第2話 たぬたぬくんをたすけてあげよう

 たぬきのたぬたぬくんはまだけるのがうまくありません。


 ある日、たぬたぬくんはおかあさんからおつかいをたのまれました。


「これを山のかみさまにおそなえしてきてちょうだい」


 とっても大きくて赤いかきがみっつ。たぬきの手ではもてません。


人間にんげんけてってきてちょうだい」


 たぬたぬくんがけられるのは小さな男の子。その手にもかきは大きいものでした。


「よいしょ、よいしょ」


 バケバケの森から山のかみさまのところまでには、人間にんげんの村があります。


「よいしょ、よいしょ」


 汗をかきかき、たぬたぬくんはふとおもいました。


「ひとつくらい、いいよね」


 むしゃむしゃ。


「……まだふたつあるし」


 むしゃむしゃ。


「あまくておいしいなあ!」


 むしゃむしゃ。


 たぬたぬくんの手にかきはひとつもなくなりました。


「ああ、どうしよう! たいへんなことしちゃった!!」


 えーん! えーん!!


 たぬたぬくんは大きなこえいてしまいました。


「おやおや、どうしたんだい?」


 とおりがかったのはやさしそうなおじいさん。


 たぬたぬくんは「ごめんなさい」と、おじいさんにしっぱいをはなしました。


「よしよし。じゃあ、のうちにいこうか」


 おじいさんはたぬたぬくんの手をそっとにぎりました。たぬたぬくんはきべそかきながらおじいさんのしわだらけの手をにぎりかえしました。


「ばあさんや、ばあさんや」


「なんですか? おじいさん」


「これこれ、こういうわけだ。なんとかならんか」


「まあまあ、それはそれは」


 おばあさんはまだいているたぬたぬくんのあたまをなで、台所だいどころへつれてきてくれました。


「さあ、手をあらっていっしょにおだんごつくりましょう」


 ちょうどかみさまにおそなえするおだんごをつくろうとしていたのよと、おばあさんはニッコリいうのでした。


 たぬたぬくんはがんばりました、ありがとうとごめんなさいをこめて。


「できた!」


「よしよし。じゃあ、いっしょにかみさまのところへこう」


 おじいさんはおだんごのをふたつもちました。


 かみさまにおいのりして、そのかえり、おじいさんはたぬたぬくんにのひとつをわたしました。


「これはおうちでおたべ」


「ありがとう!」


 たぬたぬくんはなんどもなんどもふりかえりながら森にかえりました。


 つぎのあさ、おじいさんのいえのまえに柿がふたつありました。


「ばあさんや!」


「こんどはなんですか?」


「しっぽの出てた子がおんがえしだ」


「まあまあ、なんてやさしい子だね」


 かきはとってもあまくておいしいものでした。


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