【童話】たぬたぬくんはたんたんたぬきのこ ~いっしょにあそぼ!~

第1話 たぬたぬくんとおともだちになろう

 たぬきのたぬたぬくんはバケバケの森から人間にんげんの村へ、人間の子どもにけてかよっていました。


「いいかい、たぬたぬ。りっぱなバケたぬきになるためには、人間のことをまなばないといけないよ」


 たぬたぬくんはバケ学校がっこうの先生からそういわれていたのでした。


 ある日のことでした。


 たぬたぬくんは村の公園こうえんであそぶ人間の子どもたちをじっと見ていました。


(おともだちになりたいな)


 かげからかくれてそっとのぞいていたけれど、たぬたぬくんはこえをかけられませんでした。


(みんなたのしそうだな)


 たぬたぬくんはもじもじしているだけでした。


 テン、テン、テン……。


 おや? たぬたぬくんの足もとにボールがころがってきましたよ。


 たぬたぬくんはとっさにそのボールを手にとりました。


「ねえ、そのボール、かえして?」


 たぬたぬくんがかおをあげると、そこには女の子がひとり。たぬたぬくんはびっくり! ボールをほうりなげて、にげ出してしまいました。


 つぎの日、たぬたぬくんはやっぱりかげに。


 ボールがまた足もとにころがってきました。けれど、こんどはひろいあげることができませんでした。


 たぬたぬくんは人間にんげんの子がくるまえに、にげてしまったのでした。


 それでもたぬたぬくんはまたつぎの日も広場ひろばに。


 子どもたちはたぬたぬくんがきたのに気づくとあそぶのをやめて、公園こうえんのまんなかでひそひそ。


(どうしたのかな?)


 たぬたぬくんはそっとかげから一歩いっぽ、ふみだしました。


 子どもたちはたぬたぬくんをちらりと見ると、またひそひそ。


 たぬたぬくん、もう一歩いっぽ


 ひそひそ。


 また一歩いっぽ


「ねえ、いっしょにあそぼ」


 子どもたちはニッコリ。たぬたぬくんに手をさしのべました。


 たぬたぬくんはびっくり! けれど、ゆうきを出してさいごの一歩いっぽ。さしだされた手をにぎりました。


「あそぼ!」


 子どもたちとたぬたぬくんは日がくれるまで公園こうえんでいっしょにあそびました。


「あしたもまたあそぼうね」


「うん!」


 たぬたぬくんと子どもたちはおやくそくしました。


 村の子どもたちはおうちにかえると、おとうさん、おかあさんにあたらしいおともだちができたとはなしました。


「そうかい、そうかい。きっとその子はとてもはずかしがりやさんだからあそぼうといえなかったんだろう。おまえたちはいいことをした」


 おとなたちは子どものやさしさをほめました。


 つぎの日から、村の公園こうえんにはおともだちがもうひとりふえたのでした。

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