石ころのうた

吉晴

石ころのうた

満足か否かの問いに目を伏せる

私は石ころですから、なにも



寄り添って咲くたんぽぽさえ うらやんで 

てるてる坊主を逆さまに吊る



「歯車になるな」の訓示がのしかかる

愚者はそれをも いのちと背負いて



迷子の手 離れ 魔法は解けてゆく

小石蹴られて 雑踏の黙



歓喜する職場の片隅

千枚コピーのぬくもり 白き指先



追い詰める罵声に 幻覚

腹を割く菊一文字 血飛沫の舞い



逆光に呼ぶ声から逃げ息殺す

また捨てるなら どうかこのまま——



「砦」だと呼ばれし夜は海へ落つ

呑まれて沈み ゆらり、ぐるり



孤独とは足枷 確かに愛してた

砕けた欠片の映す祈りは



我が背に巣喰いしヤドリギ刈り燃やす 

煙は一筋、空へと 合掌

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

石ころのうた 吉晴 @tatoebanashi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画