第2話___紫雲瑠蘭___

いつもの放課後

まだ人気の少ない時間に座る窓際

ここの図書室は騒音もなくて集中しやすい

いつものようにノートを開いて

指を動かす…ずっと止めないように…

私は作曲をよくする

自分の気持ち、感情、身の回り…

全部が全部、歌に合わせて語れる

私だけしか考えられないその曲は

考えれば考えるほど魅力が広がる

私はそれが好きだから

作曲しているときだけは、心が自由になる。

けれど教室では「難しそう」と笑われたり、「そんなの役に立たない」と軽く流される。

だから私は、ここで指を止めないようにしている。


(はぁ、考えないようにしないと、指が止まっちゃう)


小さな鼻歌で音程を探る。喉の奥を震わせる響きと、窓から差し込む光の温度が、指先を軽やかに走らせてくれる。その瞬間だけは、言葉にならない幸せに包まれていた。


「失礼します―。」


……あの声だ。

思わず指が止まりそうになって、慌ててまた走らせる。低いのに心地よく響く声。聞いただけで、あの子だとわかる

あの子もずっと図書室にいる子

名前は…えーっと、

葵君だっけな

『朝日向 葵』(あさひな あおい)くん…。

名前は数少ない友達に聞いた

2年の中でも結構有名らしくて

理由はかっこいいからだと…

私が葵君の名前が気になったのは

ただ単にジロジロ見られるから

図書室で私はいつも固定の席にいる

葵君もいつも私の2個、3個斜め前の固定の席なんだけど、

なんせ視線を感じる…


気づかれないように、私も彼を盗み見る。

黒々とした髪。まっすぐなまなざし。驚くほど整った顔立ち。

その美形に、見惚れそうになって目を逸らす。

……やっぱり、私って変態なのかな。


というか、葵君はなんで私のことをジロジロ見てくるのかな…?

まぁ、図書室で必死にノートに向かってる姿は変かもしれない

それでも気にせず、ノートに向かう手を止めない私

そんな私を、葵君はどう思ってるのかな?

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