麻薬ディーラー | 三題噺Vol.15
冴月練
麻薬ディーラー
📘 三題噺のお題(第15弾)
止まった時計
地下水路
白い手紙
💡 解釈ヒント(自由に無視OK)
止まった時計
→ 特定の時刻で止まった理由、壊れたまま大事にされている時計、あるいは比喩的に「時間が止まった瞬間」。
地下水路
→ 古代遺跡、都市伝説、脱出経路、密輸ルートなど。暗く湿った環境の描写が雰囲気作りに使いやすい。
白い手紙
→ 白紙の手紙、真っ白な封筒、何も書かれていないのに意味がある…という解釈も。純粋さ、秘密、挑発など象徴的にも使える。
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【本文】
オレの名前は
今日の仕事は相棒の
オレたちはマンホールをくぐり、この地下水路に到着した。地下水路と言っても水量は少なく、思ったほど嫌な臭いはしない。
警察もこの件は嗅ぎつけているようだから、手早く取引を終えて引き上げるとしよう。
「で、盗作。受け渡し時刻と場所は、いつ、どこなの? 私、聞いてないんだけど」
藤子が冷ややかな視線をオレに向けてくる。藤子は感情と表情がズレている。それはきっと、彼女の過酷な生い立ちに原因があるのだろう。詳しくは聞いていない。女の過去を深く詮索するような男は器が小さい。オレはそんな男ではない。
今も事情を知らない奴が見たら、藤子がオレを冷たい目で見ているように見えるだろうが、実際はオレに深い信頼を寄せている。
「ああ、それはこれに書いてある」
オレは小さな封筒を取り出し、藤子に見せた。
「警察にバレないために、この場所に来てから確認する手はずになっているんだ」
「へぇ」
藤子はつまらなそうな表情をしているが、内心は用心深いオレを称賛している。オレにはわかる。
オレは封筒から手紙を出した。藤子も近づいてきて、覗き込んだ。
「何も書いてないんだけど?」
藤子はジト目でオレを見る。だが、本心は不安を感じ、オレの答えを待っている。オレは彼女を安心させるために答えた。
「心配するな。これはレモンの果汁で書かれている。つまり、炙り出しだ!」
オレは自信たっぷりに藤子に告げた。これで彼女も安心するだろう。
藤子は顔を背けると、ため息をついた。たぶん、驚きで感極まっている表情をオレに見られたくないのだろう。意外とシャイなところがある。
「まあいいわ。早いところ炙り出してよ」
藤子のリクエストに、オレは応えようと思った。
「……オレ、タバコ吸わないから、ライターもマッチも持ってないや。藤子は?」
「私も吸わないわよ」
それだけ言うと、藤子は眉間に手を当てている。何かをこらえているようだ。たぶん、こんなピンチくらい、オレならどうにかしてくれると信頼しているのだろう。
炙り出しに関しては、藤子が持っていた電熱線とモバイルバッテリーでどうにかしてくれた。
「よし! これで取引場所と時間がわかった」
藤子は氷みたいな目でオレを見ている。たぶん、取引が近づいて緊張して、オレにすがっているのだろう。
オレは腕時計を見た。
「あー! 時計が止まってる。そう言えば、昨日ねじ巻くの忘れてた」
藤子は下を向いて震えている。両手を握りしめている。たぶんこの時代に、あえてアンティークな機械式時計を使っているオレのセンスに感動しているのだろう。
「スマホで時間はわかるわ。とにかく行きましょう」
藤子は、一見怒りに燃えているような目でオレを見ている。たぶん、彼女も警察を気にして、手早く取引を終えたいと思っているのだろう。要するに、不安なのだとオレは思った。
「あれ? この取引時間まで、ずいぶん時間があるぞ。何でだ?」
「盗作。時間はどちらの国の標準時刻を基準にしたの?」
「え? そりゃ、ここは日本なんだから日本だろ? あー! あいつら、間違って自分の国の時間で書きやがったのか」
藤子が歩いていく音が聞こえたような気がした。
「あ! スマホがあるから、時差を調べて計算できるぞ。さすが、オレ! あれ? 地下だから電波が……」
バタンと上から音が聞こえた。
見回すと藤子がいない。
マンホールに戻ると、鍵がかかっていた。
藤子がオレを置いていくわけがない。つまり、彼女に何かあったんだ!
オレは、藤子を助けるために地下水路を走り出した。
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【感想】
3つのお題を合わせたら、こんな話しか思いつきませんでした。
最後、走り出して終わるのが前回と同じだと思ったのですが、他の表現が思いつかなかったので、これで良しとします。
会話のテンポとかは、まだまだ改善の余地があると思います。
麻薬ディーラー | 三題噺Vol.15 冴月練 @satsuki_ren
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