第4話 たぬたぬくんをおまつりにさそおう

 あきのある日、たぬたぬくんが村の公園こうえんくと、大人ばかりがいました。


(なにしてるのかな?)


 こっそりのぞくと、


「あぶないよ! 入ってきちゃダメだ」


 と、大きなこえめられました。


 たぬたぬくんはにげ出しました。たぬたぬくんはらない人がにがてなのです。


公園こうえんではもうあそべないのかな?」


 山の神社じんじゃまできて、たぬたぬくんはさびしそうにぽつりとつぶやきました。


「そんなことはないぞ」


「ひゃあっ!」


「おや? おどろかせてしまったかな。ハハハ」


 いつのまにか、たぬたぬくんのとなりにおひげもふくも、まっしろなおじいさんが立っていたのでした。


 たぬたぬくん、ドキドキしすぎてにげられません。けれど、おじいさんはニコニコ。なんだかはるのおひさまのようにあたたかいお顔で、たぬたぬくんのドキドキはおさまりました。


「たぬたぬくんはいつもおそなえをもってきてくれてえらいなあ」


 おじいさんはたぬたぬくんのことをっているようです。


「おじいさんはだあれ?」


 たぬたぬくんがたずねても、おじいさんはニッコリするだけ。


「村の学校がっこうってみるといい」


 おじいさんは村のほうをさしました。


「あそこに? なにがあるの? ……おじいさん?」


 たぬたぬくんがふりむくともう、おじいさんはいませんでした。


ってみよう」


 たぬたぬくんは山をおりました。


 学校がっこうでは人間のおともだちはみんな、なにかのれんしゅうをしていました。


 ふえをふいたり、太鼓たいこをたたいたり、おどっていたり。


「たぬくん!」


 いちばんなかよしの花乃かのちゃんがたぬたぬくんに気づきました。


「みんな、なにしてるの?」


 と、たぬたぬくんがたずねると、


「おまつりだよ! そのためのれんしゅうなの!」


 と、花乃かのちゃんはいいます。


「おまつり?」


「山のかみさまをおむかえして、おもてなしすること、かな?」


「おもてなし?」


「えっとね、いっぱいおこめとかとれてありがとうございますって、そのおかえしに神さまにたのしんでもらうんだよ。たぬくんもやろうよ」


 たぬたぬくんは花乃かのちゃんといっしょに、わっしょい! わっしょい! と、かけごえのれんしゅうをしました。


 夕ぐれになり、「バイバイ!」と、たぬたぬくんはおうちにかえりました。


「おかあさん! おかあさん! おまつりってもいい?」


 かえるとすぐ、たぬたぬくんはおかあさんにききました。


「そうだね。たぬたぬもうまくけられるようになってきたからね」


 みんなとおそろいの法被はっぴをもらって、たぬたぬくん、とびあがってよろこびました。

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