第4話 完璧超人の生徒会長もラブコメが好きだった件①
「はぁ〜眠すぎ」
「また夜更かしでもしたのか?」
「読み始めたら止まらなくなっちゃって、晴翔に教えてもらった罰デー面白すぎるでしょ!」
「何巻まで読んだんだ?」
「今出てる最新巻まで全部!」
水樹に教えた『罰ゲームで先輩ギャルにデートを申し込んだらイチャラブな日常が待っていた件(通称罰デー)』は現在三巻まで発売している。
俺は罰デーを一巻を読み終えるのに一時間半くらいかかった。
水樹も読むスピードは俺と同じくらいだから、三巻全て読んだとなると四時間半くらいはかかるはずだ。
「何時から読み始めたんだ?」
「昨日はバイトだったから、バイトから帰って、お風呂に入って、他にも色々とやってたら十二時超えてて、本当は一巻だけ読むつもりだったけど、気がついたら三時を超えてたよね〜」
「そりゃあ、寝不足になるわな」
「睡眠時間確保するくらいだったら、ラブコメ読む方に時間使うって決めてるからいいんだけどね! それに授業中に寝るつもりだから問題なし!」
「いや、それは問題あるだろ。来週テストあるんだぞ? 大丈夫か?」
「ぜ、全然余裕だし!」
ダメそうだなと、俺から視線を逸らした水樹のことを見て思った。
「そ、そう言う晴翔はどうなのよ!?」
「俺か? まぁ、今回も学年十位以内には入れるだろうな」
「マジ!? 晴翔ってそんなに頭良かったの!?」
「まぁな」
伊達に灰色の高校生活を送っているわけではない。
友達と放課後に遊んだりしない代わりに俺は家に帰った後、ラブコメ小説を読むか、勉強をするか、基本的にはそのどちらかをしていた。
だから、入学してこのかた二十位以下になったことは一度もなかった。
「お願い! 何でもするから勉強教えて! エッチなことでもいいから!」
「そこは普通エッチなこと以外で、て言うとこじゃないか?」
「ラブコメなら普通そうかもね。でも、私と晴翔の仲じゃん? 今更、エッチなこと以外で満足できる?」
「別にそんなことは・・・・・・」
ないとは言い切れなかった。
あの日を境に俺と水樹の関係性は一変した。
俺と水樹の関係性を例えるなら何といえばいいのだろうか。
健全な言い方をするならラブコメフレンドで、ちょっとエッチな言い方をするならセッ○スフレンドだ。
あの日以来、俺たちは放課後や休日にお互いの家に行き来するようになった。
今日も放課後に水樹が俺の家に来る予定だった。
「素直になっていた方がいいと思うけどなぁ~。素直にならないと、もう私とエッチなことできなくなるかもよ?」
「それは嫌です。ごめんなさい。水樹さんとエッチなことしたいです」
俺がそう言って頭を下げると水樹はゲラゲラと腹を抱えて爆笑した。
「素直でいいじゃん! ね、だからお願い! エッチなことしてもいいから私に勉強教えて! 今回、赤点を取ったら夏休み補習確定なの!」
「それは困るな。分かった教える。水樹と一緒に夏休みを過ごせなくなるのは嫌だからな」
「マジでありがとう!」
「じゃあ、早速今日から勉強するか」
「え~今日は感想会やるって話じゃん!」
「どっちもやればいいだろ。どうせ今日は俺の家に泊まるだろ?」
「泊まるけど! 勉強はしたくない!」
わがままな子供のように水樹は頬を膨らませて言った。
「一週間勉強を頑張って夏休み楽しく過ごすのと、勉強頑張らずに一カ月補習するのどっちがいいんだ?」
「それは絶対に夏休み楽しく過ごす方に決まってんじゃん!」
「だったら頑張れ。ちゃんと教えるから」
「じゃあさ、もし私が赤点回避したら何かご褒美ちょうだいよ!」
「分かった」
「やった! それなら頑張れる!」
今度は子供のように満面の笑みを浮かべて喜んだ水樹。
水樹は俺の腕に勢いよく抱き着いてきた。
☆☆☆
「じゃあ、また放課後にな」
「放課後か~。私としては学校でも晴翔とイチャイチャしたり、話したりしたいんだけどな~」
「それはさすがにまだハードルが高いな」
俺と水樹の関係を誰かに見られたりして、噂でもなったりしたら、学校でも話してもいいかと思っているが、それまでは平穏な学校生活を送りたいと思っていた。
水樹と仲良くしているなんて男子たちに知られたら、絶対に面倒な事になる。
「目立ちたくないんだっけ?」
「そうだな」
「同じクラスなのに話せないとか悲し過ぎるでしょ!」
「そう言われてもな」
「まぁ、今は晴翔の言う通りにしておいてあげる。今は、ね!」
俺にそう言い残して水樹は先に学校へと向かって行った。
あの日以来、俺は水樹と一緒に登校するようになった。
一緒に登校するといっても途中までだけど、
さっきの話じゃないけど、俺は学校ではあまり目立ちたくはなかった。
水樹と一緒に学校まで登校なんてした日には確実に目立ってしまう。
だから、俺のわがままで学校から少し離れたコンビニまでということにしてもらった。
ここがそのコンビニで、ここまでは一緒に登校して、ここからは別々に登校するようにしてもらっていた。
「てか、さっきの、水樹のやつ絶対に何か企んでるだろ」
そう思いながら俺も学校に向かって歩き始めた。
☆☆☆
校門の前に到着すると生徒会の生徒たちが、今日も朝の挨拶運動をしていた。
今週は朝の挨拶運動習慣で、生徒会の生徒が校門の前に並んでいる。
その中で一際目立っているのは生徒会長の広瀬琴美先輩だ。
文武両道。容姿端麗。おまけに超お金持ち。
完璧超人の生徒会長。
広瀬先輩は生徒たちの間でそう呼ばれていた。
「おはようございます。今日も一日頑張りましょう」
広瀬先輩は青空に負けないくらい清々しい笑顔で、通りすがる生徒たちに元気な挨拶をしていた。
広瀬先輩に朝からそんなことを言われたら頑張れるに決まっている。
他にも生徒会メンバーはいるのに、ほとんどの生徒が広瀬先輩に挨拶を返していた。
その光景だけで、広瀬先輩がどれだけ人気なのか、慕われているのかが分かった。
(そりゃあ、三期連続生徒会長になるわけだ)
広瀬先輩は二年生の前期から生徒会長をしていて、二年の後期、三年の前期と三期連続で生徒会長を務めていた。
うちの学校は生徒会長を選挙で選ぶことになっているけど、広瀬先輩の去年の投票率が圧倒的すぎて印象に残っている。
「おはようございます。広瀬先輩」
「おはようございます。織部君」
俺は広瀬先輩と、とある秘密を共有する仲だった。
そうなったのは数日前。
とあるお店で広瀬先輩と出会ったのがきっかけだった。
☆☆☆
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