少し不思議な閑話集
加部千代郎
病院にて
あれは、僕が上京して一人暮らしをはじめてすぐの頃、体を壊してしばらく入院することになったんです
上京したてで親しい人もおらず、地元から離れている為に知り合いもおらず、誰もお見舞いに来ることも無く寂しい日々を過ごしていました
そんなある日、ふとしたことが切欠で病院の清掃に来ていたおじいちゃんと仲良くなったんです
それからおじいちゃんは、僕の病室に顔を出してくれるようになり、近所のご飯屋さんならあそこが美味い、食料品を買うならあのお店が安い、そんな他愛も無いおしゃべりをするようになりました
ある時、お見舞いにとおじいちゃんがミカンを持ってきてくれました
(普段何気なく接しているけど、そういえばお礼も言ってないな)
そう思った僕は
「おじいちゃんいつも来てくれてありがとうね、上京したてで一人ボッチだからうれしいよ」
そう、お礼を伝えました
それを聞いたおじいちゃんは、何も言わず頷いてくれましたが、何故だか悲しそうな顔をしたような気がしました
そして、その日を境に、おじいちゃんは病室にやって来なくなったんです
数日経ってもおじいちゃんは姿を見せません、気になった僕は看護師さんに聞いてみたんです
「いつも掃除に来てたおじいちゃん、最近来なくなったけどどうしたの?」
すると、看護師さんは首をかしげながらこう言ったんです
「掃除のおじいちゃん?そんな人知らないよ?」
僕は、なんかやだな~こわいな~と思いましたが、知らないはずはないと思い看護師さんに
「ほら背が小さくて白髪頭で刈り上げにしてるおじいちゃんだよ、いたでしょ?」
と、特徴を伝えると、看護師さんはハッとした表情になりこう言ったんです
、、、それ、おばあちゃん
少し不思議な閑話集 加部千代郎 @kabechorojp
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