泣いたマウント鬼
三丈 夕六
あるSNSに……。
昔々、あるSNSにマウント鬼がいました。
マウント鬼はフォロワー数が自慢で、隙あらば他人のリプでマウントをとっていました。
人々は、レスバしたくないのでマウント鬼の事を褒めていました。マウント鬼が嫌いな人は、マウント鬼をミュートしました。
ブロックしないのは、かつてマウント鬼がブロックした人の悪口を言いふらしていたからです。フォロワー達はその光景を見ていました。だからこそ、フォロワーはマウント鬼を刺激しないようにしていたのです。
マウント鬼はフォロワーの誰よりも優れていると思っていました。しかし、なぜか満たされません。どれだけマウントをとってもまた次のマウントをしたくなるのです。マウント鬼は、なぜそうなるのか考えないようにしました。
ある時、マウント鬼はSNSで失言をしてしまいました。
マウント鬼の言葉で深く傷付いた人が気持ちを表明すると、SNSの空気が変わりました。
マウント鬼が住んでいる界隈の外から多くの人がやって来て、マウント鬼に誹謗中傷を浴びせ始めたのです。
マウント鬼は助けを求めましたが、フォロワーは見てみぬフリをしました。
それどころか、一部のフォロワーは複アカを使って誹謗中傷に混じったり、過去のマウント鬼の失言をリツイートして攻撃を始めました。皆、本当はマウント鬼の事が嫌いだったのです。
あまりに長い間、誹謗中傷が続き、訴える方法も知らないマウント鬼は、アカウントを削除するしかなくなりました。1番大切なフォロワー数を自ら手放さなければならなくなったのです。
アカウントを失ったマウント鬼は考えました。フォロワーとはなんだったのだろうと。自分が大切だと思っていたフォロワーが、なぜ自分を助けてくれなかったのだろうと。
マウント鬼にはその理由が分かりませんでした。ただ悲しみだけが湧き上がり、マウント鬼はリアルで泣きました。
しかし、マウント鬼にはSNSをやめるという考えがありません。
なぜなら彼はもはや「人ではない」から。
マウントを取れなければ生きていけない「鬼」になってしまったから。
だからマウント鬼はSNSに戻って来るのです。
半月ほどSNSから離れたマウント鬼は、アカウント名を変えてSNSに再登録しました。
マウント鬼は今でもこのSNSで活動しています。
ほら、アナタのフォロワーの中に……。
泣いたマウント鬼 三丈 夕六 @YUMITAKE
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