第5話 完璧超人の生徒会長もラブコメが好きだった件②
~数日前~
☆☆☆
今日は『天使様はラブコメ好き(通称・天ラブ)』のヒロイン―――天川真白(通称・ましろん)のフィギュアがゲーセンのUFOキャッチャーに入荷する日だった。
「晴翔! ましろんのフィギュア絶対に取るよ!」
「当り前だ。そのために軍資金はたんまりと用意してきたからな。取れるまでやるつもりだ」
「私も軍資金たくさんあるから取るまでやるつもり! ちなみに晴翔はUFOキャッチャー得意?」
「得意ってほどではないな。水樹は?」
「私も似たようなものかなぁ~。ゲーセンには行くけど、あんまりUFOキャッチャーはやらないかな。それこそ欲しいキャラのフィギュアを取る時しかやらないかも~」
俺と水樹は学校を休んでゲーセンに来ていた。
推しのフィギュアを取るためなら学校をズル休みすることを俺は厭わない。
それにましろんの人気は凄まじいだろうから朝から来ないと、学校が終わって放課後に来たら無くなっている可能性すらある。
だから、俺と水樹は開店と同時にゲーセンにやって来ていた。
ゲーセンの中に入り、俺たちはUFOキャッチャーコーナーに向かった。
「ましろんどこだろう~?」
UFOキャッチャーコーナーを歩きながら、ましろんのフィギュアが置いてある台を探した。
「あ、あった!」
水樹がましろんのフィギュアが置いてあるUFOキャッチャーの台を見つけ駆け寄って行った。
俺もその後に続いた。
「ねぇねぇ晴翔。ちょうど二台あるからさ、どっちが先に取るか勝負しない?」
「勝負?」
「そう! 勝負! 先にましろんのフィギュアを取った方が勝ち!」
「勝負をするのはいいけど、負けたら?」
「ん~。この後ゲーセンで遊ぶ?」
「水樹に合わせるよ。どうする?」
「ちょっとだけ遊んで帰ろ。てことで、負けたらゲーセン代奢りとかでどう?」
「おけ」
「じゃあ、決まりだね!」
「ちなみにルールは? 先に取った方が勝ちにするのか、使った金額が少ない方が勝ちにするのか」
「使った金額が少ない方が勝ちにしよ!」
「おけ」
「絶対に負けないから!」
同時にUFOキャッチャーに百円玉を二枚投入した(ワンプレイ二百円だった)。
そして、二人同時にUFOキャッチャーのプレイを始めた。
俺たちがプレイしているのは二本の突っ張り棒の上にフィギュアが置かれている形式のUFOキャッチャーだった。
UFOキャッチャーをよくやるわけではないから、取り方なんてものは分からない。
それは水樹も同じようで試行錯誤を繰り返していた。
「ムズすぎない!? 全然取れないんだけど!」
「結構ムズイな」
お互いにすでに十回プレイしたが全く取れる気配がなかった。
「一回さ、お店の人に直してもらって、攻略動画見ない?」
「アリだな」
「じゃあ、私、お店の人呼んでくるね」
水樹が店員を呼びに向かった。
その間に俺はUFOキャッチャーの攻略動画を検索しておくことにした。
「あの、すみません。この台って空いてますか?」
「えっ……」
声をかけられ、振り返ると、予想だにしていない人物がいた。
(なんでこの人がここに……)
その人物とは俺たちが通っている高校の生徒会長だ。
完璧超人の生徒会長。
そう呼ばれる彼女の名前は広瀬琴美先輩。
俺が言えたことではないが、今日は学校のはずで、この人がゲーセンにいることが信じられなかった。
「あ~すみません。今、連れがお店の人を呼びに行ってて」
「あ、そうなんですね。お邪魔してすみませんでした」
「いえ、あの広瀬先輩も天ラブ好きなんですか?」
「えっ、ちょっと待ってください。もしかして、叡智学園の生徒ですか?」
思わず、俺が広瀬先輩のことを知っていることを暴露してしまったが、よく考えたら、俺は広瀬先輩と面識がないわけで(生徒会長なので一方的に知っているだけ)、学校をサボってゲーセンに来ているなんてこと知られてしまったら、何を言われるか。
「えっと、実はそうです」
「……そ、そうですか」
俺が同じ学校に通っていると分かった途端、広瀬先輩の顔が暗くなったような気がした。
「晴翔~! お店の人呼んできたよ~!」
水樹が店員と一緒に戻ってきた。
「えっ!? 何で広瀬先輩がいるの!?」
店員と一緒に戻ってきた水樹は広瀬先輩のことを見てビックリしていた。
水樹は広瀬先輩と面識があるみたいだった。
広瀬先輩に近寄った水樹はそのまま広瀬先輩に抱き着いていた。
「紗羅ちゃんこそ何でここにいるの?」
「これを取りに来たんです!」
水樹はましろんのフィギュアを指差して言った。
「え、紗羅ちゃんもましろんのフィギュアを取りに来たの?」
「も、ってことは、もしかして広瀬先輩もですか!?」
「え、えぇ……」
「マジですか!? もしかして広瀬先輩も天ラブ好きなんですか!?」
水樹は俺の時と同じように同士を見つけた時のようなキラキラとした目で満面の笑みを浮かべて、広瀬先輩のことを見つめていた。
広瀬先輩は水樹の圧に押されながら、コクっと小さく頷いた。
「初知りなんですけど!? もぉ~言ってくださいよ~! そうだったんですか~!」
水樹の圧に圧倒されている広瀬先輩のことを見て俺は既視感を感じた。
俺も傍から見たら広瀬先輩みたいになっていたことだろう。
「水樹。ちょっと落ち着け。広瀬先輩も店員さんも困惑してるから」
水樹と広瀬先輩のやりとりを見ていた店員は苦笑いを浮かべていた。
「すみません。これの位置を直してもらえませんか?」
「か、かしこまりました」
とりあえず、店員を解放してあげようと俺は二台とも位置を初期位置に戻してもらった。
「こちらでよろしいですか?」
「はい。ありがとうございます」
「ごゆっくりどうぞ~」
店員さんは立ち去るまでずっと苦笑いを浮かべていた。
「初期位置に戻してもらったけど、どうする?」
「そりゃあ、もちろんやるに決まってんじゃん! あ、広瀬先輩もましろんのフィギュアを取りに来たんですよね。それなら、こっちの台譲ります!」
「え、いいの?」
「はい! ちなみに広瀬先輩ってUFOキャッチャー得意ですか?」
「紗羅ちゃん。私を誰だと思てるんですか?」
そう言って広瀬先輩はニヤリと笑った。
「そうでした! 広瀬先輩は完璧超人でしたね!」
「そうですよ。私に苦手なことなってありません」
「さすがです! 私たち苦戦してて、もしよかったら取り方を教えてくれませんか?」
「もちろんいいですよ!」
「やったー! ありがとうございます!」
「それじゃあ、こっちの台を使わせてもらいますね」
「どうぞ!」
広瀬先輩が、さっきまで水樹がやっていた方の台でUFOキャッチャーをプレイし始めた。
完璧超人という二つ名は伊達じゃないらしく、広瀬先輩は三プレイでましろんのフィギュアを取った。
「えっ、ヤバっ! 私たちは十回プレイしても取れなかったのに広瀬先輩三回で取っちゃうとかヤバすぎますよ!」
「ふふ、ありがとう」
「手ほどきのほどお願いします! 広瀬先輩!」
「任せて」
「よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします」
俺と水樹は広瀬先輩から、UFOキャッチャーの手ほどきを受けることになった。
☆☆☆
SSS級美人たちとフレンドになった件(仮) 夜空 星龍 @kugaryuu
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