ラルゴ

夏洲(かしま)

なつかしい木陰

あれは初夏だったろうか

木陰が揺れていた午後の休み時間

2年の教室がある廊下の窓から

裏門に抜ける渡り廊下をぼんやり見ていた

見上げると

空は高くどこまでも青く

青さの抜けるような空間の

白い雲がゆったり北へ向かっていた

視界の隅に

駆け抜けてくる人を見かけた

頭を下げて走っていたので

誰だろう

そう思って

窓から身を乗り出して見た

ふっと、息を吐くようにして

その人がこちらを見た

視線がぶつかった

ただそれだけなのに

びくっと

心が跳ねた


ただそれだけだったけれど


思い出の中に沈んでいたものが浮上した

木陰はあれから十年の時を経て

少し枝葉を広げ

あの心も懐かしく広がった




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ラルゴ 夏洲(かしま) @karyoubinga

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