「幽霊が出るから見においでよ」
公園で仲良くなった男の子にそう言われて、小学生の「私」はお姉ちゃんとともに意気揚々と彼の家である大きな屋敷に向かことに。
しかし、幽霊は屋敷の中ではなく、庭に出るという。
そこには大きな犬小屋、そして「ワンワン!」という犬の鳴き声が響いていた。
しかし、肝心の犬の姿が見えなかった……。
本作は、犬の姿が見えないために、読み進める中で色々と犬の姿を想像することになるかと思います。
おそらくは柴犬、またゴールデンレトリバーなどの大型犬という向きの方も……。
しかし、作者様はそんな人の持つ想像力を巧みに利用し、最後にその想像をひっくり返します!
その後では、男の子やその母親もずいぶんと恐ろしく見え、屋敷全体が怖くて仕方がなくなること必至でございます!
見事な構成の光るホラー短編、是非ともご一読を!!!
どこかウェルメイドな雰囲気のある物語。
品の良さげな出で立ちの少年。
綺麗な洋館。
上品な母親。
抱かれた小型犬。
書かれたすべてに、気をつけてください。
道具立てのすべては、読む者の錯誤を誘うためです。
どうして、そんなネタバレみたいな、レビューを書いているかって?
決まっています。
不可避だからです。
気をつけて読んでいても、みんな怖さの中に落とされるのです。この物語は。
〝私のタックルをみんな研究して対策するから、全員タックルで倒した〟
そう言った選手のように。
わかっていても避け得ない。そんな事があるのです。世の中には。
それが本作です。
さあ、皆さんも心して読んでみたら良いのです。
きっと、避けられないから。