無言のまま、暮らしに寄り添う白い箱の物語。

室外機という視点から描かれる本作は、人の営みを静かに見つめ続ける存在の、ささやかな誇りと寂しさが綴られています。

ある日、娘さんが訪れたことで、室外機に危機が。
山田さんが「最後まで大切にしたい」と語る場面には、物言わぬ存在への思い入れと深い愛情が込められています。

季節が巡り、山田さんが去ったあとも、室外機はただそこにいる。

無機質なものにも、記憶と感情が宿る――そんな優しい視点が、読後に温かな余韻を残してくれる作品でした。