天使の梯子

古都綾音

第1話

おはよう……

 おはよう……

 起きてほら!今日は神様にお会いしにいくのでしょ

 お母さん天使は まだ小さい羽の少女を おこした

「ね……ほら……ね」

 優しい声

 リンは もそっと 寝返る

「おきなさい!」

 わっ!

 布団をひっぺがされる

「優しいうちにおきなさい!」

「は……はいママ」

 リンは 慌てて鏡台の前に向かう

 あれ?私ってこんな顔だったっけ?

 パパとママは 金髪巻き毛なのに私だけ栗毛

 しかも 茶色の瞳

「うーん……」

 悩んでみても考えて見てもわからない

 髪にブラシをあてると てて……と 階下へ向かい顔を洗う

 あれ?

 やっぱり夢でもみてるのかな?

 私ってこんな顔だっけ!

「リン!ご飯よ」

「はぁい」

 食卓に向かうとパパが 天界新聞を読んでいた

「パパおはよう!」

「こら!もう1人前なんだからパパはやめなさい!」

 はぁい

 なんだかつまんない……

「はい……でしょ?」

「はいお母様」

 よろしい!

 腕まくりをして お母さん天使は パンケーキを 焼いていた

 いい匂い?

 ……私は納豆ご飯がいいな……

 ん……納豆ってなに?ごはんって?

 次から次へと浮かぶ疑問

 んーーーー?

 小首をかしげる

「はい……リン」

 でんと 前に置かれたのは15歳おめでとうと チョコペンで 書かれた 厚めの パンケーキだった!

「わぁ!」

 もう……

 くれぐれも神様に失礼のないようにするのよ!

 いい?

 パクっと 大口で頬張った リンをお母さん天使が しかる

 リンはもう……

「はい……気をつけます!」

 本当ね?

 はいお母様!

 よろしい


 第1章 与えられた運命


 リンは 母スコットと 父ラナンの子

15歳でみんな運命をいただいて

 いろんな仕事をする

 リンはどうなるのか?

 リンはたのしみで不安だった

 何時までも子供ではいられない

 わかってはいるのにね

 リンは歯をみがいて

 白いローブに着替えた

 へまやらかしゃなきゃいいな

 神様やみなさまのまえで

 すってーーーーーんなんてやだな

 白いローブは裾を踏みそう

 ええと……リンは思った

 成人するとみーんなこうなのよね

 歩きずらいったらない……

 さっきも裾を踏んで グェとなった

「なんだよ お前もかよリン」

 天界の 空をはたはたと飛んでいると

 いじめっ子の

 クレイグが

 飛んできた

 げ……クレイグ!

 リンは 身構える

「ふーん……似合うじゃん?そのローブ」

 何となく ちらちらみる

「何よ!クレイグ文句あるの」

「いやあさ……いつもドタバタなリンが 花の露でなんか化粧しちゃってさ……」

「笑いに来たわけ?」

 ちげーよ!

 似合うな!多少

「むーん?」

「それほめてる?」

 リンは腕組みする

「なんだよ どろんこ玉でもぶつけろってか?」

 クレイグ真っ赤

「いい!いいわよ」

 見れば

 クレイグも 白いローブの上に皮鎧なんかつけてる

「似合うわねクレイグ」

 まじかよ!

 クレイグ君……ぱぁ……とあかるくわらった

 あら

 可愛い!

 クレイグって笑うと八重歯がのぞくのよね

「似合うって言ったげてるでしょ」

 リンは ツンと 顔を上げると

 神様のお城まで 速度をあげた

「待てってリン!」

 クレイグの初恋は この後実るのか?

 はじまりはじまり


「ラナンとスコットの子リンです」

 光り輝く お城につくとリンは 門番を務める天使に声をかけた

「と……クレイグです」

 おい!省略しなかったかい?クレイグ

 15歳の運命をいただきにまいりました

 2人は姿勢を正す

「よろしい通りなさい……くれぐれも失礼のないように……」

 リンは声高に「はい」

 と答えた

城の 扉が ぎぃっと開く

 大きな扉なのにまるで重さが無いようであった

 2人が入ると背中でパタムと 閉まる

 あたりは光り輝いていて

 頭上の 天井は12個の宝石でステンドグラスのようであった

 お進みなさい

 優しい女天使が 階段を示す

 はい

 リンは てて……と 階段をめがける

 と?

 クレイグ君ローブの 裾を踏み背後でこけた

「バカねつまみなさいよ」

「なれてないんだよ!」

 頭をかきかきクレイグ君

真っ赤になりながら 立ち上がる

「こら!静かに!」

 神様のいらっしゃる扉の前に いらっしゃる 大天使様に叱られた

「しずかにね!」

 プラチナブロンドで オッドアイの 美しい大天使さま

「はい」

 リンが クレイグの 脇をつついた

「しかられたじゃないのよ!」

「おチビさん!お黙りなさい」

 今度は赤い髪の大天使様に叱られる

「はい……」

 リンは 神様の扉の前に立った

 綺麗な扉 金かな?

 リンが 一礼する

「お入り」

 柔らかいがしっかりしたお声

 神様だろうか?

「そんなに緊張しなくても良いのだよ……おチビさん」

 つぅ……と 静かに扉が開く

「さあ……おいで……」

 神様のお声に2人は 最敬礼をした

「よいよい……お入り」

 凄くお優しいお声

 リンは緊張が 抜けて行くのに気がついた

「リン……クレイグ」

 神様に名前を覚えていただけるなんて

リンはスキップしそうだった

 オホンと大天使様に咳払いされて チョコチョコといく

「2人とも成人おめでとう」

 光り輝く方が ふんわりと言う

 お声から察するに男の方

 リンが首をかしげる

「私には性別がないのだよ……リン」

 クス

 神様は笑われたようだった

「リン……まずは君に運命を 与えよう……人間の 浅野 鈴を守るように」

 あさの……すず……?

「君と入れ替わっているこだよ」

 リンが ちょこんとと首を傾げる

「あの子は追われていてね魔物が つきまとっていたのだよ……だからね リンと姿を入れ替えた……リンはおかしいとは思わなかったかい?」

「はい……確かに」

 あの子はね特別なんだよ 楽園を育む子だ

 だからね リン いってくれるかい?

 はい……

 リンが こくんと 頷いた

 オホン

 脇で控える大天使さまに咳払いされて

 リンは……

 御意……行かせて頂きますと 芯をとおした

「良いのだよ……皆は良い子だ 会いたかったのだよおチビさん達」

柔らかく お笑いになられて神様は 玉座を 降りられた

 大天使様あたふた

「神様!」

 赤い髪の大天使様が飛んでくる

 良いのだよ……

 神様は 輝いていて拝見することは出来ない

 だけど神様は笑った それがわかる

「鈴はね祈りをかかさずする……良い子なのだよ」

 はい……

 リンとクレイグ 二人で 鈴を守るように

 霊的みかけを 入れ替えてあるだけだから……周りにはリンは 金髪碧眼だよ

 鈴は 見つけられるね

「はい……」

 リンが頷く

 では……行っておいで……

 天使の梯子を呼ばれて リンは……そぅっとおりた

「行ってまいります」

 頼んだよ

 クレイグと 連れ立って地上へ降り立ったリンは 当たりを見渡した

 そこは人間界で言う車がバンバン通る高速道路とかいうところであった

 おりなきゃ

 はたはたと 舞いながら降りると

 そこは 公園の中

 そこにあの子はいた


 第2章 出会い


 リンが 花畑を見ながらてけてけ歩く

 当然ながら 他の人にはリン達は見えない

 と……前方からシーズー犬が かけてくる

 そしてそのあとを ピンクの首輪をつけたキジ猫ちゃんがついてきた

 シーズー犬君リンに一声吠えると 甘えはじめた

「こら……ジョニーダメでしょ!クロちゃんも待って」

 栗毛の あの子が かけてくる

 鈴ちゃん!

 かけて来てポカンと 立ち尽くしてしまう鈴ちゃん

「天……使様」

 どうやらリン達が見えているらしかった

「初めましてリンです」

 リンはそっとお辞儀した

 クレイグは頭をかいている

 そこへリンの肘鉄

「挨拶くらいしなさいよ!」

「あは……良いのです鈴っていいます」

「神様からおききしていますよ鈴ちゃん」

 ぱあっと鈴ちゃんは顔を明るくして ぺこんとお辞儀

「嬉しいです天使様」

 魔物に追われてるのですって?

「いえあの ちょっと変なのを見やすいタイプで悪魔とか見てしまいやすいんです」

「私たちが傍に居ることになりました守護天使として認めてくれますか?」

「もちろんです 光栄過ぎます 天使様」

 クロちゃんが リンにすりつく

「2匹お友達なのね」

「はい!うちの子です」

 可愛い!

 リンは 鈴ちゃんと 手をつなぐ

 クレイグは 後ろ手にくむと

 口笛をふく

 わぁ……賛美歌みたいです

 そりゃ褒めすぎでしょう

 リンが笑った

「酷いや!リン!鈴ちゃんありがとう」

 赤くなるクレイグにリンは面白くない

「あんまり褒めちゃだめよ鈴ちゃん……クレイグすぐ調子にのるからね」

「クレイグ様っていうんですね」

 クレイグは 鼻の下を 擦りながら鼻をすすった

「きたないでしょ!」

「あーあ……リンも鈴ちゃんみたく素直だったらなあ……」

 そうボヤくクレイグに 鈴ちゃんはクスと笑った

「守護天使様が 2人もいらっしゃるなんて光栄です」

 うふふ

 リンはまんざらでもない

 クレイグは

「様いらないからな鈴」

 とへらっとわらった

 ちょっとムカついたリンだったが そこは同意

「呼び捨てでいいよ鈴」

 言ってみる

 鈴ちゃんは 真っ赤になった

「はい……ありがとうございますリン……クレイグ」

 なんだかめちゃ可愛いんですけど……

 リンは同じ年頃の鈴を すっかり気に入った


 第3章 対峙


 リンと鈴 クレイグが 歩道を歩く

 脇を 自動車が 走り抜けて行った

「私……車嫌いなんです」

 鈴が 少しさみしそう

 隣のわんちゃんが ひかれてしまって

 悲しげな瞳

 誰も助けてくれなくて

 鈴がうめく

「そうか……」

 感傷的にクレイグ

 うん

 リンは 鈴をなぐさめたくて 手をパタパタとふった

「ね……きっと……ほら天国であえるよ」

救いになるのかどうか!

 天使であるのに 何も言えない それがリンは嫌だった

 天国……気休めにしかならない

「リンが言うなら会えるねきっと……」

 ほころんだ つぼみのように笑って鈴は ジョニー君の 頭を撫でた

「ねっ!」

 2匹に問いかける鈴

 めちゃくちゃかわいい

 リンは胸をうたれた

 何か言えたら

 天使としての壁にぶつかったリンだった

「ありがとうリン」

「ううん……」

 救いにならない……大きな壁

 リンは 下を向いた

 自動販売機の前で鈴はお茶を買った

 そしてリン達の分まで買おうとするがクレイグが 止めた

「俺らのめないからさ」

 あったかい

 何故だか リンは 自分とクレイグの温度差にがっくりきた

「のんで」

 クレイグが鈴にすすめる

 はい!

 鈴は目を細めると ペットボトルに 口をつける

美味しい

 どうやら鈴は烏龍茶が 好きなようだ

「ふ……ふ」

 リンは鈴の キュートさに 自分の悩みが 吹き飛ぶのがわかった

 なるほどです神様

 リンは 思う

 確かに楽園を 育てる子 まさにです

 こくん……

 鈴は飲み干してしまうと 脇のゴミ箱に きちんと捨てた

「行きましょう」

 やわらかく笑われると 切なく そして嬉しくなる

「鈴……」

「はい?」

 リンの呼びかけに鈴が 顔をあげた

「何があっても守るから……」

 つぶやいたリンに

「はい……」

 と鈴は 笑った

「行きましょうお家すぐです」

 てて……と行く鈴

 リンも 続く

 クレイグは少し考えた風だった

「リン……大丈夫かよ」

「う……ん……ううん大丈夫クレイグ」

 と……黒い影が鈴に 近寄ってくる

「悪魔」

 リンが 天界の力で祓い落とす

 鈴は振り返る

 気がついてないようだった

 よかった 変に不安がらせては可哀想

 きっと純粋すぎる

透明度の高い魂

 悪魔が 欲しがる魂!

 リンは きゅっと 手を握った

 守ってみせる!

 きっとね!


 第4章 悪霊


 鈴は 自宅へと戻ると 2匹の足を綺麗に拭いて ちょいちょいと 見回した

「今日はいないみたいですね」

「ご家族が?」

 リンが 首を傾げる

「ううん……ここの所成仏できないのか良く悪霊みたいなのが……」

 それってやばいでしょ!

 リンとクレイグ顔を見交わす

 良く玄関先にいるのです

 ぴくり……クレイグが脇を見た

「リン……」

「うん……悪霊じゃない……それに化身した悪魔だ!」

「あ……この気配」

 鈴が耳を澄ます

 この音聴こえますか?

 パキン……パキン……と音がする

「いけない」

 どうやら天使の存在が刺激をしてしまったらしい……

 悪魔は 鈴の真後ろに立って 手を伸ばした

「鈴ふせて!」

「はい……いっ」

 素直にペチャリと 板の間にふせる鈴

 リンは 天界の光で浄化を試みる

「おい……悪魔は浄化できないだろ!」

 クレイグが 叫んだ

 違うの!

 この悪魔 1人くってるの 悪魔の中で 魂が 悪霊になりかかってる!

 リンの 浄化で 悪霊が 天界へと昇る

「よし!」

 クレイグが 手に剣を 呼んだ

「リン……」

「誘導しろって言うんでしょ!」

「おう!」

 リンが 駆け出した

 悪魔はリン目掛けて 爪を落とす

 そして玄関からまろびでて リンを追おうとする

 そこへ クレイグの 一閃!

 悪魔の首が落ちた

 きゃ……

 鈴が 怯える

「悪い 怖いよな……」

 そっとクレイグは 鈴の記憶を消そうとする

「大丈夫です知るのも大切な事ですから……」

 びっくり 鈴は強かった!

 リンが ほっとした

「ありがとうございますクレイグ!」

「敬語いるか?鈴」

「ふふ……わかった……クレイグ」

 静かに笑って

 ジョニーを抱きしめる

「最高の味方です2人は」

 涙ぐむ 鈴

「泣かすな!おバカ」

 リンのゲンコツ

「ちげーよ」

「私ね男の子苦手で喋れないのです……でもクレイグとは話せる!それが嬉しくて……」

 ほんわりと笑うと クレイグが頭をかいた

「こいつガキだから……」

 リンが クレイグを つつく……

「うふふ……2人見てると夫婦漫才みたいです」

「夫婦?なんだよそれ?」

「夫婦みたいってこと……」

 鈴に笑われる

「ちげーよ!リンなんかと……」

 なんかって何よ

 2人はほっておくといつもこう……

 なんだか鈴は知ってる気がした

 あがりましょ!

 おつかれでしょ!

 鈴は2人をあげると バタンと 玄関を閉めた

 お茶……

 鈴が 探そうとして

「あ……俺ら……」

「すみません……じゃあ……」

 ……教会の聖水さえあれば

 はい……

 そっと 綺麗な小瓶

 その中には煌めきが溢れていた

 2人はぴっぴっと 己にかけて 力をみなぎらせる

「ありがとうな鈴」

「はい!」

 わんわんと ジョニー君!

 嗚呼ご飯ね

 まってて

 ドライフードを上げる鈴

 リンは 鈴の動作が可愛くて 見とれていた

「いいこね……」

クレイグにしか聞こえない声で言うとクレイグも

「ああ……」

 そうかえす

 見習えよ!

 相棒の 軽いジョークなのに 何となくリンの 心に刺さる

 わかってるわよ!

 リンがふんぞり返る

 守ってみせるんだから!

 クレイグは ふふ……と 笑った


 第5章 予兆


 鈴を魂を得たい何者かは どんな悪魔なのか予想もつかない……

 だが 鈴のお母さんは優しい人だった

 菊子さんという

 お父さんは 横暴だった

「学校に行かず家の事をしろ!」

 そんな父親

 リンならワンパンチくらわせて 逃げたい父親

 自分の父親は とやかく言わないので こればかりは腹がたった

 鈴は優しく はい はい と返事をする

 きっと 鈴はお母さん似だ

 それこそ感謝だ

 そして父親は 嫁にいけとも言い出す

「最低」

 リンがボヤいた

「それ鈴の前で言うなよ」

 クレイグに クギをさされる

「だけど」

 ああ最低なのは もちろんだけどな リン

 理解しろよ 鈴が悲しむ

「なんかクレイグ……かっこよくなったんじゃない?」

 それともリンが気づかなかっだけ?

 リンは頼もしそうだ

「おう……おう……よ」

 当たり前だろ

 お前の悲しむ顔見たくねーしな

 鈴が悲しんで リンが 泣く姿は見たくない

 いいたかった

 でも言わない!

 大人だもんな

 クレイグは 自分で首筋をもんだ

「偉いな俺……」

「え……」

 リンが クレイグの顔を覗く

「な……なんでもねーよ」

「真っ赤な顔しちゃってクレイグ!」

 うっせーよ

 クレイグは 一回り大きくなった

 リンにはそう見える

「リン……クレイグ……待たせてごめんなさい」

 鈴が てて……と 駆け寄ってくる

 リンとクレイグは 廊下の 暗闇にいた

「お父さん クリスチャンなの?」

 と……リン

 ううん……鈴は首を横にふる

 お母さんと 私だけ

 でもね 大事だから!

 見れば鈴は小さなロザリオを している

「神様がね鈴は いい子だって」

 わあ……

 鈴が 顔を明るく輝かせた

嬉しい……

 鈴……誰と?

 はなし……て 菊子さんが出てきて

 鈴に 声をかける

「今ね天使様が」

「うるさいぞ……さっさと寝ろ」

「はい……すみませんお父さん」

 本当に最低だ

 鈴は 2階にあがると

 リンとクレイグを 呼んだ

 この聖書

 神父さまが くださったの

 見れば革の表紙の 金箔がほどこされた 素晴らしい聖書

 愛されてるなあ

 リンはおもった

 鈴は3人で寝たいと言い出し

 川の字になった

 クレイグが 真ん中

 なんだかどきどきである

 3人が 寝静まったころ

 うーん……うーん……と鈴が うなされはじめた

「鈴」

 起こそうとして

 夢魔の類が 鈴を苦しめているのがわかった

 いけない……

 リンが 浄化の 光をあてる

「あ……リン」

 鈴が パチリと 目を開けた

 お父さんが 聖書を 破く夢を見ちゃって

 きっと あの父親に 夢魔が 住み着いているんだろう

 リンは たたっと階下へおりた

 そしていびきをかいているはずの 父親の部屋に入る

 そこで父親は 瞬きもしないで 布団の上に座っていた

 そしてぶつぶつと呪いを唱えている!

 消えろ夢魔!

 クレイグの剣が 夢魔の首をはねた

 しかし……またくっついてしまう

 どうしたらいい 焦るクレイグ

 浄炎なら 通じるかな!

 ぼっ……

 リンの 手から 浄化の炎が 放たれた

 そしてクレイグが はねたあとの 傷を焼く

 すると父親は パタリと 横になったのだった


 デーモン!

 リンは 炎で悪魔を祓う

 そして

 そっと 父親に布団をかけた

 これでかわってくれるといいけど

 クレイグは鈴の側へいき

 お父さんに悪魔がついていたと 丁寧にいい

 クロちゃんに あまえられた鈴が にこと笑うのを 見ていた

「鈴……お前良い奴だな つらかったら泣くんだぞ」

 ほろり……

 鈴の頬を 涙がぬらした

「はい……」

 クロちゃんが ごーろごーろと のどをならす

「な……」

 鈴をだきしめてやる

「良い奴すぎるんだよ!お前」

 リンは入るに入れない

 クレイグが 鈴を抱きしめていたから

 クレイグ 鈴の事?好きなのかな?

 いやな 感覚がした

 そして

 奴はその隙を見逃さなかった

 そしてリンの心に ポツリ 染みを おとしたのである


 第6章 喰らう……


 リンの心に 闇が舞い降りる

 嫉妬?

 そんな?

 クレイグに?

 不安がよぎる

 いけないと知りつつ 天使でありながら……

 リンの 闇を喰らう

「鈴……」

 ふと 害意が 生まれてくる

 何故!

 リンはぶんぶんと首をふる

 いけない!

 私……天使なのに

 神様……どうか……

 その心をすら 喰らわれる

 いや!いやぁ!

 クレイグは気づいてはいない

 硝子瓶に閉じ込められたリン

 危うくもろく……そして固く

 リンの意識は閉じ込められる

 助けて……クレイグ

ふと……クレイグと 鈴が ニタリ笑った気がした

 やめて!やめて!

 リンの心は闇堕ちした

「リン……おはよう……聖水」

 鈴の 細い手が 聖水の 瓶を おこうとする

「いらない!」

 ひどく冷たく

 言い放たれて びく……と 鈴が 震えた

「ご……ごめんね」

 鈴が おろおろと はなれた

「どうした?鈴」

 クレイグは 聖水を 喜んでうけとる

「リン……」

 鈴は言えなかった リンの変化を知りながら……

 そして それは 闇の足音

 リンの体を蝕むなにか?

 クレイグ……助けて……

 鈴は ジョニーと クロの お散歩に行く

 クレイグは 喜んでついていき

 リンは不貞腐れながらだった

「おい……リン!」

 クレイグが リンを つつく

 お前……冷たくないか?

 鈴がかわいそうだろ!

「そんなに鈴がいいなら……鈴といれば!」

 リンの言葉に クレイグは傷ついた顔を した

 そして

 目をそらす

「お前!」

 最低だぞ!

 言葉を飲み込む

 リンに言えない!

 リンは 硝子瓶の中でそれを見るしかできない

 助けてクレイグ……

 それが リンの魂を 狙う 奴だと リンは気づいた

 だけど

 クレイグ……クレイグ……クレイグ!

 その声が届かない

 鈴……悲しまないでお願い……

 たすけてよぉ!

 リンの祈りは届かなかった


 第7章 激突


 リンが変わった

 魂の肌触りが 違う

 クレイグが 少し距離をおく

 それが リンの心の闇を決定づけることになるとは知りもしない

「鈴」

 階段を 降りようとする鈴を リンの 腕が突き飛ばす

「危な……い」

 クレイグが 抱きとめた

「リ……ン」

お前どうした!

 クレイグが 食ってかかる

「邪魔なだけよ……」

 つぶやいて リンは ふい……と 離れた

「まさか……あいつ」

 今のは リンの 魂だった

 そんな馬鹿な!

 クレイグが 剣をかまえる

リンは闇堕ちしてはじめて自由になった

 硝子瓶が 粉々に 落ちる

 そして頭をかきむしった

 クレイグ……鈴!許さない!

 逆上のまま

 嵐を呼ぶ

 バンッ

 内圧の せいで窓が鳴る

「よせ!リン」

 クレイグが 気づいた時には

 リンの 翼は黒く染まっていた

 リン……

 鈴が へなと 座り込む

「殺す」

 リンがたちあがった

「いいよ……リン」

 鈴が 手を伸ばす

 いいよ……?

 クレイグが 鈴の前に立ちはだかる

 リンは バシュと 矢を放つ

 それはクレイグを 貫いて 鈴の 胸にたった

 バカな……

 クレイグが くずおれる

「なんで……だよ!」

 なんで……おまえ!

 クレイグが 手を伸ばす

 鈴は 胸を貫かれて

 倒れこんだ

「ふん……」

 一瞥したリン……その目から黒い涙が溢れていた

「ばっか野郎」

 クレイグが 起き上がると

 リンを抱きしめる

「好きだよ……お前を……」

 言って

 クレイグは たおれた

 ドクン……

 リンの 魂が闇の中で 閃光を 放つ

「クレイグ……鈴」

 リンの魂が 闇から駆け上がる

 そして 羽が 純白に戻った

 かっ……

 白光を 放った リンの魂が リンを食った悪魔と 対峙する

「もう少しだったがな……」

 けけけ……と笑われて

 リンが 爆発した

 そして浄化の白光を 放ち 悪魔を叩く

「おいちび……おまえでは 相手にならんセラフィムでも呼ぶんだな」

「いいや……お前だけは許さない!」

 リンが リンの羽が6枚へと転じる

 まさか……このチビが!

 悪魔が 爪を突き立てようとして

 セラフィムの 力に圧倒された

 そして

 爆炎が 悪魔を燃え上がらせる

 あがぁ……

 リンにおりたのは ミカエル様だった

 そして塵になった悪魔を祓い捨て

 クレイグと 鈴に 癒しを かける

 間に合わないかもしれない!

 でも……助ける!

 リンの 髪が金髪に戻り 青い瞳が うるうると涙を零した

「リン……」

 ミカエル様は言う

 よく戻ったね

そう言いながら

 クレイグを癒し

 鈴が 目を開けた

 ああ……ミカエル様

鈴は 涙をこぼす

「抱きついてもよろしいですか?」

「良いよ……鈴……おいで……」

 鈴は きゅっと すがる

「ごめんなさい」

 リンは 涙をこぼす

 良いよ

 鈴が にっこり笑った

「リン……」

 クレイグが リンの頭を抱く

「お前ってさ……めちゃ不器用だけどさ……好きだよ」

 そっと言って リンの 額にキスを する

「バカだよな?お前」

 どーしてよ……

 しかしリンは ハラハラと泣く

「ごめんね……ありがとう……」

 それが言いたい

 クレイグが リンの金髪を 混ぜると ふんと 笑った

今回のは ツケ1な?

「へ?」

 ツケ?

 こら……クレイグ!

 ふふ……鈴が 笑った

 本当に2人ってお似合い

 ミカエル様も笑う

「いいコンビだね……鈴」

「はい……」

 見守る2人はあたたかかった


 最終章 エピローグ


 リンと 鈴 クレイグは 神様にお会いする

 ミカエル様と天界へとのぼり

お城の前にきた

 叱られそう

 ビクついていたリンだが 鈴が その手をゆっくり あったかく 握ってくれる

「鈴……」

 リンが鈴に目線を合わせると 鈴は にっこり笑った

 扉が開き

 神様の前まで進む

「よく戻ったね」

 優しく神様が言う そして再び神様は 玉座を おりられた

「あ……」

 鈴の頭にふわりと触れ

 優しく微笑まれたようだ

「鈴……良く来てくれたね…………会いたかったよ」

 そんな……勿体ない

 鈴が目を ふせた

「いつも祈りをありがとう」

 やわらかく笑む 神様

 お顔は みえないけれど そうと感じる

 リン……

 神様は リンをみて そっと包み込んだ

 よくぞ戻った

 我が子等よ

 包まれると 痛かった心が癒される

「申し訳ありませんでした」

「鈴も赦したならば問うまい」

 そうだろう?

 神様は ミカエル様を みて笑う

「もちろんです」

 ミカエル様が頷く

 さあ 鈴どうする?

 リンと クレイグを守護とするか?

 神様が 鈴に笑顔を むける

「はい……もちろん傍にいて欲しいです」

 鈴……

 リンが 鈴の 手を取った

 ならば行くといい

再び天使の梯子がかけられる

 ミカエル様は天界にのこられたので

 3人で降りていく

 夢のあとさきへ……

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