私と君はどう生きるのか
ジョセフ武園
第1話 最初の夢
それは、普通の何気ない一日の最後だった。
日にちもそんな心身にまだ負担が掛かってない。水曜日の夜。
私は不思議な夢を見た。
そこは夢なのに周りに何もない真っ白な空間。普通夢って黒いイメージがあるけど、そこはまるで雲の中を想像する様な。そんな空間。
その私の目の前に。
たった一人、男の子が立っている。
歳は私とそう変わらない。上か下かも微妙に解らない。
背はまあまあ高い。大きなパーカーを着ているけど太っている感じもしない。
髪は黒の短髪。清潔感を感じるけど、なんか少しコボちゃんみたいに横と後ろを短くし過ぎな感じがする。そこで、今の事態に気付く。
「誰⁉ 」恐怖を感じ思わず叫ぶ。夢の中の私が。
その子は、何も答えない。何も答えないのに。
不思議だった。その子に少し見覚えがある気がするのだ。
「あ………」
その子がゆっくりと私に近付いてくる。その足取りは外見とは裏腹にどこか頼りなく今にも壊れてしまいそうな。そんな危うさがあった。
「……僕、貴女に逢ったら……伝えたい事。いっぱい……いっぱいあったんです。でも、でも、駄目だ。何も考えがまとまらない。くそ、時間が。時間がもうないのに。ようやっと周波数が揃ったのに……」
私の目の前で、その子はそんな事を言った。まるでワケワカメだが、まあ夢ってそんなものか。
「いいよ。落ち着いてから喋……」
そこまで言って、私はようやっと気付いた。
その子は
私を見て泣いているのだ。
何故?
不思議な感覚の中。
夢の私も確かに涙を溢していた。
そんな時、頬に熱さを感じる。
ああ。これは
そうだ。これは夢だから。
その子が、私の状態に気付き、慌てて駆け寄る。でも、もうその伸ばす手も。私には届かないのだ。
息が出来ない様な、そんな胸の苦しさが残る。
こんな、夢は。
初めてだ。
………
ゆっくりと朝陽が当たる瞼を開くと。
片方の目から涙が流れた。
見慣れた天井に貼ったアイドルのポスターと、目が合った。
「なんだったんですかね? この夢は」
私はその推しの男性アイドルに尋ねてみた。
と、所詮は夢の話だ。
私はベッドから起き上がるとゆっくりと背筋を伸ばして部屋を出る。
「おかあさーん。ごはーん」
私と君はどう生きるのか ジョセフ武園 @joseph-takezono
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