第8話 宝探ししよう
ハツくんは久しぶりにお母さんに電話して、しばらく帰っていないことを謝ったらしい。
「元気でいるならいいの。あなたが何を選んでも、元気でいてくれるならいいのって、母さんは言った」
ハツくんの声はちょっと水気を含んでいた。
海の波が静かに体の中から生まれてくる気配。人間は、水に命を与えられて、悲しいときや嬉しいときに、内側からそれを思い出す。
「ねぇ、久しぶりにあの遊びしよう」
ハツくんが、ふと思いついたようにベッドの掛け布団をめくって、手招きした。泣き顔を見せないように、合理的に顔を隠してしまいたいんだ、きっと。
あの遊びっていうのはもちろん、あの遊びのことだ。
お布団の海に潜って、お互いに必要なものを取ってきてプレゼントする遊び。 「ねぇ、ハツくんは今、何が欲しい?」
昔よりずっと狭く感じる海に潜り込んでいきながら、わたしは訊いた。
「当ててみて」
陸のほうから答えが返ってくる。
暗い海の底には、ハツくんの足と、変わっていない華奢な身体があった。
「あ、いいもの見つけた」
わたしはあのころと同じように、海の中に輝くものを発見する。
「なあに?」
「ないしょ!」
宝物を潰さないように腕にそっと抱いて、わたしは光が注ぐほうへと泳いでいった。 終
海の底のきらきら @nana-yorihara
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