第22話 世界的薬学者の悪意

  一

 ロイは、午後六時半過ぎに病院を出て、福山駅から新幹線さくらに乗った。午後七時十一分、広島駅に着く。伊豫と落ち合う八丁はっちょうぼりまで、急いで歩けば七時半に間に合う。市電を使えば早いが、じっと立ち止まって待つ時間が苦手だ。

 金曜夜の広島は、アーケード街全体が人波でれている。アーケードを外れた裏通りにまで、押し出されたあぶくのごとく人が溢れる。広島市の人口は福山市の三倍弱だが、繁華街の規模や人の多さは十倍以上にも感じられる。

 店の前で、うつむき加減にたたずんでいた伊豫が、ロイを見付けて笑みを浮かべた。米国アメリカ流の派手な笑顔では、無い。グータッチ《フィスト・バンプ》も、して来ない。二週間の日本滞在のうちに、米国アメリカずれを治したのか。

「忙しかったんだろう? 広島まで来てもらって、大丈夫だったのか」

「ええねん。たまにはポンコツ教授にも出番を与えたほうが、しゃっきりしてくれるやろ」

 二人は、紺地こんじに白で「お好み焼き」と染め抜いた暖簾のれんを、並んでくぐった。

 熱い鉄板を挟み、冷えた生ビールで乾杯する。ロイは、店内を見廻した。鉄板がめ込まれた木製テーブルが並ぶ、この界隈かいわいではごくありふれた風情の店だ。

「お前の根っこは、やっぱり広島にあるんやな。お気に入りは、広島焼の店か」

 伊豫の細い目が、怪訝けげんそうにピクついた。

「『お好み焼きの店を予約しろ』って指定したのは、お前だろ?」

 ロイは、はたと行き違いに気付いた。伊豫へは、「お好みの店を予約しといて」とメールしただけだ。

「確かに、大阪人が言う『お好み』は、『お好み焼き』の略称の場合があるわな。『今日の昼は、お好みをいにこ!』みたいな。……お前、学生時代から大阪になごり過ぎて、気を回し過ぎや!」

「じゃあ、俺はただ、自分好みの店を選べば良かったのか……日本語って、難しいな」

「ま、ええやん。粉物こなもんは、大阪人と広島人、共通のソウル・フードや。ちなみに、大阪人が言う『お好み』が広島風ふうのお好み焼きを指すことは、まず無い。お好み焼きとちゃうからな」

「なぜだ? 『お好み焼き』と書かれたこの店の暖簾のれんが、嘘だってのか」

「この店で出て来るんは、お好み焼きでは無い。広島焼や」

「広島焼は、つまり広島ひろしまふうのお好み焼きだろうが。大阪おおさかふうと、変わらないだろう? どっちも鉄板の上で粉物こなもんを焼くだけだろうが」

ぜんぜんちゃうやん! 広島焼には異物が入ってるがな。あと、具材を一つずつ重ね焼きしてから最後にり返すなんて、効率が悪過わるすぎや。せっかちな大阪人には、とても我慢できへん。最初から具材を一度に掻き回したらええやん。しかも店によっては、『広島焼は、一度も引っくり返さんと焼けます』なんて吹聴ふいちょうしよる。そのあざとさは、もはや詐欺さぎまがいやで」

「声を小さくしろ! お前、生きて広島を出られんぞ。……異物って、めんを指してるのか? のトッピングに過ぎんだろうが」

「じゃあ、訊くで? お前は、神戸の『ソバめし』を、焼きソバか焼飯やきめしのどっちへ分類するねん」

「分類する必要が無いだろう? 『ソバめし』は『ソバめし』だ」

「その通りや。焼きソバにめしが入ったら、焼きソバでも焼飯やきめしでも、あらへん。もはや、別の分野カテゴリーの食いもんへ生まれ変わるねん」

「つまり……お好み焼きに麺が入ったら、お好み焼きの分野カテゴリーを外れる、って言いたいのか?」

「せや。それが交雑種ハイブリッドの宿命や。無理矢理、既存の分野カテゴリーに当てめても、浮いてしまうねん……米国アメリカ人と日本人の混ざった俺が、常に直面してる現実や」

「また、根っこの話かよ」

 伊豫のあきれ顔へ、いきなり本題を叩き付ける。

一昨日おととい、アスタリスクの最高執行責任者COOぅて来た。アクセル・トルシュは、二十二年前にオカンと離婚した、俺の実の親父や。連絡を取ったんは、十五年ぶりやった」

 瞬間凍結されたように、口を半開きのまま、伊豫が固まった。

 十数秒後、ようやく言葉を発した。細い目で、ロイをにらみ付ける。

「確かに、お前はアクセルにそっくりだ。……なぜ、突然、会いに行ったんだ?」

 ファースト・ネームで「アクセル」と、伊豫は呼び捨てた。

 ――親しい仲やんけ。

「前回、お前とぅた日に襲われた研修医は、尾道漢方薬局の娘や。母親が五十六歳のときに生まれてる。尾道漢方薬局を営む夫婦は、三週間前に殺されて、『若返り薬』の開発日誌を奪われた。お前が教えてくれた、新薬の狩人ドラッグ・ハンター仕業しわざやろ」

「なるほど、なるほどなぁ、そういうわけか……」

 目の前のロイの存在を忘れたように、伊豫が虚空こくう見詰みつめて独りごちた。

「何を納得してるねん? お前、俺の親父をよぅ知ってるみたいやん」

 質問には答えず、伊豫の視線がロイの目を鋭く射抜いぬいた。

「アクセルと、何を話したんだ?」

「その研修医は、俺の直属の後輩やねん。『若返り薬』の中身を一切知らんかったし、襲われた後はほぼ植物状態や。せやから、二度と命を狙わんよう親父に頼もうとおもたけど、『新薬の狩人ドラッグ・ハンターなんざ知らん、日本人が創った怪しげな若返り薬などに興味は無い』の一点いってんりやった」

「今後の研究の方向には、触れなかったか?」

予備的小規模試験パイロット・スタディのデータを解析して、新たな研究を立ち上げるとか、自信満々にほざいとったわ」

 研究者なら、誰にでもできる想像だ。情報漏洩には当たらないだろう。

 ふーん、と伊豫が考え込んだ。タオル鉢巻はちまきの店員が、広島焼を運んで来た。ちゃのソースがどろりと鉄板てっぱんに垂れ、じゅわっという音と共に、スパイシーな匂いがめる。

 伊豫は、へらを取ろうとしない。この二週間で更に頬がこけ、細いながら目のぎょろつきが際立きわだつ。

「アスタリスクは……勝利の女神に逃げられたな」

「どういう意味やねん?」

「その路線だと間に合わん。恐らく、若返り時に活性化した遺伝子をスクリーニングして、お得意のワクチン製造へ持ち込むつもりだろう。最短でも一年は掛かる」

 アクセルの構想を、伊豫は読み切っている。

「何に間に合わへんねん? 研究にタイム・リミットなんて無いやろ」

「臨床試験の失敗を一年も隠蔽いんぺいするのは、不可能だ。どこからでも情報が漏れる時代だ。成果を出す前に株価が大暴落して、資金しきんりにまるだろう」

 ――会社のWi‐Fiが、頻繁にハッキングされる。会社や国家への忠誠心よりも、目先の個人的な利益を優先する者が増えた――

 あのとき、アクセルが嘆いていた。野心で尊大にふくれ上がった巨体から、無念さが垣間かいま見えた。

「アスタリスクは新薬の狩人ドラッグ・ハンター使つこて、尾道漢方薬局の『若返り薬』の情報を得たんやろ? 臨床試験の失敗と新しい『若返り薬』の発見を同時に公表すれば、評判は落ちへんがな」

 あーぁ、とTVゲームに負けたように、伊豫が無邪気に笑って天を仰いだ。

「もうアスタリスクからは、カネをれないってわけだ。……お前は、医者になって良かったよ」

 伊豫と、全く話が噛み合わない。

「お前、今日は変やで。『医者は目の前の一人を救うだけだが、壮大な研究は人類を救う』んやろが」

「カネが無ければ、研究はできない。研究ができなければ、誰も救えない。自分一人すら、やしなえないんだ」

「お前ほど抜きん出た研究者なら、アスタリスクのカネなんか当てにせんでも、いくらでも食って行けるやろ?」

「お前の親父のようなイェール大学卒の優秀な研究者ですら、時流に合わないと職を失う。アジアから来た俺ごときの根無ねなぐさは、血反吐ちへどを吐いてようやく見付けた居場所ですら、いつも薄氷の上だ」

「せやったら、日本こっちに帰って来たらええやん。研究費がすくのぅて、米国あっちほどデカい仕事はできんでも、日本こっちなら立場は安定してるやろが」

にしか、言えないセリフだな。医者以外の研究者が、一度でも海外へ出ると、帰国したときの立場は保証されない。日本には、海外で優秀な業績を上げた研究者を、正当に評価して迎え入れる土壌が無い。むしろ逆風を受ける場合すらある。日本の大学職の人事は、このご時世でも年功序列や慣習やパワー・バランスで決まる。俺が今、日本で職を探しても、まず見付からない」

「医者の研究者なら、状況はちゃぅんか?」

「医者の世界は、いい意味でも悪い意味でも、今なお教授の人事権と医局の繋がりが強固だ。海外で大きな研究成果を上げた医局員のためなら、教授の強権で人事を異動し、助教や講師のポジションをける」

「お前は、認知症の特効薬になり得る、タウ蛋白の分解酵素を発見した超有名研究者やで? 今すぐは無理でも、時間を掛けて探せば、どこかの大学や研究所の職にあり付けるやろ」

「時間など、掛けたくない。研究者の名声なぞ、一瞬で吹き飛ぶ。今、この瞬間も、俺が発見した酵素の研究を推し進めている奴が、世界じゅうにいる。カネが尽きて研究を中断した瞬間から、俺の発見者としての優位性は、り減っている。更におくれを取れば、次世代の抗認知症薬を完成させる栄誉は、他の奴のものになるんだ」

 改めて、ロイは伊豫を眺めた。小柄でずんぐりしていた体型は、線が細くなり、今や貧相に見える。中年に差し掛かり、アメフトに明け暮れた高校時代よりも痩せる男が、他にるだろうか。

 目の前の鉄板に、ソースが黒くげて干乾ひからびた広島焼が残っている。伊豫が手を付けないまま、四分の三をロイがたいらげてしまった。

「酒ばっかり飲んどらんと、少しは食べろや。広島焼って、めっちゃ旨いやん。お好み焼きとして認定したってもええくらいやで」

「研究費が尽きる前に、俺は研究室をたたむよ。『timeless』の動物実験の結果を改竄かいざんでもしない限り、国立衛生研究所NIHもアスタリスクも、俺へ研究費を廻してくれない。仮に、端金はしたがねもらえても、一時いちじしのぎに過ぎん。もうじき、アスタリスクは終わる」

 へらを取る代わりに、伊豫が勢い良くジョッキをあおった。

「畳んで、どこへ行くねん」

「さぁな。どこへ行っても、どうせ俺の居場所は薄氷の上だ」

 細い目のはしが、自嘲気味な笑いにゆがむ。ロイの左頬のケロイドが、チクチクと痛んだ。

「せや! お前、もつ煮込みが好きやったな! メニューにあるで!」

 店員へ挙げたロイの手をつかみ、伊豫が首を左右に振った。

「もう十分だ。気をつかってもらって、スマンな」

なにやったら、食べれるねん? せっかくの、ひさりの日本やろが? お前の好きなもんを、欲しいだけ頼んだらええがな。残してもええで? 俺が全部、綺麗にぅたるから」

 肉のげた伊豫の頬に、初めて柔らかい笑みが浮かぶ。学生時代にも時々見せた、皮肉屋のくせに気弱げな微笑だ。

「高校を卒業して、いつの間にか十七年も経った。特に海外へ出てからは、アメフト仲間とも、どんどん疎遠になった。景気やら出世やらを気にせず、今も連絡をくれるのは、お前一人だ」

 周囲の客が全員振り向くほどの怒声が、ロイの口からほとばしった。

「どないしてん! お前らしくないやん! 皮肉と毒舌で、もっと俺を攻めていや! 負けず嫌いで反骨心だらけの、アホみたいに壮大な夢を語らんかい!」

 伊豫の薄い唇が引きり、わなわなとふるえ始めた。

「なぁ、ロイ。俺は……夢を叶えるには、自分をいため付ければいいと思ってた。睡眠を削って、頭も体も他人の二倍や三倍は動かした。でも、このとしになって、ようやく気付いたんだ。デカい夢を実現する奴はみんな、他人の犠牲をいとわない」

 ロイの左頬のケロイドが、一瞬で真っ赤に沸騰した。

「前回はカネの話で、今回は他人を犠牲にする話かい! ヘソがりで口はわるぅても、お前は中身にど太いしんとおってる奴やとおもてたぞ。それが、どぅやねん! 今や、俺の外見以上に、俺の親父とそっくりのど汚い研究者になってるがな!」

「ロイ、お前なら分かるだろう? 根っこを断ち切って他国で生き延びるには、笑顔のまま、異物を皿ごと何度も何度もくださなきゃならない。異物と混ざって、別の生き物へ変貌を遂げるまで、な」

 伊豫が、今日初めてへらへ手を伸ばした。へら逆手さかてに持ち、鉄板の上で広島焼をがつがつと突き刺し、掻き回す。ソースが黒く焦げ付いた小麦粉や卵の間から、黄色の麺がミミズのように這い出す。

めんかい。せっかくの食いもんが、台無だいなしやろが!」

 伊豫が、手を止めた。唇は、もう震えていない。無表情のまま、逆手さかてに持ったへらを口に近付け、こびりついた濃いソースを舌でべろりとすくう。

「俺は、生まれ変わってやる……きっとお前は、俺を一生許さないだろう」

 痩せた頬の陰翳いんえいがどす黒く、ロイは思わず息を呑んだ。


  二

 日曜日、ロイは、官舎の自室で一週間乾燥し、紫から茶へ変色した「トキモドシ」を採り込んだ。

 小分けにしてジップロックに詰め、冷凍庫で保存する。一袋分は冷凍せず、フード・プロセッサーで細かく破砕した。破砕片をキッチン・スケールで二gずつに測り分け、それぞれラップに包み、冷蔵庫に入れる。

 万願寺流の「いんとう」を構成する生薬と「トキモドシ」二gと、煎じ器「とろ楽々らんらん」をデイパックに入れ、ロイは紫乃の病室を訪れた。

大人おとなしゅう、しとったか?」

 夜の八時過ぎだ。とうに夕食をり終え、紫乃はベッドの上で手持ち無沙汰ぶさたな様子だ。窓際に置かれた大型TVからは、タレントたちが大食い対決をする映像が流れている。

「TVもスマホも自由に観れるし、窓からの眺めはええし、集中治療室ICUに比べたら天国じゃわい」

 弾丸ツアーの疲れが取れたせいか、病室の調光が明るめのせいか、紫乃の血色はすこぶる良い。サイド・テーブルには、ロイが差し入れたお菓子やペットボトルが並んでいる。

 比嘉のはからいで、週末から紫乃にはVIP病棟の一番奥の、最も広い病室をてがわれた。応接セット・浴室・トイレ付きの広い病室の隣に、簡易キッチン・ユニットバス・テーブル・ソファベッド付きの一室がある。

 ロイはデイパックを下ろし、応接セットのソファにどっかりと座った。

「こんな豪華な部屋に泊まるなんて、人生で二度と無いやろな。比嘉に感謝せぇよ」

「命をすくぅてもろぅたんじゃ。とっくに感謝しちょるわい。うちの髪を、そっくり植え替えてあげたいくらいじゃ」

「比嘉はハゲてないねん。寝癖ねぐせを気にせんといつでも飛び起きれるように、スキンヘッドにしてるだけや。あいつ、意外とオシャレやからな」

「そっちじゃったか! 中年マッチョは、ハゲちょるかフサフサかの二択じゃけぇ」

「勝手に決め付けんな。ところで、今日はサプライズや」

中屋なかやくじら羊羹ようかんぅて来たんじゃろ! あんたぁ、さすが約束を忘れん男じゃのぅ」

「アホ。食いもんいねん。お前のオトンからのプレゼントや」

 ロイは、デイパックからラップ包みを取り出した。かすかにむらさきかった茶色の破砕片を、紫乃がいぶかしげに覗き込む。スンスンと匂いをぎ始める。

「なんなら? お母ちゃんが作った健康茶みたぁに、懐かしい香りじゃ。ブルーベリーが枯れ腐ったようなこの色も、どこかで見た記憶があるのぅ」

「お前んちの百味ひゃくみ箪笥だんすに入ってたんやろな。これが『トキモドシ』や。オトンの日誌にならって、先週のうちに岩子いわしじまで採って、乾燥させといてん。今晩、飲んでみる」

「あんたぁ……『トキモドシ』を使つかうんは、諦めたんじゃぁんね?」

「『timeless』や『時騙し』が起こした有害事象の、本質をつかめたんや。伊豫がやった動物実験と、親父が漏らした予備的小規模試験パイロット・スタディの結果は、単なる老化現象では無い。あっという間に進行して不可逆になった、『陰液』の枯渇や」

「被験者たちは、爪も歯も髪も抜けて皮膚が異様に乾燥したっちゅう現象をしちょるんか?」

「せや。『timeless』や『時騙し』は『腎』の『陽気』の炎を激烈にあおることで、若返りのエネルギーを生んでたんや。度が過ぎてるからじきに『陰液』が不足して、完全に干上ひあがった瞬間、不可逆な老化へ転じる。そう考えたら、お前のオトンが書いた研究日誌の内容も、辻褄つじつまが合うねん。お前のオカンは出産後、『トキモドシ』を飲んでいてもだるぅてしんどい時期があった。それでもオトンは、茯苓四逆湯ぶくりょうしぎゃくとうしんとうを処方して無いねん」

「どちらも、十全じゅうぜん大補たいほとう補中益気湯ほちゅうえっきとうよりもはるかに昔から、体力を補う目的で頻用されちょる処方じゃ。漢方のセオリーからすれば、不思議じゃのぅ?」

「『陽気』をあおる生薬、つまり附子ぶし入りの漢方薬を、一切使つこてへん。いんとうみたいに『陰液』を補充する漢方薬ばっかりを『トキモドシ』と併用してるんや。『トキモドシ』のほうが、『timeless』や『時騙し』よりも有害事象が軽かった可能性もある」

 ふむぅ、と納得したように、紫乃がひと息ついた。

「で、今晩、それをうちに飲ませてくれるんじゃの?」

「アホか。岩子島いわしじまに生えとったそこいらの草を、いきなり他人に飲ませられるかいな。まずは俺がちびちび飲んで、明日の朝まで隣の部屋で過ごさせてもらうで。もし俺が苦しみ出したら、救急科へ連絡してや。……さぁて、補陰湯ほいんとうに『トキモドシ』二gを入れて、服用開始やで!」

 ロイは、煎じ器と「補陰湯ほいんとう」のせんやくの包みを、デイパックから取り出した。

 ばんっ!

 お茶のペットボトルが飛んで来て、デイパックに当たった。振り返ると、紫乃が下唇を噛んでわなわなと震えている。

なにすんねん、どアホ! 煎じ器が壊れるやろが!」

「アホは、あんたじゃ! うちが飲む薬は、うちでためさんか! たとえ有害事象が起きても、うちみたぁな障碍しょうがい者なら、他人ひと様に迷惑をけんじゃろ。万が一、あんたにもしものことがあったら、どぎゃぁするんなら? 天才漢方医の治療を待っちょる患者さんたちに、申し訳が立たんわい!」

っとけ。自分で探し出して、作った薬や。毒見は、俺がやる」

「アホ! パワハラ! セクハラ! この変態不良講師が!」

 バシッ。クシャッ。ガサッ。

 紫乃のサイド・テーブルに置いてあった、お菓子やウェット・ティッシュが、次々に飛んで来る。左手で投げている割に、コントロールは正確だ。

「うちに先に毒見をさせんなら、考えがあるわい! あんたに襲われたっちゅうて、病院に訴えちゃる! あんたぁ、一生、性犯罪者のレッテルを貼られるけぇの!」

「無理無理無理無理! 俺ら、公認の恋人同士やで? 訴え出ても、単なる痴話喧嘩やん」

「そぅじゃった! 現実的には仲がわりぃけぇ、設定を忘れてしもぅたわい……ええぃ、このまま話しぅても、どちらもゆずらんじゃろ。二人の主張のあいだを取るっちゅうのは、どぅね?」

「ええがな! それで行こ! で、どうやってあいだを取るねん?」

 紫乃が、つんと鼻先を上げた。

「半分ずつ、二人が同時に飲むんじゃ」

「めっちゃ名案やん……って、ちゃうわ! 二人共ともが飲んで二人共ともに副作用が出たら、最悪やんけ!」

「見事なノリツッコミじゃったのぅ。さすがは大阪人じゃ」

「うっさいわ! お前、宇宙一のアホやろ。そんな世迷よまごとを、よくも堂々とほざけたな! 以前、約束したやん。米国アメリカに行けたら、『トキモドシ』を飲みたいと二度と言わん、て」

「そぎゃぁな約束をするわけがかろぅ! あんたぁ、頭がボケちょるんじゃ。……やっぱり、認知症のあんたと、うちみたぁな障碍しょうがい者が、『トキモドシ』を一緒に飲むんがええのぅ」

 あの手この手で紫乃に懇願されると、ロイの強気は萎える。

 ――二人で同時に飲むんも、わるぅないか……。少しずつなら、な……。

 二人で分ければ、紫乃の両親が服用していた量の半分だ。日誌を熟読し、写真と見比べ、間違い無く「トキモドシ」を収穫した自信もある。

「薬を発明したんは、お前のオトンや。好きにせい」

 病室の洗面台に立ち、ロイはガラスのポットに四百㏄の水を入れ始めた。更に、一日分の「補陰湯ほいんとう」の生薬と「トキモドシ」二gを投入し、煎じ器のタイマーを三十分にセットする。

 ビーッ、ビーッ、ビーッ。

 不意に、TVから電子音が飛び出した。ニュース速報のテロップが、画面を走る。

「夢の若返り薬『timeless』、急激な老化のため臨床試験中止」

 はっ、とロイは、紫乃と顔を見合わせた。

「バレたんや!」

「アクセルは大丈夫かのぅ?」

「親父のつらかわあつさは、医学辞書並みや。新たな研究成果を公表してけむに巻くなり、なんとか言いのがれるやろ。株価が多少下がるんは、しゃあい」

「アクセルの幸運を祈って、うちはこれで薬を飲もぅかのぅ」

 紫乃が、サイド・テーブルを指差した。ニューイングランド・ペイトリオッツのヘルメットをかたどったマグカップだ。銀色のボディに、独立戦争を戦った兵士「フライング・エルビス」が光る。

「さっき、それは投げへんかったな。お前の命をねろたんは、親父かも知れんのに」

「アクセルじゃぁよ。あんたが思ぅちょるほど、つらかわあつぁわい。乙女のカンじゃ」

 シュワーッという音と共にポットの液体が沸騰し、煎じ器のタイマーが三十分のカウントダウンを始めた。

「お前、ホンマに覚悟はできとるか? TVで大々的に『急激な老化のため中止!』って報道されたのと従姉妹いとこみたいな劇薬を、これから自分で飲むんやで?」

従姉妹いとこくらい離れとりゃぁ、十分じゃ。母親は外見も性格もド派手じゃのに、娘は地味ィで引っ込み思案っちゅう親子もるけぇ。……もしかしたら明日あたり、二人とも玉手箱たまてばこを開けた浦島太郎みたぁにけちょるかのぅ?」

 紫乃が、屈託無く笑う。薬を飲むのをおそれるどころか、未知の体験を楽しんでいるかのようだ。

「老ける前に、若返るはずやろが。……いずれ老けて死ぬんなら、その前にりゅう宮城ぐうじょうへ行って乙姫おとひめさまに接待されたいわ」

「あんたの乙姫様は、目の前にるじゃろぅが」

 紫乃がパッチリと目を見開き、しなを作る。黒く大きな瞳、品良く通った鼻、パジャマの内側から盛り上がる胸のふくらみ。素材は、特級品だ。

「口も性格も悪い乙姫は、童話のオーディションに不合格や」

「なんじゃとぉ! あんたは人間として落第じゃ!」

 紫乃が、サイド・テーブルに手を伸ばし掛けて、めた。ロイの前では煎じ器が、シューッという沸騰音と共に独特の薬草臭を立ち昇らせている。

「煎じ上がったで。実は、俺も持って来てるねん」

 デイパックから、ロイもニューイングランド・ペイトリオッツのマグを取り出した。紫乃のマグとテーブルに二つ並べ、コポコポとそそぎ分ける。

「ほれ、乾杯じゃ!」

 紫乃へ渡すと、待ちきれないように勢い良くマグをぶつけて来た。

「最後の乾杯になるかも知れん。……ホンマに、ええんやな?」

 二つの「フライング・エルビス」がガツンと合わさり、離れる。

 紫乃がマグに口を付け、いきなりズオォォーッとせんやくすすり上げた。

「おい、待て! ちょっとずつ飲めや!」

 マグを唇から離し、ほぅっと紫乃が息を吐く。うっとりとした表情だ。

「ルイボス・ティーっちゅうか、ハイビスカス・ティーっちゅうか。ハーブがかぐわしゅうて、気分が落ち着くわい。酸味の後、舌にほんのり甘みも残って……くせになる味じゃ」

 またひと口、ゴクンと大きく飲み込む。

「アカンて! 二時間は掛けて飲まんかい!」

 慌ててロイは紫乃のマグを取り上げた。中身は、ほとんど残っていない。

「あんたぁ……飲まんのか?」

「俺、猫舌ねこじたやねん……」

 沸騰直後の液体を飲むなど、ロイには無理だ。マグには、まだ口すら付けていない。

 紫乃が、とろんとした目を向ける。

「嘘じゃ。マグに入れた時点で、かなりめちょるわい。……あんたぁ、ビビったんじゃろ?」

「んなわけいわ! ラーメンだって、はしめんを引き上げて、何度もフーフーしてからでないと、俺は食べれへんねん! ……水を入れて、まして来るわ」

 マグを洗面所へ持って行き、乱暴に蛇口をひねった。

 ヒッヒッヒッ、と背後から紫乃が嘲笑あざわらう。

「男なら、一気に飲まんか。薄めて飲まにゃぁ怖いんか」

「お前、思考回路がオバチャンやねん! 『男なら』っちゅうステレオタイプな考えも、一気飲みの強要も、昭和世代の悪習や! よぅ見とれ!」

 ロイは、マグをひと口であおった。紫乃が表現した通りのハーブ香が、喉から鼻へ突き抜ける。ほんのり、甘酸あまずっぱい。

 ふと気付くと、紫乃の反撃が途絶えている。

「うちゃぁ、のぅ……ねみぃわい」

 振り返ると、紫乃の目が半開きだ。ベッドに起こした上半身が、ゆらり、ゆらりと左右に揺れる。

「危ないやん! 大丈夫か!」

 ロイは慌てて駆け寄り、紫乃の体を支えた。がっくりと力尽きたように、紫乃がロイの腕に体重を預ける。

「もう、気が、ぉなっちょる……あんたは、薬を飲まんほうが……」

 紫乃の目が、完全に閉じた。

「おい! しっかりせい!」

 ――アカン! 救急科へ連絡や!

 院内PHSは、白衣のポケットに入れて隣の部屋へ置いてきた。

 ロイの腹が、ほんわりと暖かくなってきた。以前、紫乃に飲ませた壮原湯とは異なる、体の温まり方だ。同時に、全身をとろかす生温かい眠気と、強烈な倦怠感がロイを襲う。

 一歩踏み出すと、大男二人をかついだように、ずしりとふとももが重い。どんなにり上げても、まぶたが垂れて視界を塞ぐ。

 運命の神へ、ロイはニヤリと笑いけた。

 ――俺をめんなよ。どんだけ体力自慢やとおもてるねん!

 かつてクリスマス・ボウルを三連覇した、伝説のQB《クォーター・バック》だ。

 もう一歩、踏み出す。目の前の景色が、斜め四十五度へ傾く。膝が、がくりとくずおれた。つんいになって、なお前へ進む。前へ、前へ。

 目の前に、ソファがそびえ立つ。至高の快感にも似た眠気と倦怠感が、体の隅々すみずみまでみ、感覚を麻痺させてゆく。無我夢中で、ソファによじ登る。全身の細胞が、ソファの柔らかい弾力に沈む。

 呆気あっけ無く、力尽きた。

 ――ごめんな、紫乃ちゃん。最後の大勝負は、大失敗してしもた。俺は、どこで間違えたんやろ……。

 まぶたが閉じる前に、意識を失った。


  三

 ふっ、とロイは目を覚ました。

 ――ここは、どこや? 今日は、何曜日やねん? 

 深い睡眠をむさぼり尽くした朝のように、場所と曜日の感覚を失っている。ぼんやりして、思考が動かない。

 体を起こすと、ギイッとソファがきしむ。カーテンの隙間から、朝の光が漏れている。窓際に大型TVがある。ここはVIP病室だ。ベッドで寝ているのは、紫乃か。

 さっきから、爆発しそうに股間がふくれ上がっている。男の、朝の生理現象だ。むずむず、もぞもぞ、ファスナーがぷたつにはじけ飛びそうな勢いだ。

 下半身へ意識が向くと、突然、尿意が強くなった。慌てて立ち上がり、病室内のトイレへ駆け込む。パンツを下ろすのも、もどかしい。モノが異様に怒張しているせいで、尿道がせばまっている。早く尿を出そうと、思い切りりきむ。

 尿道口がジリジリとけるほど熱く沸騰した尿が、勢い良くほとばしった。体の奥の沈殿物ちんでんぶつが根底から搔き出されるような、とめどない排泄だ。

 ――なんやねん! この感覚は!

 長い長い時間を掛けて、超大量の尿を放出し終えた。同時に、足先から頭のてっぺんまで、スーッと体が軽くなる。

 トイレを出た。カーテンを閉めたままで薄暗うすぐらかった室内が、濃いサングラスを外したように明るく見える。網膜の感覚が、鋭い。雑多な物が、一気に視界へ飛び込む。床に散らばった駄菓子の袋やウェット・ティッシュ、テーブルの上に煎じ器とマグ。

 呼吸をすると、鼻腔へ吸い込んだ空気が様々な匂いへ分解され、ツンと鼻粘膜を刺激する。せんやくの生薬臭と、女性らしい石鹸の香り。

 視覚も嗅覚も、わたっている。

 腹が、異様に減っている。血と肉汁のしたた分厚ぶあついステーキを、がつがつと食べたい。

 手足の先まで活力に満ち、全身の筋肉がひと回り大きく発達したようだ。

 ベッドで、むくっ、と紫乃が起き上がった。

「手! 手を貸してくれぃ! トイレに間に合わん! はよぅ、はよぅ!」

 車椅子へ移乗して、隣室のトイレへ連れて行く余裕はさそうだ。ロイが抱き上げてやるしかない。

「俺が使つこたばかりの、そこのトイレでええか? ウンコは、してへんで」

「しょうがぁわい!」

 駆け寄ったロイへ、紫乃が両手を差し伸べた。

「お前、手が……」

はよぅ、連れて行け!」

 泣き出しそうな紫乃を、左側から抱き上げる。紫乃が、両腕を膝の上に置いた。右腕は、垂れ下がらない。

 紫乃を便座に座らせ、ロイはトイレを出てソファで待つ。

 数分後、紫乃がトイレから出て来た。ポカンとした表情で、たたずんでいる。

「どないしてん。人生最大のウンコでも出たんか?」

 不思議そうに、紫乃が左右の手を見比べる。

「麻痺しちょったんは、どっちの手じゃったかのぅ?」

「足も、つえ無しで立ててるやん。ここまで歩いてみぃや」

 紫乃が、両手を広げてバランスを取り、恐る恐る、右足を前へ出した。白いパイル地のパジャマがふわふわとたこのように、紫乃の肉体にまとわる。胸から腰の柔らかい、女の曲線が、網膜にけ付く。ロイは、視線を微妙にらした。左足から右足へ、紫乃が体重を徐々に移動する。ややぎこちないが、介助無しで歩けている。

「右足だけ、マラソン大会の翌日みたぁにだるぅて、強張こわばっちょるが……歩けるのぅ。うちは、夢でも見ちょるんか?」

 目をぱちくりさせながら、紫乃がソファに到着した。ロイのすぐ前に座ると、パジャマの合わせ目から、胸の白い膨らみが覗く。女性特有の石鹸の香りが、強烈に鼻をく。超過敏になったロイの視覚と嗅覚には、突き刺すように刺激的だ。さっき尿を出し終わった股間が、再びそうにふくれ上がる。男の衝動が牙をき、脳天まで真っ白になりそうだ。

 荒くなる息と鼓動を何とか抑え、ロイは努めて冷静に答えた。

「実は俺も、体調が良過よすぎるくらいや。……むしろ昨日まで、疲れや老化現象に気付いて無かっただけかも知らん。としって、いつの間にか取ってるもんやな? 今朝は足腰がかるぅて、元気でしゃあ無い。大阪まで、走って往復できそぅや」

 二人の視線が、テーブルの上のニューイングランド・ペイトリオッツのマグへ向く。

「まさか、ひと晩でこぎゃぁに効果が現れるとはのぅ。半分に分けた量じゃに」

「飲む人間が若ければ、量がすくのぅても効くんかもな。有害事象も怖いし、今日からは更に半分へ減らして飲もぅや。……せや! 親父は、どうなったんや?」

 紫乃のサイド・テーブルからリモコンを取り、ロイはTVをけた。VIP病棟と官舎では、一部の有料放送を視聴できる。チャンネルはCNNを選ぶ。今、日本は月曜の朝六時。米国アメリカ東部は、日曜の夕方五時だ。

「Breaking news! 『夢の薬』は『悪夢の薬』へ。アスタリスク製薬、半年前から組織ぐるみで有害事象を隠蔽いんぺい

 テロップが流れ、白いスーツ姿のラテン系女性キャスターが早口の英語でまくし立てている。

「若返りの数か月後、悪夢のような老化が被験者たちを襲いました。外見が数十年も老け、髪や歯の脱落・白内障・筋肉の萎縮をきたしました。糖尿病・高血圧・高脂血症・骨粗鬆こつそしょう症の他、一部の被験者は不可逆な認知症や前立腺癌を発症しました。なお、被験者が集団訴訟を準備中のため、アスタリスクはコメントを避けています」

 ロイは、うめいた。

「情報がダダ洩れやんけ!」

「CNNが独自に入手した映像を公開します。アスタリスクは、『timeless』が引き起こす異常な老化を動物実験でも確認しながら、情報を隠蔽いんぺいし続けていました」

 画面が変わった。ケージに敷かれたおがくずの上で、一匹の白いマウスがうごめいている。体毛が抜け落ちて赤い地肌じはだがまだらに浮き、体は痩せ細り、歩くというよりっている。赤いはずの眼球は白濁はくだくし、見えていないのかうつろにうごめいている。

 マウスの鼻先へ、固形飼料しりょうがピンセットで差し出された。げっ歯類しるい特有の長い二本の前歯で、く。かじり取れない。もう一度、りきむ。歯が、歯茎はぐきからぐにゃりと折れた。異様にばんで萎縮した歯だ。

 画面へ、ロイは咆哮ほうこうした。

「伊豫が出した実験結果や! ……終わりや。アスタリスクは、つぶれるで」

 悪意剥き出しの映像だ。CNNが、あまねく世界へ発信しているのだ。医薬業界のみならず動物愛護団体も、いや世界中のあらゆる人々が敵となり、アスタリスクを糾弾するだろう。株価暴落どころでは無い。アスタリスクが関与する全ての事業も資金しきんりも、瞬時にまる。

 女性キャスターの口は、非情な連射を止めない。

「なお、このマウスの脳細胞では、タウ蛋白の異常集積が観察されています。認知症に特徴的な所見です」

「これも伊豫の実験データやんけ! ……強烈なダメ押しやな。〝timeless=《イコール》老化〟、〝アスタリスク=《イコール》有害事象隠蔽いんぺい〟と、全世界の人の頭にり込まれてしもた」

 どう足掻あがいても、アスタリスクは再起不能だろう。

 また画面が変わった。古い八階建てのビル。アスタリスク本社だ。黒っぽいスーツに濃いサングラス姿の男が、駐車場からエントランスへ向かう。報道陣が殺到する。

「親父や!」

 アメフトで鍛えた巨躯きょくで、マイクを手にむらがる人々を押し退けている。

「No! Nope!」

 ただ繰り返し、アクセルが足早にエントランスへ消えた。

 ニュースが、終わった。

 ロイは、TVを消してことさらに明るく言い放つ。

ぐ前を向くふてぶてしさは、親父らしいやん」

「伊豫さんは、データを盗まれたんかのぅ?」

 ショックを受けたのか、紫乃の目が赤く潤んでいる。

「分からん。盗まれたんか、盗ませたんか……あるいは、自分から売ったんか」

「そぎゃぁにきちゃなぁ真似をする研究者なんか、らんじゃろ!」

 紫乃の白いパイル地のパジャマから、熱気が立ち昇る。

「親父とぅて、お前も少しは分かったやろ。研究者って、そら恐ろしいアイデアを思い付いて、形振なりふり構わず実行するんや。……俺、家に帰って、シャワーを浴びて来るわ。今日も一日、大人おとなしゅうしとれよ」

 週が、明けた。

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