灯火
鈴音
灯火
私は暗闇の中、ロウソクに囲まれていた。私はその中から灯りが一番しっかりとしたロウソクを選んだ。
そのロウソクの灯火を見つめてどのくらい経っただろうか。私は揺らめくロウソクに目を奪われる。そのロウソクを手に取ろうと思って躊躇した。今、持っているロウソクの蝋が熱に溶けてなくなってしまうのではないか。この灯りが奪われてしまうのではないか。途端に私は恐怖と不安に苛まれた。それでも伸ばす手は止まらない。私は揺らめくロウソクを手に取ってしまった。
左手には元々持っていたロウソク、右手にはたった今手に取ったロウソク。右手は揺らめく灯りのようにゆらゆらと震えていた。私は本当にこのロウソクを手に取ってよかったのか。
左手にあるロウソクの蝋が右手に持ったロウソクの熱で少しずつ溶けていく。ように見えたが、実際にはびくともしなかった。
私は安堵と同時に苦しみをおぼえた。ほろりと涙が零れる。ロウソクでなぜこんなにも感情が動くのか分からなかった。両手に持った灯りは答えを教えてくれない。助けてと叫んでも声が暗闇に溶けていくだけ。二つの灯火は私を見つめているようにずっと暗闇をぼんやりと照らしていた。
灯火 鈴音 @suzune_arashi
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