2話 精霊界の使者、王宮に現る

 王宮の謁見えっけんの間。

 空気が張り詰めていました。

 精霊界からの使者――彼の名前はセリオス――が、

 静かに姿を現したからです。

 その姿は、冷たく、そして美しいものでした。



 セリオスが重々しく言います。

「精霊アリー・ラフィエル。精霊界より召喚命令を受けた。

 即時帰還《そくじきかん》せよ」

「……承知しております」

 アリーの声は、静かに震えていました。

 過去が、今を揺らす。



 そこへ、たまらずアミーナが割って入った。

「待って! 彼は、私の大切な……友達です」

「人間の情は、掟を覆《くつがえ》す理由にはならない」

 姫の声は、初めて誰かを守るために強く響きました。



「なら、私が証明する。彼がここにいる意味を」

「……証明できると?」

 セリオスの冷たい瞳が、姫を試すように見つめた。



 アリーが口を開きました。

「姫様は、私に”居場所”をくれました。

 それは、精霊界では得られなかったものです。」

 けれど、セリオスは冷徹れいてつに答えました。

「ならば、見せてもらおう。その絆の力を」

 対立は、試練へと変わったのです。

 姫と精霊の物語は、次の章へと進み始めます。



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王女アミーナと精霊アリー @acidfolk

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