晩餐はこれで決まり!

「なあ、明日が地球最後の日だったらさ、何が食べたいとかってある?」


 えっ!? マジで! 明日で地球終わりなん? あかんわ、もうストレスがすごい、ストレスが。ストレスがマックスでもうダメやわ、じゃあ一足お先にグッバイマイアース! ザクっ!


「ちょっと! 早ない? いさぎよさ過ぎるよ。そんな簡単に自害しないで、もったいない。せめてなにか演説でもしてからにしようよw」


 演説?


「いやだからさ、自害する前に演説するとかさ、三島みたいにね。それか辞世の句を詠むとか」


 俳句?


「そうそう」


 いや、無理やわ。季語が思いつかん。季語が気になって仕方がない。もう、季語のストレスがすごい、ストレスが。あかん、もうダメやわ。一足お先にグッバイ夏井先生! グサっ!


「グッバイ言われても大迷惑やわ。夏井先生が。ていうか、辞世の句に季語はいらんかも」


 どうでもええわ!


「そうそうw でさ、最後の晩餐よ。何が食べたいのよ?」


 パンと赤ワイン。


「それガチのやつでしょ! キリストの。もうちょっとマシなもん食べていいから」

 

 えっ!? いいの? じゃあケバブとか。


「ケバブ!? 最後が? 肉の塊削ぎ落とすの待ってるの嫌じゃない? 最後よ?」


 ケバブ食べたあと、肉削ぎ落とした剣で介錯してもらえばええやん。


「いや、介錯とかないからw 個別じゃなくて、全体的に地球が滅ぶ設定で行こう。ケバブはなしで」


 あかんのかい。じゃあ、トルコアイスで。


「いや、あれも渡してもらえるまで、だいぶ時間かかるから。そのストレスはいいんかい? 味も普通やし。トルコから離れよう」


 せやな。じゃあやめとくか。うーん。どうしよう。じゃあ、トムヤムクンで。


「最後がスープ!? てかエスニックやめようよ。なんかスパイスとかパクチーで活力が出ちゃうよ。これから滅ぶのに。もっとなんかないの? 故郷の料理とかさ、母親の思い出の味とかさ。そういうのよ」


 あー、そっち系ね。


「そうそう、てか地元どこやっけ?」


 北海道。


「いいねー、北海道! 色々あるでしょ、おいしいの」


 あるね。いっぱいある。じゃあ例えば、鮭とば。


「鮭とば? なんやそれ?」


 干した鮭やね。


「喉乾かない? 素材じゃん。なんか料理にしようよ、出来上がってるの」


 あー、じゃあうちのお母さんの得意料理にするわ。


「いいね! そういうのよ」


 こだわって材料から自分で調達してるから。


「最高やんか! それそれ。それにしよ」


 いくら丼なんだけど。


「いくら? 材料から?」


 うん。川に入ってさ、手でバンッてこう、バシャンって、捕るでしょ、鮭を。そんでこう口に咥えてさ、持ってくる。


「クマかな? 君のお母さん」


 失礼な! 人の母親つかまえてそんなひどい事を言ってからに! たしかにずんぐりむっくりした体形ではあるけども。

 あー、あとハチミツが好きかな。


「ハチミツ!?」


 あとは、けっこう毛深い。


「毛深いの!?」


 ネイルが長い。


「ネイルも!?」


 秋田県知事に嫌われてる。


「それもう⋯⋯」


 でも妙な市民団体にはやたら好かれてる。


「クマでしょ! もう確定でクマよ、あなたのお母さん」


 ええー、マジでか。クマっぽくないと思うけどなー。


「だからあなたはクマの子よ。そういうことになる」

 

 優しいお母さんよ。よく褒めてくれたからね。お尻出したときとか。一等賞だねー、とか言って。


「クマの子エピソード持ってんじゃんw」


 あれーw クマの親子だったんだ。自覚なかったけどな。


「まあいいわ。そんで最後の晩餐は、お母さん熊の手作りいくら丼ってことでいいんやな?」


 いや、止めとくわ。別のにする。


「何で? じゃあ何がいいの?」


 ハチミツたっぷりハニートーストにする!


「クマやな〜。もうええわ」

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漫才「最後の晩餐はこれで決まり!」 ひばかり @l_panna

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