第7話 アリスと英雄の試練
とりあえず、アリスと神威はそこらのモンスター相手に連携の練習をした。
形はこうだ。最初に、主に攻めるのは神威で、それらの周りでアリスは〈雷竜〉を放つ。神威がダメージを受けたら、アリスが前に出てパワーレスの注意を惹きながら神威の回復をする。
その作戦がうまくいかなかった場合、二人とも前衛のごり押しで挑む。
「正直、あのレス爺様に作戦なんて通用しないと思う」
「そうでござるな。国一つ落とす戦力をぶつけても普通に生き残れるであろうゆえ」
はたから聞いたら老人一人になんて過剰戦力なのだろうかと思うだろう。だが、比喩でも何でもない。例えば一つの国の軍隊が攻撃したとしても余裕で勝つだろう。圧倒的な力と速さでねじ伏せるであろう。英雄級にもなると小国など一夜で滅ぼせる力を持つという。
――――
少し余談だが、この世界に勇者級は今確認が取れているので二名しかいない。一人目、【魔術師殺し】のコントゥラ・クロノス。二人目、【神殺しの勇者】アーサー・ペンドラゴン。
そして、英雄級。英雄級ともなると数は少し多くなって、20名。
だが、この世界にはわからないところが多すぎる。
倭国は鎖国していて
パワーレス。彼は【魔術師殺し】がリーダーをやっていたパーティの一員であった。メンバーは勇者級【魔術師殺し】、英雄級【
各国を旅する【魔術師殺し】が仲間を集め出来たのがこのパーティ。ある時は荒ぶる邪龍を撃ち、ある時は傲慢で屑な王から国を解放し、またある時は邪神や、大悪魔を封印し、そして、最後には世を恐怖に陥れ支配者となろうとする魔王をも討ち取った。
これが伝説ではないというなら何が伝説になるというのだろうか。そんな伝説的なパーティにいたパワーレスと明日、アリスと神威は戦うのであった。
――――
遂にやってきてしまった。戦わねばならない。故に、行くしかないのだ。
これから始まるのはパワーレスによる一方的な暴力ではない。あくまでも平等的な戦いである。
やってきたのはギルドの訓練場だ。ここは変わらず物静かさを感じる。
「さぁ、好きなようにかかってこい」
パワーレスが高々に放った言葉は開戦の合図となった。
「〈光の加護が我らにあらんことを・
アリスは手を最大まで高く上げ、魔力を集中させる。そして、魔法を唱えると、手から黄金の魔力があふれ出る。
その魔力は背後へと集まり、中世ヨーロッパのような城の形を形成させる。
その後、その城は砕け散り二つの槍となり、アリスと神威の頭上にそれぞれ移動した。槍は二人に突き刺さる。その槍は体に吸収されるように消えていき、やがてすべて消えると二人は黄金の魔力を体にまとわした。
この魔法は光属性魔法であり、強化魔法である。効果は3つ。移動速度上昇、魔法威力上昇、魔法耐性上昇である。
なんともバランスのいい魔法だっと思うだろうが欠点も多い。目立つのは、魔力消費量と発動までの時間である。故に使いどころは重要である。
言い忘れていたが、この魔法は修行で手に入れたもののひとつである。魔法はあと3つほど習得している。
「力がみなぎるでござる。礼を言うアリス‼」
神威は駆け始めながら礼を言う。その後、そのまま抜刀する。
「〈紅桜流刀術・抜刀
この魔法は鞘の中に風の魔力をためることで勢いよく抜刀し、その風を斬撃として繰り出す魔法である。
威力は自分よりも3倍ほどでかい岩を斬れるほどだが、鞘と刀身、神威自身を魔法で強化されたことにより威力は数倍にも膨れ上がる。
魔法耐性上昇により、鞘にためる風の魔力を増やす。移動速度上昇により、抜刀の速さを上げる。ためる風の魔力量と抜刀の速さの上昇と魔法威力上昇により、小さい丘程度なら切れる威力となっていた。
その風の斬撃の移動する速さは異常的で、弾速の1.5倍ほどであった。
だが、パワーレスはその斬撃をいとも簡単に避けて神威へと走った。弾速の2倍の速さで。
「はへ?」
あまりにも人間離れした行為にか、今すでに頭をつかまれていることにか、神威は驚きの音を漏らす。
そのまま神威は地に頭を叩きつけられた。
「ぐはっ...!」
神威は血を吐き散らかす。
アリスはそれを見てすぐに治癒魔法の詠唱を始める。
「〈神よ、傷つきし我ら子らに今、天の」
アリスは詠唱の途中でとっさにやめる。理由は明白、正面にパワーレスが立っていたからである。
この次は何かしらの攻撃があると瞬時に察知した。防御か逃げるか悩んだ末、にげることを選択した。
アリスは足に魔力を集中させ、後方へと跳躍する。
前では、パワーレスの手が前へと突き出ていた。とっさに逃げたため助かった。もしこれが、防御を選んでいたなら...。少し心を弾ませるが、その理由は私にも分からなかった。
アリスはそのまま詠唱を継続する。
詠唱って継続できるのって思っただろう?ふつうはできない。だが、アリスの使ってる魔法はそれが許されたレアな魔法であった。
「加護をかの者に・
神威はその魔法を受けむくっと立ち上がり、そのままパワーレスの後ろ姿めがけて刀を振るう。その動きはいつもよりも速かった。
私の回復魔法は異常であった。異常な点は三つ。一つ、詠唱の継続。二つ、あれほどまでのダメージを一回で全回復させる治癒力。三つ、回復後の5秒ほど移動速度上昇と魔法耐性上昇を付与する。
デメリットを強いて挙げるならば、消費魔力量が光城と同等なのと、自分には使えないという点だ。まぁ、デメリットも結構大きいが、サポーターとしてなら最強である。
「ほう、面倒じゃのう」
パワーレスは神威に目をも向けずに刀を二本指でつまむ。そのまま神威の腹に肘を喰らわす。
また、神威は血を吐くが、今度は終わらない。
「紅桜流刀術 炎龍」
その魔力を感じたのか、パワーレスは刀を放して神威を向く。だが、それではアリスへの注意が行きにくい。
「〈
風のように速く走る。その速さは弾速まではいかずともやはり格段に速い。
「〈雷竜〉」
レイピアに〈雷竜〉の魔法を込めパワーレスめがけて繰り出す。以前使ったときは名はなかった。だが、パワーレスはこの技に名を授けた。その名は、
「〈
名前の由来を説明しようか。アリスはこの技を必死に鍛えた。その結果、この魔法使用時のみアリスは雷を纏い、光の速さで前方へと突き進んだ。その姿がまさに雷が宙を走るようだったため、雷光一閃となずけられた。
この技にはさすがのパワーレスも対応できなかったのか、衝突する。
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