第3話 荒神組との初戦、緊張のグラウンド
「お前ら、準備はできてるか?」
黒田剛志監督の声が、荒神高校の部室に響く。
部員たちは、まだ緊張と不安が入り混じった表情を浮かべていた。
「……できてるわけねぇだろ」
小林泰造がぼそりと呟く。部室住まいの彼にとって、公式戦ではなくても実戦は久しぶりだ。
神谷蓮は相変わらず淡々としているが、目は鋭く光っていた。二刀流としての自信と、全国レベルの感覚が微かに漂う。
「……まあ、やるしかないな」
藤井隼人は煙草を手にしながら肩をすくめる。問題児のくせに、なぜか戦闘的な雰囲気は漂わせる。
鬼塚翔はバットを握りしめ、指先に力を込める。
「俺のバット、今日も暴れてやる」
彼の目には、どこか楽しみの色も混じっていた。
南条翼は柔軟体操を終え、ファーストの守備位置で黙って構える。
風間涼は軽くステップを踏み、スピードを活かす準備をしている。
久我智也はノートに最後のデータを走らせ、キャッチャーとしての戦術を頭に叩き込む。
大熊剛は大きく息を吸い、全身の筋肉を確認しながらスイングの感覚を確かめる。
佐久間信司は部長として全員を見渡し、短く言った。
「今日の相手は荒神組だ。手加減なしだぞ」
グラウンドの外から、荒神組のチームが姿を現す。
見た目からして危ない香りがぷんぷんする――それも当然、極道で組んだチームだ。
神谷は静かにバットを肩に担ぐ。小林はポケットに手を突っ込み、肩をすくめる。
藤井は煙草を消し、鬼塚はグローブを握り直す。
部員たちの間に、緊張の空気とわずかな高揚感が混ざる。
黒田監督が笛を鳴らす。
「試合開始――」
その瞬間、荒神高校野球部の、初の実戦が動き出した。
弱小チームとはいえ、今日の戦いは彼らにとって、単なる練習ではない。
荒神高校の名を、そして自分たちの誇りをかけた、最初の一歩だった。
荒野の甲子園 まかない @Makanai096
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