ホントに、描写がいい意味で気味が悪いんです。
ホラーにとって、重要なのは「これから怖い何かが起こりそうな雰囲気作り」です。
いきなりびっくりさせるだけなら、それこそ子供騙しな「いないいないばあ」で十分ですからね。
ですが、こういった「怖さを段階的に作っていく過程」というのは、かなりの技量を要する技術です。
その場の明るさ、湿気、臭い、音、風の強さ、他に動くものの有無……そういった雰囲気というものがよりリアルに描けなければならないわけですからね。
この作品は、その点かなりじっくりと、そしてじっとりと演出しています。
実に雰囲気が出ています。
ただならぬ雰囲気にどっぷり浸りつつ、主人公の身に何が起こるのか……是非ともご観測ください。
観測する行為が何かしらの物事を確定するというお話は比較的SFであるテーマですが、なるほどホラーにするとこうなるのか。
SFではない現代物ではありますが、用いている理屈はそういうところで担保している感じでただひたすらに怖いというよりも主体的行為そのものがホラーになる展開でジワジワと滲み出るホラー作品です。
少しなつかしさを感じる、その意味で由緒正しい奇を衒うことのない王道のホラーだと感じます。その点、「怖がらせよう」というよりも「読めば勝手に背筋が寒くなる」というホラージャンルの原点のような作品。