凪の家が記録する、人生の水平線。

海辺にひっそりと佇む小さな家「凪の家」。
この家には、設計者の親友であり最初の住人だった漁師、隆の遺言によって、ある特別な役割が与えられています。

海難事故で息子を亡くした老女、心を閉ざした少年、離婚で傷ついた女性、そして死を望んだ男性…。
海に何かを奪われたり、海を必要としたりする住人が、この家を訪れます。

彼らは窓枠の無数の印に触れ、自分の印を刻むことで、変わり続ける海を通して、「変わってもいいんだ」という自身の再生への一歩を踏み出します。救われる人もいれば、通り過ぎる人もいる。しかし、彼らの「時間」は、窓枠の線として家の一部になっていくのです。

建築は建てたら終わりではなく、住む人と共に変化し、記憶を刻み続ける「生きた建築」を描いた、静かで深い傑作です。

ぜひ、この窓から見える海と、無数の水平線の記録を見てみてください。