空を歩く亀

ひなの

第1話



朝の光に包まれた森。

小川のそばで、のんびり歩くカメがいた。


しかし、このカメにはひとつだけ不思議な特徴がある。

背中に、小さな羽が生えていたのだ。


「今日は、どこまで飛べるかな」

カメはつぶやくと、ゆっくりと羽ばたき始めた。


森の木々を見下ろし、小川のせせらぎを耳にして、

カメはまるで空を歩くように、地面すれすれを滑空する。


途中で出会った小鳥たちが、驚きと笑顔で声をかける。

「そんな羽があるなんて!どこまで行くの?」

「ゆっくりでいい。今日は空を歩く日だから」


カメはのんびりと羽ばたきながら、丘を越え、森を抜け、

空に映る雲の影と遊ぶ。


夕暮れ時、羽は少し疲れた様子で光を失いかける。

でも、カメは満足そうに目を細めた。


「今日も、空は優しかった」


森の小道に戻ると、子どもたちが笑顔で手を振っていた。

カメはゆっくり歩きながら、また明日も羽ばたくことを思った。

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空を歩く亀 ひなの @hinano0113

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