白銀の太陽
青馬 達未
第1話
風ひとつない湖面が、静かに揺れている。
その真ん中に、白銀の円が浮かんでいた。
街の光は遠く、ここにはあの輝きしかない。
昼の太陽のようにまぶしいのに、熱く照らさない。
冷たく照らすのになぜか温かい。
触れれば脆く砕けてしまいそうな、冷たく澄んだ光。
それでも確かに、闇を押しのけてこの世界を照らしている。
「ねぇ……あの月をみて」
彼女が囁く。
「燃えないのに、ちゃんと照らしてくれるんだね」
「消えそうなのに、ずっとここにある。……昼より、暖かい」
彼女の横顔は月より白く、少し寂しそうで、何かを少し期待しているように見えた。
心臓が水面の波よりうるさい。
「……昼より、か」
思わずつぶやく。
「うん。昼の太陽って、まぶしすぎるでしょ」
彼女は小さく笑った。
「夜のほうが落ち着く。ゆっくり話せるし」
その一言で、何かが決まった。
「じゃ、あれは夜の太陽だね」
そう言いながら
俺は指先で湖をはじいた。
輪がひろがり、夜の太陽が歪む。
白銀の光は
怯える心に、静かな勇気を芽生えさせた。
その光の揺れを見ていると
今、この夜、この光の下でしか言えない。と思った。
「――好きだ」
言葉が水面に落ち、波と一緒に広がっていく。
しばらくの沈黙に。
彼女は湖面を見たまま、ゆっくりと息を吐いた。
「……そっか」
それだけ言って、肩を寄せてきた。
夜の太陽は何も答えず、ただ世界をやさしく抱きしめていた。
白銀の太陽 青馬 達未 @TatsuB
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