第6話 アリスと英雄の訓練
あのような命の危機に面していながらも、アリスは初めの依頼に満足していた。
満足しないはずがない。こんなに大きな冒険をして、強敵とたくさん戦ったのだ。それなのにちゃんと命がある。こんなの満足以外何と呼べようか?
冒険者ギルドでは受付のお姉さんには驚かれ、多くのゴブリンを倒したため元の報酬金額よりも何倍もの金額がもらえた。
4日、5日程度なら、少しいい宿に泊まれるであろう金額であった。これで、当面の生活は大丈夫だろうと、神威は思った。
それから数日後、アリスは神威を家へと招待した。
神威ははじめ断ろうとしたが、まぁ、そこはアリスが無理やり連れてきた。
「たっだいまぁ!!」
「あぁ、お帰り」
家に帰ると、パワーレスは紅茶を飲みながら、新聞を読んでいた。
こう見ると英雄と言われた彼も、ただの爺さんに思えてしまう。否、ただの爺さんなのだろう。ただ、少し強かっただけだ。
パワーレスはアリスを見て、その後、後ろの神威に目を向けた。
「連れてきたようだな」
「連れてきたよ。半場強制的にだけどね」
もともと彼を連れてくるように言ったのは、パワーレスなのだ。
アリスに修行をつけるついでに、仲間である彼もいっしょにと。
仲間―まぁ、あれほどの冒険をしたならばもう仲間なのだろうか。
「神威、お主にも修行をつけてやろうと思ったのだがどうだろうか?」
「それに何らかの条件があるでござろうか?」
神威の声は少し震えていた。パワーレスに初めてあった人は結構こうなのだ。
パワーレスの風格、雰囲気、覇気、魔力、それらに恐怖の感情を抱いてしまうのだ。
「条件というようなものは何もない。強いて言うのであれば...仲間として、今後アリスと仲良く旅をし、ピンチな時に助け合ってくれればよい」
それは、無理ではないだろうか?今回のクエストは初回ということで、たまたま一緒にしただけと言ってしまえばその通りなのだから。
「そんな答えならば考える必要もないでござるな」
(ほらやっぱり、そうなんだよ。少し悲しいけど、しょうがないか...)
アリスは悲しみを押し殺し、平然を装うとする。
「アリスさえよければこれから冒険者として、共に行きたく思う。それにしても、アリスも世界を旅する気でござろうか?」
(え...⁉神威、そう思っていてくれてたんだ)
なら、アリスの答えは決まっている。
「うん、一緒に世界を旅しよう!!」
私たちは今日を持ってパーティを結成した。
「じゃあ、修行をつけてやろう。まずは、お主らは魔力の流れを感ることじゃな。どうせ感覚じゃろ?」
その通りであった。それ故に、アリスたちはコクっと頷くだけ。
「攻めとるわけじゃないんよ、それをまず学ぶ。いや、でもなぁ先に魔力量を少しずつ増やす方が良いか」
パワーレスは「そうじゃなぁ」と長く白い立派なヒゲをいじる。
「じゃあ、魔力の流れを感じるところからじゃな。それをせずに魔法を使うのは効率が悪いな。魔力の流れがきっちり理解できていくと変換効率や威力もおのずと上がっていく。同じ程度の魔力を放ち続けろ。少しの魔力でいい。あぁもし、乱れておったら軽くたたく、なぁに軽くじゃよ」
神威は昨日のあれを見て軽くとはどのくらいなのだろうかとブルっと体を震わせる。
アリスと神威は庭で座禅を組みすぐさま取り組み始める。
小さな魔力を同じ量を一定のスピードで出すように意識する。だが乱れるものは乱れる。特に時間に経つにつれてだ。
――――
そろそろ3時間ほど経つ気がする。もう、5回は叩かれた。普通に痛いよ、軽くってなに?そう思っているとまた、叩かれた。
叩く強さはまぁ優しく、12歳程度の子供が本気で振り回す木刀に当たった程度の痛みであった。
「そろそろ限界じゃな。明日もこれをやる、今日はしっかり休んで明日に備え溶け」
そう言って、今日の修行は終了した。
きついし、痛いし、精神をも鍛えられる。いい修行であることは確かだろう。
アリスはいつも寝る部屋へと行き、布団に気絶するかのように寝た。神威は、客間に寝ることになった。
1週間ほどずっとこの修行をした。でも、少しずつ叩かれる回数も減ったし、できる時間が長くなっていった。これが修業の成果か。
「明日から本番にするか」
爺様のそんな一言に驚いた。これは本番じゃないの!?
「そんな驚かんでも...たしかにきついじゃろうがこれにも意味はある。魔力は安定して出せるようになってきたじゃろうし、これが魔力の流れを感じるのに結構大事なんだ。それに、魔力量も増えたろ?」
たしかにそうだ。今までよりも増えている。
魔力は使えば使うほど総量が増える。
故に長寿のエルフなどは高い魔力を持つともいわれている。まぁ、エルフは、生まれながらにして高い魔力と魔法の才能を持っているから参考になりにくいが...長年生きたエルフは化け物だ。あれを同じ土俵に立つものとして考えないほうが身のためだろう。
まぁ、話を戻して、魔力を使えば使うほど総量が増えるっていうのが、本当なのだと実感した。
「では、明日は何をするのでござろうか?」
「それはじゃなぁ。魔力の流れを掴むんじゃ」
確かに本番だ。初めの方の言葉を思い出す。
パワーレスは、「魔力の流れをつかむ前に」と言っていた。
そう、これは前座だったのだ。
――翌日――
「じゃあ早速やるかの。魔力を外側に塊として出すんじゃ。こんな感じに」
パワーレスの手の上には魔力の透明な玉ができた。
「これが魔力の流れを一番感じやすい」
二人もやり始めたが、全くできない。
「そうじゃなぁ。ふたりともわしの手を握って目を閉じるんじゃ。」
二人はパワーレスの手を握って目を閉じた。
「どうじゃ?感じるじゃろ?」
この魔力の流れてくる感覚。この感覚をしっかりと覚えた。
「ならさっきの感覚を試してみぃ」
二人はパワーレスのやっていたとおりに。さっきの感覚と逆で押し出すようにした。
パワーレスのようなきれい球体にならずに歪んだ球体ですぐに弾けた。
「最初はそんなもんじゃ。それをまず習得することじゃな」
二人は、3日ほどこの練習をしてきれいな玉を作ることができた。神威のほうがアリスよりも半日ほど早くできた。
それを見た時のパワーレスは、なんとも嬉しそうだった。
「まさか3日でできるとはなぁ。一週間はかかるとおもっとったんじゃがな。」
二人は褒められた気がして嬉しかった。
その後、パワーレスからその魔力の流れの使い方について学んだ。魔力を一部に集中させて強化したり、魔力の玉としてはなったりする方法や魔力の盾を作る方法を。
やってみると、玉を作るのとそんな変わらなかったため、二日で達成した。魔力を使っての、身体の強化が難しかったぐらいだ。
「明日は二人がかりで儂に挑んでこい。儂に傷一つでもつけれたら合格じゃ」
パワーレスは弟子と言えるであろう二人の成長を見るのが嬉しそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます