夥しい死を超えた夥しい生に贈る血肉のバーレル


 両想いだと思っていた彼女は、何の変化もなく関係だけを終わらせた。

 そんな良くある恋の終わりを胸に抱えて電車に乗り、フライドチキンのバーレルを持った老人に席を譲る。

 老人はお礼とばかりにバーレルについての話をする……



 老人の独特な雰囲気に呑まれた。

 起きていることはとんでもないのだが、語り手の割り切った口調もあって、不思議と似合っている。

 寝不足の時など、瞬きの前後で時間が飛んでポカンとすることがあるのだが、そんな感覚を受けた作品。