"風見鶏"の転換期

暗黒神ゼブラ

"風見鶏"の転換期

『フィルメス=メルフィン=オーレイを討ち取った!! この戦我が軍の勝利だ、勝ち鬨を上げろ!!』

僕の人生はこの日を境に変わっていった。

僕はオルソン=メルフィン=オーレイ

ダリアル王国の小貴族オーレイ子爵家の嫡子として生まれた。

オーレイ領はダリアル王国の端にあることから隣国のエールマティ帝国に接している。

父である、前オーレイ子爵が王国から離叛し帝国側につくことにした。

理由は『帝国が母を救ってくれたから』父にとっては家族を救ってくれたそれだけで充分だそうだ。

オーレイ家当主にはそういう人が多かったようで"風見鶏"なんて呼ばれ方もする。

世間では『家族を大切にする家ではあるけど、信用は出来ない』そんなふうに思われている。

多くの領民は『そんなの慣れっこだよ。気にしなくていいんだよ』と言ってくれたけど、僕にとっては"信用出来ない"そう言われる今の状況をなんとかしたい。

そう思っていた矢先に一人の帝国人が母を傷つけた。

母の怪我はそう大きなものでもなく、母自身が『こんなのかすり傷ですから、本当にすぐに治ります。ですからあなたたちは気にしないで』と笑いながら言えるほど。

……だが、父にとっては笑えるものではなかった。

父は王国と帝国双方の名高い傭兵団や盗賊を雇い帝国に戦を仕掛けた。

そして最初の言葉から分かるように、父は負け討ち取られた。

父は王国も帝国裏切っていたので僕は

「当然だろうけど、家は潰されるだろうな。いや粛清される可能性の方が高い」

そう考えていた。

だが現実は違った。

国王はオーレイ家に『粛清するはずの君の父さんはもう死んでいる。君自身には罪はないんだから、オーレイ家は当主の交代で手を打つから安心して』そう言って温情をかけてくださった。

僕はこの王の器の大きさに感銘を受け

『このオルソン=メルフィン=オーレイ、ダリアル王国を裏切った愚父に代わりダリアル王国に……そして王家に絶対の忠誠を誓わせていただきます!! 今より当主として私は王家より賜りしオーレイ子爵の名に恥じぬ働きをすることを誓います!!』

この日から僕はダリアル王家の……リシュテル王に絶対忠誠を誓った。

僕はこの誓いに違わぬ行動をする!!

最初にしないといけないことは不名誉な"風見鶏"の二つ名を払拭し周囲から信頼・信用を得る事。

……父さんが死んだってことは父さんに雇われた傭兵団も"盗賊"も今は各地に散らばったってことになる。

ならばまずは……その雇われた"盗賊"を打ち取る。

「今日みんなに集まってもらったのは……父さんの残した"負の遺産"を精算するためだ。僕は現オーレイ当主としても人としてもまだ未熟すぎる、だから頼むみんなの力を貸してくれないか?」

「オルソン様は勘違いをしておられる」

僕がオーレイ家で働いてくれているみんなに協力頼んだ後発言したのは、執事長兼部隊長のサイラーだ。

僕が勘違いについてきいた。

「僕がしてる勘違いって何?」

「そんなの決まってます。私たちは頼まれなくとも……オルソン様には協力するということです。私たちのことを『頼まないと協力してくれない』なんて思われるとは心外です。あなた様のことは幼き頃より見ているのです、頼まれずとも私たちはオルソン様と共にいます」

サイラーのこの言葉からみんなが自分の意思でここにいることそして僕に協力すると言ってくれた。

「ありがとうみんな、これからも未熟な僕をよろしく……お願いします」


おしまい

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