第35話 良く分からないこと
暫くして、昼食の最中にテオシアーゼたちと一緒にどこかに行ってしまった恋歌が戻って来た。
しかし戻って来たのは恋歌一人で、テオシアーゼとそのメイドの姿は見えなかった。
で、恋歌はなんだか上機嫌だった。
「……何を話して来たの?」
わたしは流石に気になったので聞いた。
「とっても楽しい話だよぉ~」
楽しそうに言う恋歌。でもはぐらかされてる気がする。
これ以上聞いても答えてくれないだろうなとは思ったので、わたしは引き下がった。
喧嘩したわけじゃないとは思うけど……。もし喧嘩したんなら実力から言って恋歌の方がボコられてる筈だし。向こうは二人だし、敵う筈が無い。
けれど本当に楽しい話をしてきただけか? あの性格が歪んだ二人と?
気になる……。
◇
昼休みが終わりそうな時刻になって、生徒たちは教室へと集まっていた。
「あっ」
わたしは教室に入る時、テオシアーゼとそのメイドに丁度鉢合わせた。また暴言が飛んで来るぞ、とわたしは身構えたのだけれど、想定に反してテオシアーゼはわたしを何となく避けるような素振りを見せた。メイドも同様だ。
どういう事なんだ……?
「ていうかあんた、何で体育着に着替えてるの?」
わたしは気になった事を尋ねた。先ほど食堂で会った時には制服を着用していた筈のテオシアーゼが何故か体育着を着用していた。
その質問を受けた後、二人は凄く複雑そうな表情になった。テオシアーゼは羞恥に似た表情で、マードは気まずそうな感じだった。
「……何なの?」
わたしは二人の態度を怪訝に思って、疑問を口にした。しかしその答えは無かった。
「ちょっと」
そこで前に出たのは恋歌だった。恋歌はテオシアーゼの手を取って、どこかに連れて行った。テオシアーゼはそれに強く反抗する素振りは見せず、マードもそれを制止せず、二人に付いて行った。
「……本当に何なの?」
◇Sideテオシアーゼ・フィン・スーケンベルエ
テオシアーゼはコイカに連れられるまま、校舎の中の人気の無い所にやって来た。抗おうという気は起きなかった。恐怖がテオシアーゼの気力を奪っていた。
「なっ、なんなんですのぉ……」
泣きそうな声でテオシアーゼが問うた。
「態度がいつもと違うじゃん。みはるん絶対怪訝に思ってたよ」
「そりゃあ、そう、ですわね……」
「そうしたら私があなたたちに何かしたんじゃないか? ってみはるん思っちゃうじゃん」
「それが事実ですし……」
「いつも通り振る舞ってよ。言ったじゃん庶民とか雑魚とか、豚とか言うのは別にいいって」
「エッ」
「今までやってた事を変わらずにやれって言ってるだけだけど? それってそんなに難しい?」
コイカが言うとテオシアーゼは顔を真っ青にして、だらだらと脂汗を流した。
◇
もうすぐ授業が始まる時刻だ。それなのに恋歌たち三人はどこかに行ったきり戻って来ない。何をしているのだろうか?
と思ってたら扉が開いた。そこから三人が現れた。
テオシアーゼが真っ直ぐにわたしが座る席の方へとやってくる。
「しょっ、しょみ~~~~~ん!!(震え声) 豚ーーーーーーー!!! あいっ変わらずみっ、醜いツラしてますわねーーーーーーー!!!(震え) そんな顔で良く生きていけますわねぇーーーーーー!! えーっ、えーと……」
悪役令嬢はいつものようにわたしを罵って来たのだけれど、声がなんだか震えていた。で、何だか勢い足らずで最後ごにょごにょしてるし……。
わたしが困惑していると、恋歌がテオシアーゼの隣にやって来て、脇腹を小突いた……ような気がした。いや、一瞬の事だったので見間違いかもしれない。けど、テオシアーゼはビクッとしていた。
「本ッ当! 庶民は親に恥という概念を教わらなかったんですのねーーーーーーーーー!!!(上擦った声) 常に気品と言うものを重んじる貴族のわたくしにとっては受け入れがたい事ですけれどーーーーーーー!!!(震え声) けどまあ逆に庶民が必死になって外面を取り繕った所で滑稽になってしまいますし、それは――」
「テオシアーゼさん、もう授業が始まります。大声で叫んでないで席に座って下さい」
「アッ、分かりました……(小声)」
数学の先生に注意されて、彼女は自分の席へと向かった。
陰キャぼっちJCの異世界転移にヤンデレストーカー美少女が付いてきたんですけど!?~異世界の学園が脳筋すぎて馴染めないので早く元の世界に帰りたい~ 八火照@ファンタジア文庫様より書籍発売中 @hachibiteru
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