『俺達のグレートなキャンプ109 猛暑日だ!冷やしおでん始めました!』

海山純平

第109話 猛暑日だ!冷やしおでん始めました!

俺達のグレートなキャンプ109 猛暑日だ!冷やしおでん始めました!


緑豊かな森に囲まれたキャンプ場。普段なら鳥のさえずりと涼しい木陰が心地よいはずの場所が、今日は地獄と化していた。木々の葉っぱは暑さでぐったりと垂れ下がり、セミですら「ミーン...ミ...」と途切れ途切れで弱々しい鳴き声を上げている。川のせせらぎさえもなんだかお湯のように温かく聞こえる。

「うぅ...死ぬ...マジで死ぬ...俺の人生これで終わりか...」

千葉がテントの入り口でまるで干物のようにぐったりと寝そべっている。顔は完全に茹でダコ状態で、Tシャツは汗でびしょ濡れ。氷嚢を頭に乗せているが、すでに溶けて水になって頭から滴り落ちている。

「千葉、まだ午前10時よ...これから更に暑くなるのに...私たちもう溶けちゃうわよ...」

富山も隣のチェアに座り込み、うちわで顔を扇いでいるが、その手の動きもだんだん弱くなっている。日焼け止めが汗で流れて、顔がまるでドロドロに溶けたアイスクリームのようになっていた。

「もうダメ...意識が...遠のいて...」

千葉が白目をむきかける。

「しっかりして!まだ朝よ!」

「でも暑い...暑すぎる...なんで俺たちこんな地獄でキャンプしてるんだっけ...」

「それは石川が『猛暑こそグレートキャンプのチャンス!』とか言い出したからでしょ...」

富山がげんなりしながら答える。

「よーし!みんな集合だぁぁぁ!今日も絶好のグレートキャンプ日和だ!」

そんな中、石川だけが異常にハイテンションで現れた。大きなクーラーボックスを両手に抱え、額に汗をかいているものの、なぜか満面の笑みを浮かべている。

「石川...お前だけなんでそんなに元気なんだよ...まるで別の生き物みたい...」

千葉が弱々しく首だけ動かして石川を見上げる。

「それはな...秘密兵器があるからだ!今日の暑さを逆手に取った、史上最強のグレートキャンプ飯を考案したんだ!」

石川がクーラーボックスをドンと地面に置く。氷がガラガラと音を立てて、その音だけで少し涼しい気分になる。

「まさか...また変なこと考えてるでしょ?今度は何?氷風呂?氷の彫刻?」

富山が疑いの眼差しを向ける。

「甘い!甘いぞ富山ちゃん!今度は食べ物だ!この猛暑に打ち勝つ、究極の暑さ対策キャンプ飯を思いついたんだよ!」

石川が胸を張って宣言する。

「暑さ対策って...まさかかき氷とか?それともアイス?」

千葉がわずかに期待を込めた声で聞く。

「ぶっぶー!不正解!もっとグレートで、もっと奇抜で、もっと美味しくて、もっと満腹になる料理だ!」

石川がクーラーボックスの蓋をゆっくりと開ける。中からは大量の氷と一緒に、見慣れない食材がゴロゴロと出てきた。

「じゃじゃーん!冷やしおでんだぁぁぁ!」

「...は?」

富山と千葉が同時に間の抜けた声を出す。まるで時が止まったような静寂が流れる。

「冷やし...おでん?」

千葉が首をかしげる。頭の中で「冷やし」と「おでん」という単語が上手く結びつかない。

「そう!夏の暑さには冷たい料理!でも普通の冷やし中華とかじゃつまらない!だから冷やしおでんなんだ!天才だろ俺!ノーベル料理賞ものだろ俺!」

石川が得意げに胸を張る。

「いやいやいや、おでんって冬の食べ物でしょ?しかも冷やすって...それもうおでんじゃないじゃない!」

富山が慌てて手をヒラヒラと振る。

「そこが奇抜でグレートなところじゃないか!常識を覆す、革新的なキャンプ飯だ!これで俺たちは料理界の革命児になるんだ!」

石川がクーラーボックスから次々と謎の食材を取り出し始める。

「まず基本の出汁から!これは特製の氷出汁だ!昆布と鰹節を一晩氷水に漬けて作った究極の冷製出汁!普通の出汁とは格が違うぞ!」

透明なボトルに入った淡い黄色の液体を振って見せる。確かに美味しそうな出汁の香りがほんのりと漂ってくる。見ているだけで上品な味が想像できる。

「おぉ...確かにいい匂い...」

千葉が鼻をひくつかせる。

「それから具材だ!まずは基本の大根!でもこれはただの大根じゃない!」

大きな白い大根を取り出す。しかし、よく見ると普通の大根とは少し違う。異様に白くて、まるで雪のように美しい。

「これは氷室大根!北海道の特殊な氷室で3ヶ月間低温熟成させた幻の大根で、普通の大根より水分量が30%多くて、冷やしても食感が保たれるどころか、むしろ美味しくなるんだ!」

「そんな大根あるの?初めて聞いた...」

千葉が驚いて身を乗り出す。

「ある!俺がネットの最奥部で見つけた秘密の野菜だ!一本3000円もしたんだぞ!」

石川が自信満々に答える。実際のところ怪しすぎるが、千葉は素直に信じてしまう。

「すげぇ...3000円の大根...」

「続いて、これ!氷こんにゃく!」

透明で美しいこんにゃくを取り出す。普通のこんにゃくより透き通っていて、まるで水晶のような輝きを放っている。

「これは群馬の特殊製法で作られたこんにゃくで、マイナス5度で熟成させることで、冷やすとより弾力が増して美味しくなるんだ!プルプルで冷たくて、食べると口の中が涼しくなるんだぞ!」

「わぁ!きれい!まるでダイヤモンドみたい!」

千葉の目がキラキラと輝く。暑さでぐったりしていたのが嘘のように元気になってきた。

「そして極めつけがこれだ!」

石川が大事そうに取り出したのは、卵のようだが少し青みがかっている不思議な卵だった。

「これは福島の清涼卵!特殊な冷却飼料で育てられた鶏の卵で、茹でると自然に体感温度が下がるんだ!食べると口の中がひんやりして、冷やしおでんのために神が創造した卵なんだぞ!」

「そんなのあるわけ...科学的におかしく...」

富山が疑いの表情を浮かべかけたとき、石川が勢いよく遮る。

「他にも北海道の氷じゃがいも!青森の冷製ちくわ!静岡の氷はんぺん!全部冷たくしても美味しい、いや、冷たくした方が美味しい特殊食材だ!どれも1個1000円以上する超高級品だぞ!」

次々と出てくる怪しげだが美しく光る食材に、千葉は完全に魅了されている。

「すげぇ!石川さん、どこでそんな食材見つけてくるんですか!まるで宝石箱みたい!」

「企業秘密だ!さぁ、早速作ってみよう!この猛暑を吹き飛ばすぞ!」

石川がカセットコンロを取り出して火をつける。すぐに大きな鍋を載せる。

「まずは氷出汁を温めて、具材を煮込むぞ!冷やしおでんといっても、最初は温めるのがポイントなんだ!」

鍋に氷出汁を注ぐと、まろやかで上品な香りが立ち上がる。確かに普通の出汁とは違う、清涼感のある匂いだ。まるで高級料亭のような香りが森に漂う。

「おぉ...なんかいい匂い...高級な感じ...」

富山も興味深そうに鼻をひくつかせる。

「でしょ?これが氷出汁の威力だ!普通の出汁は熱で香りを出すけど、氷出汁は低温でゆっくり旨味を抽出するから、雑味がないんだ!」

石川が得意げに胸を張りながら、氷室大根を大きく切り始める。包丁を入れると「シャキッ!」と普通の大根よりもクリスピーな音がする。

「わぁ、音が違う!すごくシャキシャキしてる!」

千葉が身を乗り出して見つめる。

「氷室大根は繊維が特殊なんだ!冷やしても柔らかくならないし、むしろ冷たくすると甘みが3倍になるんだぞ!これぞ現代科学の勝利だ!」

大根を鍋に入れると「ジューッ」と美味しそうな音が響く。すぐに氷こんにゃくも加える。こんにゃくが出汁に触れた瞬間、まるで宝石が水に沈むような美しい光景が広がる。

「このこんにゃく、本当に透明だね...まるで氷の彫刻みたい...」

富山がこんにゃくを手に取って光にかざす。太陽光がこんにゃくを通して虹色に輝く。

「群馬の職人が3日間かけて手作りする極上品だからな!一個2000円もするんだぞ!」

石川が清涼卵を鍋に落とす。卵が出汁に触れた瞬間、なぜか少し青く光ったような気がした。

「今、光った?UFOの卵?」

千葉が驚いて指を指す。

「清涼卵の特徴だ!冷却成分が活性化してるんだぞ!これで食べると口の中がエアコンみたいに涼しくなるんだ!」

石川が適当なことを言いながら、他の具材も次々と鍋に投入する。氷じゃがいも、冷製ちくわ、氷はんぺん。どれも普通の食材とは明らかに違う神秘的な輝きを放っている。

「すげぇ...なんか魔法の料理みたい...ハリー・ポッターの世界かよ...」

千葉がうっとりと鍋を見つめる。

煮込んでいる間に、石川が最後の仕掛けを準備し始める。大きな発泡スチロールの箱を取り出し、中に大量の氷を敷き詰める。氷の中には保冷剤まで仕込んである。

「これが急速冷却システムだ!おでんが煮上がったら、この特製氷室で一気に冷やすんだ!温度差が旨味を閉じ込めるんだぞ!」

「おぉ...本格的...まるで研究室みたい...」

富山も興味深そうに見つめる。

30分ほど煮込んだところで、鍋からものすごく美味しそうな匂いが立ち上がってくる。普通のおでんとは明らかに違う、清涼感と上品さを兼ね備えた香りだ。まるで高級レストランのような匂いが森に漂っている。

「よし!いい感じだ!あとは冷やすだけ!この瞬間が一番重要なんだ!」

石川が鍋を火から下ろし、氷の上にセットする。そして上からも氷をかぶせて、完全に冷却モードに入る。「ジュー」という音と共に湯気が氷に触れて消えていく。

「これで30分待てば完成だ!史上初の冷やしおでんの誕生だ!」

「30分も?この暑さで待てるかなぁ...」

千葉がげんなりする。

「大丈夫!その間に屋台風のセッティングをするんだ!雰囲気も料理のうちだからな!」

石川が突然、車のトランクから真っ赤な提灯を取り出す。

「なんで提灯持ってるのよ...まさか最初から計画してた?」

富山が呆れ顔になる。

「おでん屋といえば提灯だろ!雰囲気が大事なんだよ!美味しさは五感で感じるものなんだ!」

石川が提灯をテントの間に張り巡らし始める。続いて「冷やしおでん始めました」と書かれた暖簾まで取り出す。

「暖簾まで用意してたの?どんだけ準備してるのよ...」

千葉が驚く。

「準備は完璧だ!さあ、千葉は太鼓を叩いて客寄せしてくれ!」

「太鼓?そんなの持ってきてないでしょ?」

「あるぞ!」

石川が小さな太鼓を取り出す。

「なんで太鼓まで...あんた移動式屋台でも始めるつもり?」

富山が頭を抱える。

「富山ちゃんは招き猫の格好してくれ!」

「絶対嫌よ!死んでも嫌!」

「まぁまぁ、せっかくだから楽しもうよ!どんなキャンプも一緒にやれば楽しくなる!」

千葉が太鼓を受け取って「ドンドンドン」と叩き始める。

「冷やしおでん始めました〜!氷室大根に清涼卵〜!この猛暑にピッタリの革新的料理〜!」

千葉の太鼓の音が森に響く。すると、近くでキャンプをしていた他のキャンパーたちが暑さでフラフラになりながらもゾロゾロと集まってきた。

「なんですか、これ?暑くて幻覚かしら...」

若い女性キャンパーが汗だくになりながら興味深そうに近づいてくる。

「冷やしおでんだ!この猛暑にぴったりの革新的料理だぞ!世界初かもしれん!」

石川が胸を張って説明する。

「冷やし...おでん?そんなのあるんですか?」

中年の男性キャンパーが首をかしげる。

「初耳です!でも暑いから冷たい物なら何でも...」

大学生らしき男性グループも寄ってくる。みんな暑さでヘロヘロだ。

気がつくと、20人近いキャンパーが屋台の周りに集まっていた。みんな暑さで朦朧としているが、「冷たい」という言葉に引かれてきたようだ。

「よし!そろそろ完成だ!世界初の冷やしおでんをお披露目するぞ!」

石川が氷から鍋を取り出す。湯気の代わりに、ひんやりとした冷気が立ち上る。

「うわぁ...本当に冷たそう...涼しそう...」

見ていたキャンパーたちがどよめく。

石川が鍋の蓋を開けると、奇跡のような光景が広がった。美しく透明な出汁の中に、宝石のような具材がプカプカと浮かんでいる。大根は雪のように白く輝き、こんにゃくは水晶のように透き通り、清涼卵は神秘的な青い光を放っている。

「うわぁぁぁぁ!きれい!まるで宝石箱!」

女性キャンパーたちが歓声を上げる。

「匂いも涼しげ...上品な香り...」

男性キャンパーも感心する。

「さあさあ!試食してください!史上初の冷やしおでんをご堪能あれ!」

石川が丼に冷やしおでんをよそって、みんなに配り始める。冷たい出汁がキラキラと輝いて、見ているだけで体温が下がりそうだ。

最初に手を出したのは大学生の男性だった。おそるおそる大根をお箸で掴んで口に運ぶ。

「...ん?...んん?...んんんん!?」

彼の表情がみるみる驚きに変わる。

「うまい!すげー美味い!しかも本当に冷たくて涼しい!食べると口の中がエアコンみたい!」

その声を聞いて、他のキャンパーたちも一斉におでんに手を伸ばす。

まず氷室大根を食べた女性が「きゃー!」と声を上げる。

「この大根、信じられない!外はシャキシャキなのに、中はじゅわっと甘い汁が溢れ出る!しかも冷たくて、まるで大根味のアイスクリーム!でも出汁の味もちゃんとして、不思議!」

次に氷こんにゃくを食べた男性が目を丸くする。

「このこんにゃく、プルプルを超越してる!弾力があるのに、歯で噛むと『プチン』って弾けて、中から冷たい出汁がピューって飛び出す!まるでこんにゃく味のグミ!」

清涼卵を食べた子供が飛び上がる。

「この卵、すっげー!食べると口の中がスースーする!でも卵の味もちゃんとして、黄身がトロトロで冷たくて、まるで卵味のアイスクリーム!」

氷じゃがいもを食べた年配の女性が感動する。

「このじゃがいも、ホクホクなのに冷たい!不思議!外側はシャリシャリで、中はクリーミー!まるでじゃがいも味のシャーベット!」

氷はんぺんを食べた男性が唸る。

「このはんぺん、ふわふわを超えてる!口に入れた瞬間、溶けるように崩れて、でも冷たい出汁と一緒に口の中に広がる!まるではんぺん味の雲を食べてるみたい!」

そして極めつけは出汁だった。みんなが一斉にスープを飲む。

「この出汁、上品すぎる!冷たいのにコクがあって、昆布の旨味と鰹の風味が口の中で踊ってる!しかも後味がすっきりしてて、飲むと体の芯から涼しくなる!」

あちこちから絶賛の声が上がる。

「石川さん!これすごいですよ!革命ですよ革命!」

千葉が感動で涙ぐんでいる。

「でしょ?俺の考えた究極のグレートキャンプ飯だ!ノーベル料理賞間違いなしだろ?」

石川が得意げに胸を張る。

「おかわり!お代わりください!」

「僕も!もう一杯!」

「私も!全種類もう一回!」

キャンパーたちが次々におかわりを求める。あっという間に大鍋一杯の冷やしおでんが空になってしまった。

「すみません、まだありますか?今すぐ食べたい!」

「僕の分も!お金払います!」

後から来たキャンパーたちが必死にお願いする。

「よし!みんなの熱意に応えて第二弾だ!今度はさらに豪華バージョンを作るぞ!」

石川が新しい食材を取り出す。今度は更に怪しく光る豪華なラインナップだった。

「今度は特別バージョン!北海道の氷タコ!青森の冷製つくね!鹿児島の氷かまぼこ!そして秘密兵器の沖縄氷もずく!」

「わぁ!今度はもっとすごい!まるで宝石のお祭り!」

キャンパーたちが歓声を上げる。みんな冷やしおでんを食べて元気になったのか、暑さを忘れて盛り上がっている。

第二弾の調理が始まる。今度は富山も手伝い始めた。

「もう、しょうがないわね...でも確かに美味しかったし...あんなに喜んでもらえると嬉しいし...」

富山が渋々ながらも笑顔で野菜を切っている。

「富山ちゃんも認めたか!冷やしおでんの魅力に屈服したな!」

石川がニヤリと笑う。

「認めてないわよ!でも...まぁ...少しだけ...ほんの少しだけ認めてあげる...」

富山が照れながら答える。実は内心では大満足している。

第二弾が完成すると、さらに多くのキャンパーが集まってきた。もう50人近くになっている。キャンプ場全体がお祭り騒ぎだ。

「冷やしおでん屋さ〜ん!僕たちにも〜!」

子供たちも駆け寄ってくる。

「はいはい!お子様にはお子様セット!特別に甘めの出汁で作った子供向けバージョンだぞ!」

石川が小さな器に特別に盛り付ける。氷はんぺんと氷じゃがいもを中心とした、子供向けの優しい味付けだ。

「わぁ!美味しい!ひんやりして気持ちいい!おじちゃんすごい!」

子供たちが大喜びで食べている。

その様子を見ていた親たちも、

「すみません、私たちにも...家族分お願いします」

と注文し始める。

「今度は家族セット!愛情たっぷりファミリーサイズだ!」

石川が特大の鍋でファミリー向けの冷やしおでんを作り始める。

気がつくと、キャンプ場のほとんどのキャンパーが石川たちの屋台に集まっていた。まるで本当の夏祭りのような賑わいで、みんな冷やしおでんを食べて元気いっぱいだ。

「石川君!君は天才だ!料理界の革命児だ!」

年配のキャンパーが感動して石川の手を握る。

「この暑さで温かい食事なんて考えられなかったけど、冷やしおでんなら最高だ!しかも普通の冷たい料理より満足感がある!」

「出汁の旨味が体に染み渡って、食べると元気になる!魔法の料理だ!」

「こんな美味しいものを食べたのは初めて!感動して涙が出る!」

絶賛の嵐だ。みんな冷やしおでんのおかげで暑さを忘れて大盛り上がりしている。

千葉は太鼓を叩きながら、

「やったぁ!大成功だぁ!石川さん最高!」

と大喜びしている。

富山も最初の心配はどこへやら、

「本当に美味しいわね...石川の奇抜なアイデアも、たまには...いえ、今回は本当に素晴らしいわ」

と素直に認めている。

「みんな〜!最後はデザート冷やしおでんだ〜!究極のフィナーレだぞ〜!」

石川が最後のサプライズを用意する。

「デザート?おでんのデザート?」

みんなが首をかしげる。

石川が取り出したのは、フルーツ風味の謎のおでん具材だった。

「これは沖縄の氷パイナップル大根!青森の氷りんごこんにゃく!そして極めつけは、北海道の氷メロンはんぺん!全部フルーツ風味の特殊食材だ!」

「えー!そんなのあるの?まるでファンタジーの世界!」

女性キャンパーたちが驚く。

「あるんだ!これで甘い出汁を作って、デザート感覚で食べられる冷やしおでんの完成だ!料理の常識を覆す最終兵器だぞ!」

石川が甘い出汁を作り始める。今度は昆布出汁にフルーツのエキスと蜂蜜を加えた、まったく新しいタイプの出汁だ。

「うわ〜!いい匂い〜!まるでフルーツパンチの匂い!」

子供たちが鼻をひくつかせる。

デザート冷やしおでんが完成すると、もはやキャンプ場全体がテーマパークのような騒ぎになっていた。

「美味しい〜!甘くて冷たくて、でもちゃんとおでんの味もする!」

「不思議すぎる!パイナップル大根、本当にパイナップルの味がするのに大根の食感!」

「りんごこんにゃく、まるでりんご味のグミ!でもこんにゃくのプルプル感もある!」

「メロンはんぺん、口の中でとろけて甘い香りが鼻に抜ける!天国の味!」

みんなが夢中になって食べている。子供たちは「おかわり!おかわり!」と大騒ぎ、大人たちも「こんな料理があるなんて!」と感動している。

その時、キャンプ場の管理人のおじさんがやってきた。

「おい、君たち!何だこの騒ぎは!」

一瞬場がシーンとなる。みんなが「やばい、怒られる」と思ったその時、

「...私にも一杯くれないか?さっきから匂いで我慢できなくなって...」

管理人のおじさんが照れながらお願いした。

「わははは!もちろんです!管理人さんには特別サービス!全種類セットでどうぞ!」

石川が特大の丼に全種類の冷やしおでんを盛って差し出す。

管理人のおじさんが一口食べた瞬間、

「うんまーーーい!こりゃすげぇ!60年生きてきてこんな美味い物初めて食った!」

と大絶賛。それを見て、みんなが一斉に拍手喝采した。

夕方になっても、石川たちの屋台は大盛況だった。最初は死にそうだった猛暑も、冷やしおでんのおかげで完全に忘れ去られていた。みんな元気いっぱいで、まるで真冬のような涼しさを感じているかのようだった。

「石川さん、今日は本当にありがとうございました!人生が変わりました!」

「また冷やしおでん作ってくださいね!今度は冷やしラーメンとかも期待してます!」

「僕、石川さんのファンになりました!サインください!」

帰り際に、たくさんのキャンパーが感謝を込めて挨拶してくる。石川はまるでアイドルのような扱いを受けている。

三人だけになったテントで、石川が満足げにつぶやく。

「やっぱり俺たちのグレートキャンプは最高だな!今日も歴史に残る大成功だ!」

「そうですね!どんなキャンプも一緒にやれば楽しくなる!今日も完璧に証明されました!石川さんは天才です!」

千葉が嬉しそうに答える。目がキラキラ輝いている。

「まったく...でも確かに楽しかったわね。みんながあんなに喜んでくれて、私も嬉しかった。石川の突拍子もないアイデアも、今回は認めてあげる」

富山も素直に認める。内心では今日が今までで一番楽しかったかもしれないと思っている。

「よし!次回はもっとグレートなキャンプを考えよう!冷やしおでんを超える革新的料理を開発するぞ!」

「次は何ですか?もう期待で胸がドキドキします!」

「それはお楽しみだ!でも今度は更にスゴイぞ〜!」

石川がニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

夕日が森に沈んでいく中、三人は今日の大成功に満足しながら、次の奇抜なキャンプのことを考えていた。猛暑で始まった地獄のような一日は、思いがけない大成功で幕を閉じたのだった。

「ところで石川...」

富山がふと疑問を口にする。

「なに?」

「あの特殊食材、本当にそんな産地で作られてるの?氷室大根とか清涼卵とか...」

「え〜っと...それは...」

石川がしどろもどろになって汗をかき始める。

「まさか全部普通の食材に適当な名前つけただけ?」

「バレたか...でも美味しかったでしょ?結果オーライでしょ?」

石川が苦笑いしながら頭をかく。

「石川〜!やっぱりそうだと思った!」

富山が石川を追いかけ始める。

「わはははは!逃げろ〜!でも美味かったからセーフ!」

石川が駆け出す。

「待ちなさ〜い!今度という今度は許さない!」

富山も後を追う。だが、その顔は怒っているというより、楽しそうに笑っている。

「あはははは!二人とも本当に楽しそう!僕も混ぜて〜!」

千葉が大笑いしながら二人を追いかける。

森に三人の楽しそうな笑い声が響く中、俺達のグレートなキャンプ第109回は、史上最高の大成功で終わったのだった。

猛暑という最悪の条件を、最高のアイデアで乗り切った三人。次回、第110回は一体どんな奇抜なキャンプになるのか。

石川の突拍子もないアイデアと、千葉の純粋な好奇心と、富山の愛あるツッコミ。この三人の冒険はまだまだ続く。

次回もお楽しみに!

「あ、そうそう!みんな!」

石川が振り返りながら叫ぶ。

「次回は『冷やしカレー鍋』を考えてるんだ!」

「また意味不明な料理を...」

富山が呆れながらも、内心では次回も楽しみにしている自分に気づいて、少し笑ってしまった。

こうして、猛暑の森に響く笑い声と共に、今日のグレートキャンプは幕を閉じたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『俺達のグレートなキャンプ109 猛暑日だ!冷やしおでん始めました!』 海山純平 @umiyama117

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ