第5話 アリスと不思議な夢

 爺様が助けに来たことによって、アリスは安心して疲れがどっと出た。アドレナリンによって無理していた反動が来た。

 そしてそのまま、アリスの意識は無くなっていった。





「...ス。...リス。アリス。起きて」


 アリスを誰かが起こしている。誰かを見ると雪のように白いうさぎがいた。


「やっと目が覚めたかい」


 アリスは理解ができなかった。なぜ、うさぎが喋っているのか?今いる此処は何処なのだろうか?といろいろな疑問が頭の中を駆け巡る。

 辺りを見まさすとそこに映るは、不思議な世界。喋るうさぎに、ありえないような色の木、ニンマリと笑って消える紫の猫。


「ここはどこ?」


 アリスはうさぎに問いかけた。


「ここは君の魔法の中。ここは君の夢の中。ここは君の可能性の中」


 うさぎは次々に言うが、アリスの心情としては「やはりわけがわからない」の一言である。


「条件が揃ったから君はここに来れたんだ。前までは姿をちらりと見るだけだったのが僕としっかり話せるようになったのも」


 条件―そんなものアリスは、何のことかさっぱり分からない。故に、アリスは頭の上に「?」を浮かばせる


「知らなくて当然さ。だってここは魔法だから」


 それを聞いて更にわからなくなってしまう。夢なのか、魔法なのか?とアリスは頭の中で思考をめぐらす。


「おっと、いけない。そろそろ時間のようだ。最後にいいかい?アリス。君の可能性は無限だ。そして、君の魔法は自由だ。それを忘れてはならないよ」


 うさぎがそう言うと、空間が歪み始めた。


「じゃあね。アリス。又今度」


 うさぎはニッコリと手を振った。紫の猫も姿を現し、ニンマリと笑った。

 そして、アリスの前から謎の空間がなくなった。


――――


 アリスの肩が誰かに揺られていた。


「アリス殿、そろそろ起きるでござる」


 揺らしているものの正体は神威だった。アリスは、寝起きで潤んだ目を向けて一言ぼんやりとつぶやく。


「おはようございます」

「おはようでござる。ぐっすりであったな」


 やはりアリスが見た謎の空間は夢だったのだろう。アリスは、そう思いながら寝顔を神威に見られてたのか、恥ずかしくて顔を膝にうもらせた。


「私の寝顔変ではなかったですか?変なこと言ってませんでしたか?」


 アリスは、顔に厚さを感じ、紅くしながら聞いた。


「大丈夫でござったよ。愛らしい寝顔でござったし、ウサギさんと可愛らしいこと申されてござったから、あんなに強くとも年相応の愛らしさがあって可愛らしかったでござるよ」


 愛らしいや可愛らしいの言葉が更にアリスを熱くさせる。


「そうですか。良かったです」


 顔を上げると神威はニコッと、笑っていた。その後、神威は真剣な表情に変えた。


「アリス殿、アリスの目が光ると同時に、ゴブリンが止まったのはなんでござったのか?」

「あれ?神威さんではないのですか?」

「違うでござる。あの時確かに見たでござるよ、アリス殿の左目が黄金に光ると同時にゴブリンの動きが止まった瞬間を」


 アリスの目は元は両目金色だった。でも今は、右目が母様の目水色になっているためもしアリスがその魔法を発動のならばもともとのアリスの力ということだ。

 でも今、アリスにそんな力はない。つまり、まだ覚醒していない固有魔法の扉が空いたのではないか?という結論になる。だから、


「私が発動した魔法ならばきっとそれはまだ覚醒していない固有魔法ですかね」

「固有魔法でござるか」

「神威さんも持ってましたよね?使えるんですか?」

「拙者もまだ使えていないでござる」


 固有魔法は謎が多い。覚醒方法が皆それぞれ違う。


「魔法の話もいいがまだ疲れているだろう?休んどきなさい」


 前で馬車を操っている爺様がそう言ってきた。

 なら、その言葉に甘えてもう少し寝ていようか。

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