最終話 業からの解放と業人の死
母の日が近い授業参観日、蓮は作文をクラスの皆に発表していた
「お母さんはいつも優しくてすごい人です。悪い人にも優しくしてあげなさいってよくいわれました。昔いたお父さんは悪い人でした。それなのにあの人を恨まずに接していました。僕はお母さんのような優しくて強い人になりたいです!」
クラス中に拍手が響いた。
(そういえば初めて蓮の授業参観出れたな。前は仕事ばっかりだったから)
教室の後方部には望千夜がそんなことをかんがえながらハンカチで目を抑え拍手していた。
「レナちゃん、また明日!」
「うん、蓮くんもまた明日ね!」
レナは幸いトラウマも残らず元気に学校に通っているようだ。
「蓮くんのお母さん、生活の方はどうですか?」
「おかげさまでいろんな人に助けてもらってなんとかなってます。田中先生本当にありがとうございます。あの時声かけてもらえなければどうなっていたか…」
「いえいえ、児童のことをみるのが教師の仕事ですから!」
「お母さんなにしてるのー?帰ろうよー!」
「今いくー!じゃあ私はこの辺で」
望千夜は田中に一礼し蓮と共に帰宅した。田中はその背中が見えなくなるまでてをふっていた。
「お母さん今日は休みなんだよねー?」
「そうよ、休み増えたの」
「ならね、お母さんと晩ごはん食べたい!」
「あら、子ども食堂いかなくていいの?」
「たしかにかいとくんとも会いたいけどー、今はお母さん!」
「ふふ、ありがと。じゃあ今日は蓮の好きなものつくってあげる」
「じゃあコロッケ!」
母子の温かい会話が夕日に照らされていた
悠平は満期出所後施設を転々とした。無料低額宿泊所に入所し生活保護を受けようともしたが集団生活になじめず自分から逃げた。
しばらくはネカフェなどに泊まっていたがわずかな作業報奨金はすぐ溶けていった。
「オラは…なにも悪くないのに…」
空腹と疲労で頭が回らなくなっても考えることは逆恨みと他責であった
「みじお」
意味不明な言葉を残し河川敷の橋下で悠平は息を引き取った。
2日後、そこを寝床にしていたホームレスが彼の遺体を見つけた。財布を漁ろうとしていたが小銭が数枚となぐり書きのメモだけしか入っていなかった
ホームレスはその小銭を使い公衆電話から警察に通報、遺体は無縁仏となった。
ホームレスが投げ捨てたメモ書きには判別不能の文字が書かれており、「必ずアンチを見返す_」という文だけが読み取れた
薄幸母と業人の息子 山岡裕曲 @beachcape
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