第3話『フレア・バット』

「ふぅ。けっこうな量になったな」


大量の魔石が入っているポーチ。

ずっしりとした重みが、これまでの戦いを物語っている。


そのおかげで、スキルにも多少慣れ、最初の戦闘よりはるかに身体が動くようになった。


そして、ここまでの戦闘で、いくつかレベルアップをすることができた。


「『ステータスオープン』」


────────────────────

神代連:15歳

職業『勇者』

レベル1→4(NEW)


体力:F→F+(NEW)

魔力:F→F+(NEW)

筋力:F

俊敏:F→F+(NEW)

耐久:F


コモンスキル:『基礎剣術Lv.1』『基礎魔法Lv.1』

レアスキル:無し

エピックスキル:無し

────────────────────


レベルアップによって、体力・筋力・俊敏の能力値が向上。

スキルの熟練度はレベルアップそのものでは変化しない。


ちなみにだが、コモンスキルの『基礎剣術Lv.1』『基礎魔法Lv.1』は、職業『勇者』の戦闘スタイルに直結している。

『勇者』は近接と遠距離をどちらも対応できる万能型。

剣で敵へ攻撃したり、魔法で遠距離攻撃や援護などの戦い方が可能となる。



「……もうそろそろ、ボス部屋か」


そう呟き、前へと進む。





☆ ☆ ☆


石造りのアーチをくぐると、薄暗い大広間に出た。

天井は高く、壁のあちこちに松明が灯り、不気味な影を揺らしている。


草原エリアとは一際雰囲気が異なり、ここだけ別の空間のようだ。



天井から気配をし、上を見る。


黒い体に、赤い翼。

コウモリに酷似したボスモンスター──『フレア・バット』がそこには居た。


『キーキー』


翼を大きく広げ、威嚇するように鳴き声をあげる。


『フレア・バット』の特徴は、空中を自在に飛び回りながら炎の魔法を放つこと。

魔法の威力は大したことないが、空中という安全圏からの魔法攻撃は少し厄介だ。



『キー!』


赤い翼から小さな光が集まり、炎の弾が俺に向かって放たれる。


「『ウォーター・ショット』!」


手に魔力を集中し、水の弾を放つ。


──ボンッ!


蒸気が立ち上り、一瞬視界を覆う。

熱気と水の冷たさが混ざり合い、炎は完全に打ち消された。


『キーッ!』


『フレア・バット』は少し驚いた様子で空中を旋回。

空中の優位を保ちつつ、再度魔法攻撃を仕掛けてきた。


「っ!」


熟練度が低く、連続で魔法を放つ余裕はない。

そのため、身体を横に滑らせるように動かし炎の弾をかわす。





魔法で相殺→回避→魔法で相殺→回避を何回も繰り返す。

その間、ダメージといったダメージを受けることは無かった。


「⋯⋯そろそろか」


俺は息を整えつつ、視線を『フレア・バット』かららさない。


これを繰り返していたのは、痺れを切らし、鋭利な爪で近接戦へと移させるためだ。


『キーキー!!』


目論見通り、一直線に俺へと急降下する。


「来た!」


爪が顔を狙って振り下ろされる。

炎の弾よりも速く、避け損なえば一撃で血を見そうな迫力だ。


──────だが、甘い。


『キー!?』


横へ身をひねり、振り下ろされた爪を紙一重で躱す。


前世ではこいつを何回も倒している。

実際の戦闘経験があまり無いとしても、こんな雑魚モンスターに遅れを取る理由が無い。


「はぁっ!」


腰を落として剣を横一文字に振るう。


──ズバッ!


黒い腹を刃が切り裂く。

赤黒い体液が空中へと飛び散った。


苦しげな鳴き声を最後に、光の粒へと分解されていく。

やがてその場には今日一番の大きな魔石がドロップする。


『レベルが上がりました』

「…………ふぅ」


あまり自覚は無かったが、少し疲労を感じ息を整える。


剣を軽く払って血飛沫ちしぶきを落とす。

拾い上げた魔石をポーチに収める。


その瞬間、石造りの床が淡く光を帯び、部屋の中央に円形の魔法陣が浮かび上がる。


「帰還用の魔法陣か……」


ダンジョンでは、ボスモンスターを討伐すると、地上へ戻るための魔法陣が出現する。

安全に地上へ戻る手段の一つである。



俺は迷わず帰還用の魔法陣を無視・・・・・・・・・・した。

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ゲーム世界の主人公に転生した件について〜平凡な俺が前世の知識と経験を活かしてゲームクリアを目指す〜 M.N @ATFWX

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