娘の身体になった父親の未来
披露宴会場はホテルの大広間。白を基調とした会場装飾が眩しく、
シャンデリアの光がクリスタルグラスを輝かせている。
参列者は両家の親族はもちろん、私(美咲)の友人や
誠さんの会社関係者など総勢百名近くが集まっている。
私たちはそれぞれの参列者のテーブルを挨拶をしていく。
「おめでとうございます!」「とても綺麗だよ!」
そんな声に囲まれながら笑顔で対応していく。
内心では(俺は雄一郎だったけど今は美咲……)という思いが、
今も頭の中に木霊していたけれど、
「ありがとうございます」「嬉しいです」と完璧な花嫁を演じきる。
その度に私の内面に残っている雄一郎がどんどん削られていくのを感じた。
それが怖くもあり、同時に喜びでもあった。
これこそが、本来の私に生まれ変わっていくのだと。
誠さんの勤める会社の偉い人に挨拶をすると、
「いやぁ桐谷クン、素晴らしい奥様だねぇ。」
「あぁ奥様。桐谷クンは若手ホープで頼れる部下でして、
これから良く支えてあげてください。」
誠さんが愛想良く応じる。私は隣で曖昧に笑顔を作るしかない。
(俺だって地方銀行とはいえ東京支店長だったんだ。
仕事はかなりやり手の自負があるんだがな……)
心の中でぼやくものの口には出さない。
今の私は桐谷美咲。誠さんの妻でしかないのだ。
披露宴が終わったあと控室で両家の家族だけで写真撮影が行われた。
私の右隣には誠さん。反対側に義母義父。私のに左隣に母(元妻)が並んだ。
笑顔のなかで、母(元妻)だけは微かに悲しみの色が宿っているように見えた。
「ママ……お母さん……」
私は呟いた。その声に母(元妻)が反応して私を見つめる。
「お母さん。今日まで育ててくれてありがとうございました」
深々と頭を下げた。もう元の関係には戻れない。
妻だった人へ娘として夫としての感謝も込めた。
母は少し驚いた顔をしたあと、すぐに目に涙を浮かべた。
「いいえ……こちらこそ……あなたを産んだこと、
そして雄一郎さんと出会えて……幸せでした……」
嗚咽交じりの声に私の胸が詰まる。
「ありがとう……私は桐谷美咲として、
妻として誠さんと共に生きていきます……」
私の声が震えた。
「それでも今の私を家族だと言ってくれて……嬉しく思います……」
母は涙を拭いながら首を振った。
「いえ……あなたが幸せでいてくれれば……
私も嬉しく思えるわ……幸せになってください」
私達はどちらからともなく抱き合った。
母の肩越しに見えた義父と義母は優しく見守るように私たちを見ていた。
その光景はまるで家族写真のようだった。
私の瞳から涙が一筋流れたが、それが悲しみからなのか、
喜びからなのかは分からない。
ただひとつ確かなのは私はこれからの人生を女として、
妻として生きていくということだった。
了
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これにて完結となります。
初投稿ですが読んでくださった方ありがうございました。
この後は、2つのルートを予定していました。
ですが、気付いてる人もいると思いますが、この話しは元々R18作品ですので、
なろう様では、ここで一旦終わりとさせて頂きます。
2つのルートは誠と美咲(雄一郎)のハッピーエンドと美咲の中の雄一郎が完全女性化してからのNTRエンドです。R18バージョンは完成しています。かたやイチャラブ、かたやかなりのダークです。いずれ何かしらのサイトにアップしたいと思います。R15バージョンについては要望があれば、こちらでアップ致します。
娘の身体になった父親の未来 庵ノ雲 @fujyouhito
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