私と猫と本と
Latt
私と猫と本と
私は小説を書く。いつも駄作しかできていない。世に出すこともしばらくしてない。
いつも通りそんなことを考えながら街をぶらつく。いつも少しずつ違う街並みに注視して、頭のリソースを割く。
今日は川沿いに段ボールがあった。
誰かが何かを捨てたんだろう。そう思って覗いてみる。
中には捨てられた猫と、なぜか古そうな本。
無性に苦しくなって拾ってしまった。
それから私は奇妙な出来事に直面したのだ。
最初は猫が喋った。
「この続きを書きなさい。あなたが迷い諦めている限り、私も次のページに進めないのです。」
次に本がばんっと開きページが自動的にめくられていく。
そこには、ほんの数分前の私の行動が活字になって並んでいた。
「川沿いで段ボールを覗いた」と。
そして行の下に、まだ起こっていない未来が書かれている。
私はページを閉じた。
これは小説ではなく、私そのものなのだ。
──いや、こう書いている瞬間に、あなたが読んでいる「これ」こそ小説だ。
私と猫と本と、そして読者のあなた。
境界は紙の薄さほどしかない。
これまでに自分の作り出してきたものには生命力が、強さがないと気づいたのだ。
だから猫の言うとおりに私は続きを書く。
「なんだ。夢じゃないか。」と。
私と猫と本と Latt @Blatt
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