毎週小説 9月 10日 夜道

プロニンニク

夜道

 私はいつも夜道を歩く。

仕事都合上、人通りが少なく、街灯もあまりない、いわゆる不審者がよく出るような道を歩かないといけない。

早く仕事が終わればいいのだがいつもなんやかんやで夜遅くに帰ることになってしまう。

ある日、その道を通っていると老人がいた。

身長は170いかないくらい、髪は全て白髪で眼鏡を掛けていて、手には少し大き目なビニール袋を持っている

その日が初めてその道を通って人にあった日だったので少々驚き、老人とは反対側に身を寄せた。

「お姉さん、今帰りかい?」

急に話しかけられてビックとびくついてしまう。

「あぁ、急に話しかけて悪かったね。こんな薄気味わるい道を使う人なんていないとおもってたからさ。あまり使わない方がいいよこの道。」

「ご心配、ありがとうございます。」

それだけ言って私は顔を上げずに小走りで帰路に就いた。

あの老人は何だったのだろう、なんで急に話しかけてきたのだろう、そういった心配事が頭の中をグルグルと回ってその日の夜はあまり寝ることができなかった。

朝。テレビをつけ、朝食を食べていると地元の番組で行方不明者に関する報道だされていた。

「年は70くらい、身長は169。髪は白髪の森山邦彦さんが行方不明になっています。情報をお持ちでしたら以下の番号までにお電話ください。」

私はそこでピンときた。

「あの、老人だ。」

つい、声を出してしまったが、とりあえず電話してみる。

「プルルルル、プルルルル、はい、こちらは平屋テレビです。」

「あの、すみません、今やっていた行方不明者の報道で情報提供をしたいのですが。」

「情報提供ですね、わかりました、お名前は。」

「上村です。」

「わかりました上村様、今担当の者と変わりますので少々お待ちください。」

急に電話してしまったが大丈夫だろうか、見た所の住所は覚えているだろうか。昨日の記憶を待っている間にフル回転させる。

「あ、お電話変わりました。担当の猿谷です。では上村さん情報提供ということなのですが昨日どこであったとか覚えているでしょうか?」

それから私は昨日あったことを話した。

昨日の老人がテレビにあった情報と変わらないこと、老人がビニール袋を持っていたこと、夜道であったこと。

「貴重の情報ありがとうございます。今後の警察との捜査に役立てて行きますので、また何かございましたらこちらの番号におかけください。」

それから私は電話を切って会社に向かった。

「おはようございます。」

「あぁ。おはよう。そういえば昨日大丈夫だった?」

「昨日ですか?」

「そう、昨日。なんか君が帰る方面で不審者情報が出ててさ。」

「はぁ、」

「だから今日は早めに仕事切り上げて帰りな。」

「え、いいんですか?」

「ええよ、ええよ。別にそんな、切羽詰まって仕事しとるわけないし。」

「ありがとうございます。」

いつもきつい禿上司がたまにはいい事してくれるなんて、今日は早めに帰れるなら帰り道のケーキ屋さんによってちょっとスイーツ買ってこうかな。

しかし、普通に早めに帰れなかった。

やはりあの禿上司はくそだ、ごみくずだ。

タクシーを使うかと考えたが今日は月末だし、タクシー代を出すのもきつい。

仕方なく今日も歩きで帰る事にした。

 いつも帰っていた暗い夜道、昨日の老人と今朝の上司の話でその日は妙に恐ろしく思えてしまった。

「お姉さん。」

急に肩を叩かれる。

「ひっ。」

驚きながらも振り返る。そこには昨日の老人がいた。

「また、こんな道通って。危ないよ。」

顔や背格好を見てみると今朝のテレビで紹介されていた人と全く同じだった。

「森山さん?」

「え、私の名前知ってるの?」

「だって、今朝テレビで行方不明者だって紹介されてたから。」

「行方不明者って、そっか。うーん、まぁとりあえず早くかえりな。」

「分かりました。」

それから私は昨日と同じように小走りをして家に帰った。

なんで今日もいたの。

それに、急に肩を叩いてくるなんて。

とりあえず水を飲む。

なれない運動をしたせいなのか、それともこのマンションの水道管が腐ってるのか、飲んだ水からは鉄の味がした。

「コンコン、コンコン。」

ノックされる音が聞こえる。

「はぁーい。」

こんな夜遅くに誰だろう、時計は午後9時を示している。

ドアを開ける、だけどもそこには何もいない。

誰かのいたずらだろうか。

気味が悪くなってきた、とりあえずもう風呂に入って寝てしまおう。

髪を洗い、体を流す、そして風呂に浸かって30秒数える。

「1、2、、、」

「バン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

急に大きな音が玄関の方から鳴り響く。

なに、何かが爆発した?もしかして扉吹き飛んだ?

「もう、通るじゃないぞ。」

背後から白髪の老人の声が聞こえる。

ぞわってして、私は裸のまま外にでた。

ピュールルと風の音、まだ9月というのに少し肌寒い、電気をつけようと手を伸ばす。

あれ、なんで、あんなところから町の光が?

あぁ。星がきれいだな。

星がきれいだな?

周りをよく見まわしてみると家の壁がなくなり、屋根も吹っ飛び、風呂場以外何もなくなっていた。

そのあと私は救急車で運ばれ、警察の人に色々話を聞かれた。

ガス爆発があったらしい、それで私の部屋は吹っ飛び星が見えたのだろう。

あと、私の家に爆発に巻き込まれた死体があったらしい。

私は一人暮らしなのに、なんで私の家に。

それから私は引っ越してあの道は通ることはなくなった。

あの白髪の老人は今もまだ行方不明らしい。

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